テレビドラマ化もされた、木下半太(劇団・渋谷ニコルソンズ)による人気作品を、今回はワタナベエンターテインメント主催、木下の脚本・演出で新たに舞台化する。事件現場で張り込みをする4人の刑事たちが繰り広げるワンシチュエーション・サスペンス劇。クレイジーな秘密の暴露を濃厚な会話劇で描いていく。作品を代表して、中尾暢樹、池岡亮介、納谷健に話を聞いた。
―――期待が膨らむキャスティングです。改めてこの作品の魅力をお聞かせください。
中尾「ほんとにびっくり箱みたいな台本で、暴露とかいろんな伏線があり、話が進むにつれてどんどんテンションが上がり、温度も上がっていくところが魅力の作品です。脚本の半太さんも楽しんで書いたんだろうと、それがすごく伝わってくる台本で、これが舞台上でもっと熱量も上がると思うので、もう楽しみしかないです」
納谷「全員、裏返っていくのが清々しい脚本だと思いつつ、でも怖さをずっと抱えて残るところが魅力です。人間社会もそうですけど、みんな裏があって気を付けなきゃなと思うようなことを、面白おかしくエンタメチックにやっているので、そこを演じる楽しさはめちゃくちゃあります。信頼しているメンバーとできることがすごく嬉しいですね」
池岡「とにかくわかりやすくて、難しいことを考えずに観られる作品です。劇場のシアタートップスはお客さまとの距離も近い箱で、演劇っていうものをすごく身近に感じてもらえる作品になるんじゃないかなと。しかも映像では出せない、役者本人のパーソナリティーが役にのっかって、より面白い人間臭さみたいなものが滲み出てくる作品だと思っているので、誰に感情移入するか、推しを作る見方も面白いと思います」
―――シアタートップスのお話が出ましたが、出演者の方々も楽しみが膨らむ会場ですね。
池岡「そうなんです。どう生々しくしていくか、僕たちもやりがいがある会場だと思っています」
―――ビジュアルから想像するだけで楽しくなります。役どころについて、まずはギャンブル狂いの渡辺役・中尾さんはめちゃめちゃ悪そうです。
中尾「見た目通りです! 別に裏返しとかなく渡辺の内面を出しすぎちゃった顔です(笑)。色々と裏で悪いことをしてしまっている1番わかりやすく激しい男。欲望に忠実そうな感じで演じればいいのかな」
―――チラシでは激しい風貌ですが、物語では現場で頼れる先輩にも見えて……。
中尾「確かに。渡辺は結構ツッコミが多いんですよ。その辺のバランスは楽しみですね。(チラシの)これ私物のメガネなんです。四角の色眼鏡を持っていて、うわ!これいいじゃん!と持ってきました」
―――撮影では様々なリクエストが?
中尾「そうですそうです! いきなりお金持って~はいタバコ~って言われて(笑)。わかりやすくやればいいのねって。じゃぁお金撒いちゃおうかって(笑)。ふざけた写真をたくさん撮りました」
―――次は今江役の池岡さん、ちょっとマイペースで1番普通の人かと思いきや。
池岡「今のご時世的に言うと1番引かれる役なんじゃないかな。僕たちはいたって普通に真面目に生活をしていて、今江は何が悪いの?と。ただ恋に生きている、それが結果マイペースに見える。僕はどれだけ純粋にかき回せるか、渡辺をどれだけ困らせられるか、すごく楽しみですね。あとはお客さまが、『こいつヤバい』みたいなものを感じとってもらえると思うので、そんなに自分がやばい奴と意識せずにやりたいと思っています」
―――参考にいただいた台本では、今江は大阪弁でしたが、池岡さんの出身は名古屋ですよね。
池岡「ええ、地元は名古屋です。もともと半太さんの団体でやっていたものが最初は博多弁で、ドラマで関西弁になり、今回どうなるのか、まだわからないです」
中尾「エセ関西弁もおもろいね、チャラそうな希薄な感じは出るよね」
池岡「確かに(笑) 。本番までのお楽しみということで!」
―――そして納谷さんが演じるのは、後輩に媚びるベテラン刑事・井口役です。
納谷「1番可愛げがあるのかと思いきや、裏側の部分をどこまで深く落としこめばいいんだろうっていう底知れない部分は、緻密にやっていかなきゃいけないのかなと。でも愛嬌みたいなものが出るほど、いじりどころがあるというか。そういったスキみたいなものもが出せたら」
―――ギャップですね。
納谷「僕としては年齢のギャップがあって、子供がいる設定なんです」
