
ゴシックロマンの名著に大胆なストーリー解釈を加え、迫力あるキャッチーな楽曲で紡いだミュージカル『フランケンシュタイン』。日本では17年に初演され、メインキャスト全員が1人2役を演じるというトリッキーな演劇的作劇が話題に。「命とは、記憶とは、そして愛とは」を問う衝撃の物語が熱狂的なファンを生み、20年の再演も大反響を呼んだ。
そんな熱い舞台が今年4月、多くの新キャスト迎えて再々演の幕を開ける。ミュージカル『キングアーサー』、舞台『鬼滅の刃』で注目を集める小林亮太が、“生命創造”に挑む科学者 ビクター・フランケンシュタインと、闘技場の主人 ジャックを演じる。また、ビクターに命を救われ、“神の領域への挑戦”とも言える彼の研究を手伝うアンリ・デュプレ役と、研究から生まれた怪物役に、ミュージカル『聲の形』やミュージカル『GIRLFRIEND』で、立て続けに大役を務めた島太星が初登場。初演から続投する中川晃教・加藤和樹との刺激的なWキャストが組まれた大舞台を前にした2人に、作品の魅力を語ってもらった。
小林「作品の舞台は19世紀のヨーロッパなんですが、現代にも通じる部分がたくさんある作品だと感じています。ビクターとアンリの友情、ビクターの姉 エレンの家族愛など、普遍的なテーマがしっかりと描かれている中で、ゴシックロマンらしいダークな部分も提示できる。僕はどちらかというとハッピーな作品よりも、悲劇で堕ちていく役柄に扮した俳優が、もがきながら演じる姿が好きなんです。いざ自分がやるとなったら、しんどいんですけど(笑)。でも、そういうところに作品やキャラクターの魅力が出ると思いますし、“愛と友情”という時代を問わないテーマを、今改めて届けることが大事だと思っています」
島「“生命を創造する”という主軸をはじめ、色々な仕掛けのある作品なので『難しいのかな?』と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、読解力が全然ない僕が……」
小林「そんなことはないです(笑)」
島「いや、本当に理解するのに時間がかかるんですよ、僕。でも、そんな僕でも初めて観劇させていただいた時に、今でも忘れられないぐらい心に響いたものがたくさんあったんです。そこから、アンリと怪物を演じるんだと思って改めて台本を読むと、怪物役の時に“寂しい・悲しい”だけではなく、どこかに“愛”があるんじゃないかと感じられる。お客さまも様々な解釈ができる素晴らしい作品だなと感じています。亮太くんは、ビクターとジャックは全く違う役だと思ってる?」
小林「そこが難しいんだけど、やっぱり同じ俳優がやることの意味が必ずあるはずだと考えていて。例えば同じ言葉を発した時に、ビクターでもジャックでもあると思うから、そういう部分のリンクは大事にしていきたいです。自分としては、まずビクターがある程度見えてきたところで、ジャックを真逆に振ってみようと思っているんだけど、こればっかりは稽古に入ってみないと分からないから。とても論理的に説明してくださる演出の板垣(恭一)さんとよく話し合って創っていきたいです」

島「僕はミュージカル初主演が板さん(板垣)の演出作品で、板さんが導いてくださったからこそ舞台に立てたので、頼りにしていますし、話し合いも沢山したいです。特にアンリは怪物になった時、アンリとしての記憶はない状態ですが、それも解釈次第なのかなと。僕は、どこかに彼の何かが残っているんじゃないかと思うんです。でも、それをどこまで出すのか?の匙加減がすごく難しいので、板さんはもちろん、ずっと役を演じてこられている加藤和樹さんにも伺って、意見を共有したいなと思っています」
小林「中川さんと加藤さんが長い年月をかけて深めてこられたものを、しっかりと吸収させていただきつつ、僕らの基盤を創っていきたいよね。一度そのステップが踏めれば、役の組み合わせがシャッフルされた時に、また違った景色が見えるんじゃないかと思うから」
島「違うキャストの組み合わせでも観たい!と思っていただけるって、やっぱり良い作品だからこそなので、それを目指したいです」
新キャストとして前向きに作品と役に取り組みたいと熱く語る2人に、お互いに感じている魅力を訊くと。
小林「太星くんの魅力は、何が出てくるかわからないところですね。こういうインタビューで話している時もそうなんですけど、僕の思いもよらない視点から、とてもフラットに言葉や考えが出てくるところに、表現者として自分にはないものを感じます。僕は頭でっかちになってしまいがちなので、太星くんの不意打ちな発言に癒されたり、刺激を受けたりしています」
島「亮太くんは本当に頭の回転が速いんです。『これはどう思う?』と訊いても、すぐにきちんと答えられる人で。僕は頭には浮かんでいても、説明がうまくできないからそれが羨ましいし、すごい才能だと思います。同じ人間なのに、進化が進んでいてちょっとずるい」

