
編集者からキャリアをスタートして、これまで実に多くのテレビ番組や舞台の企画・制作・演出を手がけてきた髙平哲郎が、2023年からプロデュースしている「笑いの実践集団」。ベテラン俳優陣に加えて、2.5次元舞台で活躍する若い才能も取り込んだ舞台が話題だ。その第4弾公演として取り上げるのは、ギャグ漫画の王様 赤塚不二夫の作品を題材にした『赤塚不二夫スクラップブック』。髙平と、出演する小堺一機・ROLLY・高本学・弦間哲心に話を聞いた。
―――まず髙平さんに伺います。今回、この作品に取り組むきっかけを教えていただけますか?
髙平「最初にプロデューサーから赤塚作品で何か出来ないか求められたのだけど、『出来ない』と答えていました。でもいろいろ考える中で、20年以上続いているミュージカルレビュー『DOWNTOWN FOLLIES』のなかでやった『ラ・ラ・ランド』のパロディ『レレレ・ランド』を思い出したんです。その線でいけるかと思い、『天才バカボン』のバカボンのパパと『ギャグゲリラ』から芝居になりそうな部分を台本にしてみたら、結構面白いのでやってみようかと。
でもそういう話ならフジオプロの協力は欠かせないので、娘さんである赤塚りえ子さんに連絡しました。そうしたら、赤塚先生が生誕90周年(1935年生まれ)だと聞いたんです。だから正式なセレモニーは別にやることにしても、お祝いの第1弾としてこの作品をやることになりました」

―――物語は、バカボンのパパと「シェー」でおなじみの『おそ松くん』のイヤミを軸に進められていくそうですね。バカボンのパパを小堺さんが、そしてイヤミをROLLYさんが演じられます。このキャスティングはいかがでしょう。
髙平「オヤジとイヤミはこの2人で決まり。きっと赤塚先生も文句ないだろうと思います」
小堺「『天才バカボン』は子どもの頃にリアルタイムで観ていた漫画です。僕は子供の頃に赤塚漫画を見たことで、頭が良くなったと思っています(笑)。当時、シェーの意味なんてわからないのに、子どもは真似していたくらいに人気でしたよね」

ROLLY「そうそう。シェーのポーズは今の天皇陛下がお子さんの頃にやっている写真があるくらい。それだけ日本国民の根底にあるものですよ。
私自身も70年代の『天才バカボン』や『もーれつア太郎』、『おそ松くん』など、あの“少年マガデー”(「少年マガジン」・「少年サンデー」)の中で連載されていた異端な作品に影響を受けました。僕は音楽の中で赤塚先生のおかしい、イカレたものを実践するようになったんです」
―――この偉大なキャラクターを演じるにあたり、おふたりともプレッシャーを感じられていますか?
小堺「プレッシャー? 最近思うんですが、プレッシャーを感じるのは、自信がある人ですよ。僕にはそんなものないし、出来ることしかできない。だからそれを一生懸命やります。家族も喜んでくれたのが嬉しかった(笑)」
ROLLY「今あるものの中でもっとも異端をするという、そういったロック精神や反骨精神は赤塚漫画から学びました。そこにないことをやる、その精神です。
髙平さんには25年前にPARCO劇場でやった僕のリサイタル『喝采』の演出をしていただき、その後は『パリ祭』に何度も呼んでいただいていますから、信頼は厚いです」

―――そして、今回も2.5次元舞台を主なフィールドとする若手俳優の皆さんがご出演されます。
髙平「笑いの実践集団の2本目に、2.5次元舞台の俳優ばかりを起用してサルトル作品を用いたリーディングアクト『他人地獄』をやってみたら、皆さんすごくちゃんとしているし芝居も上手なんだよね」
―――高本さんと弦間さんは、今回のオファーを受けていかがですか?
高本「今回初めて参加するのですが、僕を選んでいただいて有り難いですね。役を通して新しい自分に出会えるんじゃないかと期待しています」
弦間「僕も光栄だと思っています。赤塚先生の作品はリアルタイム世代ではないので、これからいろいろ触れてみようと思っています。さらに、共演される皆さんがずっとテレビで見ていた方々なので、プレッシャーも感じています」
高本「リアルタイムではないですが、『天才バカボン』もケーブルテレビなどで放映していましたからね」

