フライングシアター自由劇場の主宰・串田和美が『マクベス』に挑むのは6度目だという。
串田「最初は72年。劇団自由劇場を結成して6年後に各々別の活動に移行して、僕と吉田日出子だけが残ったので、色んな連中を集めて作ったんです。それまでは俳優だけをやっていた僕が、初めて“演出家”の役割を担った作品でもある。その後も色々なバージョンをやりました」
長年、試行錯誤を重ねながらこの作品と向き合ってきたわけだが、今回上演する『そよ風と魔女たちとマクベスと』は、マクベス以外の全員が魔女という、大胆な改変がされている。それも、魔女たちは彼を取り巻く“そよ風”のように居るらしい。
そんな異色作をつくるのは、串田を含む9人の俳優たち。その中でも、劇団はえぎわの作・演出・主宰であるノゾエ征爾の名前が異彩を放っている。
ノゾエ「僕も『マクベス』を題材にしたワークショップをやって、それをきっかけにした舞台を昨年りました。人間の世界の中で途絶えずに続いていく、捉えきれない大きなものという発想は凄くフィットしますね。そよ風ってそういうものだよなと」
今回はあくまでも俳優として参加するノゾエ。串田と共に作品作りをするのは初めてだという。
串田「お互いに作品は観ています。僕が長野から東京に拠点を戻して最初に作った『仮面劇・預言者』を観に来て下さって、アフタートークに出てもらいました。僕も彼らの作品を観に行って、危ないことをしているんだけど、ノゾエさんは育ちがいい人なんだろうなと思ってました。その後、はえぎわから息子（串田十二夜）にオファーがあって、息子と色々話しているうちに、本作の公演期間中（ノゾエが）『空いていますよ、ボク』と言っていたと聞いて（笑）。いつかは一緒にやるんだろうなという予感はずっとあったから、息子に『すぐ出てもらおう！』って（笑）」
ノゾエ「前作『ガード下のオイディプス』も凄く面白かった。始まる前に生活と地続きのような舞台空間があり、そこに串田さんがふらっと出てきて、普通のトーンで話し出す。そして、徐々に実と虚の境に、滑らかに誘っていく。それが凄く気持ちよかったんです。作品中ずっと、まるで沢山の奇跡が起こっているみたいでした。それもあって、テンションが上がって勢いづいて、『空いてます！』って（笑）」
今回、ノゾエを含めた5人が初参加となる座組だ。
串田「今までで一番初めての人が多い座組になりました。僕は、公演でどんな俳優たちとどんな共同作業ができるか、ということに一番興味があります。自分の頭の中だけのプランで芝居を作るのではなく、そこに集まった俳優たちの意外な要素が思いもかけない演劇表現を生み出す、そういう面に一番興味が湧くんです」
（取材・文：渡部晋也 撮影：友澤綾乃）
プロフィール
串田和美（くしだ・かずよし）
1966年、吉田日出子らとともに劇団自由劇場を結成し、六本木・アンダーグラウンドシアター自由劇場も運営。音楽劇『上海バンスキング』をはじめ、数々の作品で人気を集める。1985年からBunkamuraシアターコクーン初代芸術監督を務め、十八世中村勘三郎と共に「コクーン歌舞伎」を立ち上げるなど、多彩な企画を打ち出した。2003年、まつもと市民芸術館初代芸術監督に就任。2023年まで20年間務める。同年10月、自身や演劇の原点を捉え直し企画製作していく「フライングシアター自由劇場」を立ち上げ。
ノゾエ征爾（のぞえ・せいじ）
1999年、「はえぎわ」を始動。以降、全公演の作・演出を手掛ける。2012年、『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。近年は、小川絵梨子演出作品『デカローグ1＆3』への出演のほか、はえぎわ×彩の国さいたま芸術劇場『マクベス』（上演台本・演出）、モチロンプロデュース『ボクの穴、彼の穴。W』(翻案・脚本・演出)、『ロボット』（潤色・演出）など、劇団外でも活躍している。
公演情報
フライングシアター自由劇場 第5回公演
『そよ風と魔女たちとマクベスと』
日：2025年4月25日（金）～5月4日（日・祝）
場：すみだパークシアター倉
料：エンジェルシート［特典付］12,000円
一般7,500円
ペアチケット［2名1組］14,500円
U-25［25歳以下］4,000円
高校生以下3,000円
※U-25・高校生以下は要身分証明書提示
（全席指定・税込）
HP：https://www.k-jiyugekijo.com/macbeth
問：フライングシアター自由劇場
mail：flyingtheatre.jg@gmail.com