中尾「背も小っちゃいし」
納谷「うるさいな(笑)。小っちゃいおっちゃんだっているから! 最近、父親役が増えてきて実年齢より上の感覚なので、想像で埋めつつも、何かしらフックになるようなわかりやすさみたいなのは、足していけたらなと思います」
―――この作品は膨大なセリフの掛け合いがひたすら続き、今回、Wキャストで女性が入ることで新しい見え方も期待されます。見どころポイントや、推しポイントをお聞かせください。
中尾「俺は最初の水をガブガブ飲むとこかな」
池岡「やっぱり後々あれかって思われたいもんね」
中尾「うん。そういう伏線みたいなものはやりすぎず、でも印象的に。見どころはほんと細部一つひとつに隠されていると思うので、お客さまが感じたちょっとした違和感みたいなものとか、そこを見逃してほしくないですね。どんどん想像してもらって、それが後々合致した時の気持ち良さ。そういう楽しみのポイントを僕らがしっかりと残していければ」
納谷「脚本やお芝居の“あや”みたいなところをキャッチしていただきつつ楽しんでほしいです。同じ事務所で慣れ親しんだメンツだからこそ、お芝居を忘れて生身のリアルな空気感は出ちゃうと思っていて」
中尾「俺、普通に笑っちゃうかも」
納谷「ね、ある種の恥ずかしさみたいなものはありますね。この3人は意外と共演はしていても芝居をちゃんと掛け合ってないんですよ。そこがまたリアルに出てくるのかな。お客さまとしても僕らとしても、新しい表情を見せられるのではと感じています」
池岡「やっぱり暴露するところと掛け合いは楽しみです。たぶんテンポや言い方が、その日その日で変わると思うので、自分たちが1番楽しみつつ敏感にやりたいと思います」
納谷「比較的に真面目な作品をやってきた僕たちが、半太さんの演出でちょっとバカバカしさも加わって、更にワタナベエンターテインメントの俳優だけで上演することが見どころです」
―――稽古も日々変化して、すごいことになりそうですね。
中尾「あんまり稽古やんない方がいいんじゃない? やりすぎると新鮮味が」
納谷「でも中山翔貴くんは初舞台らしいから」
中尾「あああ、そうか、ごめん翔貴くん! 稽古する!(笑)」
―――中尾さんはドラマ版から舞台にも出演します。挑戦だと思うことは?
中尾「俺は前のドラマ版で清田を演じていて、清田から渡辺に変わることが挑戦です。ドラマでは先輩の陳内将さんが演じていた役ですが、そこはあまり引っ張られないように。数年の期間を経て清田から渡辺役に進化した自分を楽しみにしていただければ」
―――では作品に因んだ質問です。実は僕だけが知っているお互いの秘密を告白していただこうと思います。出会った頃の印象からきっと変化した部分もあるのかなと推測します。まずは納谷さんから中尾さんの秘密を。
納谷「僕だけが知っている……すごい素直なやつなんですけど、自発的に出すものは素直にブレーキ無く出せるけど、人から受けたものに対してあんまり素直になれないなっていう所を知っています!」
中尾「おおおお!?」
納谷「行為に対しての『ありがとう』を素直に言えないタイプな気はする。俺だからなのかもしれないけど。主演でバテているところに差し入れを持って行ったら、(そっけなく)『ありがとーござーす』みたいに言ってるのに、ちゃんとSNSで『差し入れ貰った!(キラキラ)』みたいなことを裏でやりやがるんですよ」
一同「(笑)」
中尾「たまたまじゃない⁉」
納谷「まっすぐキラキラした目で『ありがとう』って本人に言って! まだ若いんだから、その可愛げをもっと出してきなよっていう(笑)」
中尾「苦情でした(大汗)!! 次、池岡くんの秘密……。池岡くんは甘えん坊です。でもこの中では俺が1番甘えたいんだよ!」
納谷「たぶんね、みんな知ってる。ファンにもバレてる」
一同「(笑)」
中尾「池岡くんの甘えたがりの部分は僕だけが知っていると思います」
池岡「(笑)。でも暢樹も甘えます!」
中尾「実はいつも甘えん坊です(笑)。甘えるのが好きです」
―――では池岡さんが知っている納谷さんの秘密。
池岡「関西人でおしゃべりなくせに……ふっ」
納谷「クセに⁉ それはもう苦情⁉」
池岡「言ってる内容は真面目なんですよね。勢いとかあるのにはみ出ないしブレない、すごくしっかりしてる」
―――それは面白くないということ?