弦間「そうそう。母親がバカボン大好きなので、子どもの頃に一緒に見ていた記憶があります」
―――さらに、松田洋治さんや花木さち子さんといったベテランの俳優さんも参加されます。他の出演者の方のイメージや印象はありますか?
髙平「ようちゃん(松田洋治)だけはこの中で一番ちゃんとした、まともな感覚を持った人の設定で、赤塚作品には無いキャラクターを演ってもらいます。若い子に、ようちゃんは『もののけ姫』のアシタカの声の人だよって教えるとすごくびっくりするよね。
花木さんは劇団四季出身で、実に歌が上手い方。まあ若い子にとってはお母さん世代だけど」
高本「僕はギターを弾くんですが、ROLLYさんの大ファンなんです。すかんちの頃から追いかけて、YouTubeのギター動画をずっと見ていて」
ROLLY「そりゃあ異常ですよ(笑)」
弦間「僕は小堺さんを拝見していました。『ライオンのごきげんよう』で、なにが出るかな〜って(笑)」

―――最後に、本作への印象や意気込みを教えてください。
小堺「髙平さんには『ライオンのごきげんよう』でもすごくお世話になりましたが、21歳の時に著書の『みんな不良少年だった』を読んだんです。これはインタビュー集なんですが、インタビューってここに持っていきたいという意図を持って挑むインタビュアーが多い中で、高平さんはそうじゃない。聞き手も相手も一緒に飛び出して、一緒に景色も愉しんだりして、たどり着いたところをまた愉しむ。そんなスタイルなんです。
だからこの舞台でも一体どう来るんだろうとワクワクしながら待って、気がついたら千秋楽、というのがいいですね。どうなるかわからないのを愉しむということですね」
ROLLY「まだ台本は来ていませんが、髙平さんからストーリーを最後まで聞いています。もう恐ろしくて(笑)、震え上がってます。ウァーってね」
高本「僕もどうなるかが今から楽しみです。まだどんなストーリーなのか、読めな過ぎて。それに初めてご一緒する方も多いので、小堺さんがおっしゃるとおり、一緒に旅するように千秋楽までいけたら良いなと思います」
弦間「さっき撮影の時に、髙平さんから『気取っていられるのは今のうちだよ』と言われたので震えました(笑)。赤塚不二夫先生の作品を一緒に創り上げることは楽しみですし、キャストを眺めただけでお客さんは喜んでもらえる気がします。それに僕は何役もやるんですよ。歌って踊ってお芝居があって、初めての挑戦なので殻を破っていけたらいいなと思います」
髙平「いつもいうことなんだけど、やっている側が楽しくなければ観ている側も楽しくないんです。稽古は正気でやってもらって、それを通して狂気な役を各自が創り出してくれるのが楽しみです。まあ(赤塚)先生が喜んでくれたら良いなと思います。きっと喜んでくれるでしょう」
(取材・文:渡部晋也 撮影:間野真由美)

プロフィール

髙平哲郎(たかひら・てつお)
放送作家・劇作家・演出家。2024年、「不条理劇とシュールリアリズムはナンセンスなコントに通じる」というコンセプトのもと「笑いの実戦集団」を立ち上げ。

小堺一機(こさかい・かずき)
「ライオンのごきげんよう」などのバラエティ番組に出演し、高い人気を得る。主な出演に、ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』、海の音楽劇『プリンス・オブ・マーメイド~海と人がともに生きる~』など。

ROLLY(ろーりー)
ミュージシャン・俳優。主な出演に、ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』、『ビッグ・フィッシュ』、映画『記憶にございません!』、『モアナと伝説の海』吹替版 タマトア役など。

高本 学(たかもと・がく)
俳優・モデルとして、舞台・映像を問わず活動を広げている。主な出演に、ミュージカル『ヘタリア』シリーズ、舞台『刀剣乱舞』シリーズなど。

弦間哲心(げんま・てっしん)
現在、俳優として舞台やバラエティなどで幅広く活動中。主な出演に、舞台『魔法使いの約束』、『アマネ†ギムナジウム』など。
公演情報

笑いの実践集団 vol.4
『赤塚不二夫スクラップブック』
日:2025年4月15日(火)~20日(日)
場:CBGKシブゲキ!!
料:SS席[特典付]11,000円
S席8,800円 A席6,600円
U-18シート[18歳以下]3,300円
※要学生証提示(全席指定・税込)
HP:https://x.com/akatsukaSB2025
問:アイランズ
mail:islandsco2014@gmail.com