
中村勘九郎・中村七之助を中心に中村屋一門が毎年行う全国巡業公演が、今年も全国16ヶ所でおこなわれる。地方に住む、歌舞伎を観る機会が少ない方たちに向けて「自分たちが全国各地に足を運び、多くの方に歌舞伎を観てもらおう」と05年から始まった。巡業は時期によって「陽春」「春暁」「錦秋」と銘打たれ、22年には全国都道府県での開催を達成した。毎年、趣向を凝らして歌舞伎観劇の裾野を広げてきた特別公演は、21年目を迎えた今年、どんな魅力を放つのか。勘九郎・七之助の2人に公演の見どころを聞いた。
勘九郎「また今年も新緑公演を打てることを嬉しく思います。多くの方々に支えられて全国を巡ることができましたが、未だに『初めて生で歌舞伎を観る』という方も多く、私達が愛する歌舞伎の魅力を伝える為には、まだまだ出来ることがあるなと実感しております。
今年は冒頭にお客様とのトークコーナーを設けることで、歌舞伎の敷居が高いイメージや心の壁を取り除ければと思います。またミニ歌舞伎塾では、演者を補助する『後見』の仕事を解説して、歌舞伎の舞台裏ではどのような人たちによって支えられているかを知って頂ける機会にできればと思います。
私は鶴松と共に『太刀盗人』を演じます。コミカルでからっとした演目でシンプルな面白さがあり、踊りだけではなく台詞も入るので、より皆様を物語の中に誘えるのではないかと思います」
七之助「恒例となった全国巡業公演をまた開催できることを大変嬉しく思います。今回はこれまでやったことがない、皆様に披露したことがない2演目をご用意いたしました。
私が演じる『高尾懺悔』は中村屋でも珍しい踊りで、遊女の苦労と吉原の裏の世界がテーマ。亡霊となった傾城高尾の遊郭での在りし日の姿を四季の移ろいに合わせて舞い、最後は悲しい結末を迎えます。特に高尾の気品と貫禄の中にある寂しさや、懺悔の思いが込められた描写はきっと皆様の心にも響くはずです。本公演でもなかなか観られない演目ですし、初心者の方だけでなく、歌舞伎ファンの方にも楽しんで頂けると思います。
私共がこの試みを始めた時に生まれたお子さんが20歳になったと考えると感慨深いですが、その方が必ず歌舞伎を観たとは限らない。それが毎年公演をおこなう理由でもあります。今後も体力が続く限り、いつも新しい気持ちで臨んで参ります」
(取材・文:小笠原大介 撮影:平賀正明 ヘアメイク:中村優希子 スタイリスト:作山直紀)

プロフィール

中村勘九郎(なかむら・かんくろう)
1981年生まれ、東京都出身。十八世中村勘三郎の長男。1986年1月、歌舞伎座にて初お目見得。1987年1月、歌舞伎座『門出二人桃太郎』兄の桃太郎で二代目中村勘太郎を名乗り、初舞台。2012年2月、新橋演舞場『春興鏡獅子』小姓弥生後に獅子の精などで六代目中村勘九郎を襲名。歌舞伎にとどまらず、舞台『真田十勇士』、朗読劇『バイオーム』、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』、映画『禅』など、幅広く精力的に活動している。

中村七之助(なかむら・しちのすけ)
1983年生まれ、東京都出身。十八世中村勘三郎の次男。1986年9月、歌舞伎座『檻』祭りの子勘吉で初お目見得。1987年1月、歌舞伎座『門出二人桃太郎』弟の桃太郎で二代目中村七之助を名乗り、初舞台。以後、舞台出演のみならず、さまざまな分野で活躍。2003年にはハリウッド映画『ラストサムライ』に明治天皇役で出演。2016年には演出家 デヴィット・ルヴォー演出の現代劇『ETERNAL CHIKAMATSU』にも出演。
衣装:Y’s for men /ワイズフォーメン(問:ワイズプレスルーム tel.03-5463-1540)
公演情報
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『中村勘九郎 中村七之助
新緑歌舞伎特別公演2025』
日・場:
①【所沢市民文化センターミューズ マーキーホール】5月3日(土・祝)
②【文京シビックホール 大ホール】2025年5月5日(月・祝)
③【RaiBoC Hal(l 市民会館おおみや)大ホール】2025年5月20日(火)
料:
①S席8,800円 A席6,800円(全席指定・税込)
②③〈12:00公演〉S席8,800円 A席6,800円
B席4,800円(全席指定・税込)
〈16:00公演〉S席7,800円 A席5,800円
B席3,800円(全席指定・税込)
HP:https://nakamuraya-tour.srptokyo.com
問:サンライズインフォメーション
tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)