納谷「そうとれますよね!」
池岡「そこが面白いんです。すんごい面白い雰囲気を出しているのに、すんごい真面目、関西人なのに」
納谷「嬉しくない~」
―――チャラい関西人かと思ったけど、そうじゃなかったと。
池岡「そうです、そうです」
納谷「え!そう言ってました?(笑)」
池岡「関西の方は圧力がすごいじゃないですか。僕はけっこう穏やかなところで育ってきたので、最初勢いに萎縮しちゃったんですけど、言ってることが全然真面目だから話せる人だってわかりました」
納谷「怖くはないですよ。池ティは先輩なのに奥手なんだよ」
中尾「奥手の甘えん坊! 女の子だったらめっちゃ可愛い」
池岡「女の子に生まれたかったな~(笑)。愛されキャラを今回の今江役に生かします」
―――では最後にメッセージをお願いします。
中尾「この舞台は予備知識なしで気軽に観られると思います。みんなが色々暴露して、伏線を張り巡らせて、笑って、たまにちょっと引き締めて最後にどんでん返し。わかりやすくて面白い舞台です。新宿なのでふらりと立ち寄る気持ちで来てくれたら嬉しいです」
池岡「人間が泥にまみれていく様子、落ちていく様子を面白おかしく見ていただけると思います。底辺な奴らを見て、自己肯定感を上げてください。どうぞ気楽にいらしてください」
納谷「初めてで悩んでいる方、現代のチケット代の中では良心的で踏み出しやすい値段だと思います。人間が演じる熱量がダイレクトに伝わってくる作品だと思うので、初めての方はどうぞ飛び込んでください。誰でも楽しめます。そして通な方、たまにはバカバカしいものを観てほしいです。ワタナベエンターテインメントの勢いがある若手たちが集まり、キラリと光るものがきっとあるはずです。熱量を感じに来ていただけたらとても嬉しいです」
(取材・文&撮影:谷中理音)
プロフィール
中尾暢樹(なかお・まさき)
1996年11月27日生まれ、埼玉県出身。『動物戦隊ジュウオウジャー』主演で注目を集め、ドラマや映画、舞台など幅広く活躍中。D-BOYSメンバー。近作に、舞台『No.9 -不滅の旋律-』、舞台『ロミオ&ジュリエット』、舞台「東京リベンジャーズ」シリーズ、ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』など。
池岡亮介(いけおか・りょうすけ)
1993年9月3日生まれ、愛知県出身。舞台を中心に活躍中。D-BOYSメンバー。近作に舞台『白衛軍 The White Guard』、舞台「刀剣乱舞」心伝 つけたり奇譚の走馬灯、ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』シリーズ、舞台『世界のすべては、ひとつの舞台 〜シェイクスピアの旅芸人』などがある。
納谷健(なや・たける)
1995年8月7日生まれ、大阪府出身。優れた身体能力で多くの舞台やドラマなどで活躍中。劇団Patchメンバー。近作に音楽朗読劇『ひまわりの歌〜ヘブンズ・レコードからの景色〜』、舞台『ヒストリーボーイズ』、少年社中『テンペスト』など。3月には舞台『毒薬と老嬢』が控えている。
公演情報
舞台『クレイジーレイン』
日:2025年3⽉5⽇(⽔)〜9⽇(⽇)
場:新宿シアタートップス
料:7,800円(全席指定・税込)
HP:https://crazyrain.westage.jp
問:ワタナベエンターテインメント
tel.03-5410-1885(平日11:00~18:00)