小林「ちょっと休憩していい(笑)? 褒め方の角度が既に違うよね(笑)」
島「でも絶対に進化していると思う! しかもすごい努力家なんです。歌稽古の時に亮太くんの楽譜を見たら、僕と同じ時期にもらったはずなのに、“絶対に令和の時代のものじゃない”ってくらいボロボロになっていて。僕の楽譜は“令和状態”だったので、もっと頑張らなきゃと」
小林「すごく難しい楽曲ばかりで、もはや毎日持ち歩いてるからかも、音域も広いし(笑)。でも確実に琴線に触れる楽曲だと感じていて。きちんと表現しようと思うとすごくハードルが高いんだけど、歌のトレーニングを1年受けさせてもらえたので、やっと自分の中で少し表現の選択肢が増えてきたかなと」
島「本当に音域が広くて、僕は低音域が苦手なんだけど、そこに重要なワードがあるから、本番までに完璧に伝えられるようにしたいです。でも、歌とお芝居があるミュージカルってやっぱり強いなと思っていて。歌に芝居を引っ張ってもらえるし、そこから自然に芝居が歌を引っ張るし、2つの力があるのがありがたいなと」
小林「あぁ、そこも面白いね! 僕はお芝居で創っていく気持ちを、どう歌にも繋げていけるか?と考えるんだけど、太星くんは歌がお芝居を引っ張るって考えるんだ」
島「僕は元々歌をやっているのもあると思う」
小林「そういうアプローチの違いも、お互いに良い化学反応になっていくといいね。『フランケンシュタイン』は原作小説が有名なのもあって、初めて作品に触れる方の中には、ホラーなのかな?と感じて、観劇に迷いがある方もいらっしゃるかもしれません。でも、キャストの皆さんと沢山の時間を重ねて、絶対に楽しんで頂けるものをお届けしますので、是非劇場にお越しください」
島「生きている意味や価値観は、人それぞれのものがあると思います。でも、こういう人生もあるんだなとか、自分や周りの人を大切にしようなど、この作品から色々な気持ちを受け取って頂けるように頑張っていきます。シャッフルで4パターンの組み合わせがありますから、是非何度も観て頂けたら嬉しいです」
(取材・文:橘 涼香 撮影:立川賢一)

プロフィール

小林亮太(こばやし・りょうた)
愛知県出身。5歳でモデルデビュー。2011年~ 2013年のユニット活動を経て、上京。以降は、ドラマ・映画・舞台と幅広い分野で活躍。ドラマ『ときめき爆弾』では、連ドラ初主演を務めた。主な出演作に、Amazonプライム・ビデオ『仮面ライダーアマゾンズ』、舞台『僕のヒーローアカデミア The “Ultra” Stage』シリーズ、ミュージカル『キングアーサー』、舞台『鬼滅の刃』シリーズなど。

島 太星(しま・たいせい)
北海道出身。2016年、「NORD(ノール)」のメンバーとしてデビュー。ソロ活動では、NYアポロシアター「アマチュアナイト」での歌唱をはじめ、数々の音楽番組への出演やCMソングを担当し、持ち前のキャラクターでバラエティ番組にも出演。主な出演作に、ミュージカル『ルーザーヴィル』、『聲の形』、『GIRLFRIEND』など。
公演情報
.jpg)
ミュージカル『フランケンシュタイン』
日:2025年4月10日(木)~30日(水)
※他、地方公演あり
場:東京建物Brillia HALL
料:【土日祝日・千穐楽】
S席16,000円 A席11,000円 B席6,000円
【平日】
S席15,000円 A席10,000円 B席5,000円
(全席指定・税込)
HP:https://www.tohostage.com/frankenstein/
問:東宝テレザーブ
tel.0570-00-7777(11:00~17:00)