“動く絵画”と“エレキチェロ”が出会うことで生まれた、新感覚アート コミニョーリと呼ばれる小さな煙突たちが、夢の中を散歩する物語

“動く絵画”と“エレキチェロ”が出会うことで生まれた、新感覚アート コミニョーリと呼ばれる小さな煙突たちが、夢の中を散歩する物語

 昨年、宮沢賢治作『セロ弾きのゴーシュ』の世界を、現代アートとエレキチェロ独奏のコラボレーションで表現した九十九伸一と九十九太一。それに触れる人の想像力を掻き立てる催しだったが、今年も神奈川県の大和市芸術創造拠点シリウスで開催される「九十九伸一展~ツクモワールド『コミニョーリ 煙突夢物語』」で、アートとチェロによる“デジタル紙芝居”が上演される。
 今年の演目である『コミニョーリ 煙突夢物語』は、デジタル紙芝居として伸一が絵画を、太一が音楽を担当。2人で練り上げた完全オリジナルストーリーとのこと。

伸一「“コミニョーリ”とは、ミラノにある小さな煙突たちです。いつも屋根の上にいる動くことのできない煙突が、赤い長靴を履いて夢の中を散歩するストーリーです。夢の中で出会った、くじらの親子や龍神、AIたちとの出会いの中で、命の輝きや勇気、愛を知っていきます。AIとの出会いでは、現代社会における環境破壊なども取り上げています」

 煙突が主人公のファンタジーとはなんとも可愛らしいが、物語には宮沢賢治原作『セロ弾きのゴーシュ』と『月夜のでんしんばしら』をモチーフにした“ゴーシュ”も登場するという。「独特な感性を持つ、2つの物語に刺激を受け、より現代的に解釈しました」と伸一は語る。そんな夢物語を動かすのは太一によるエレキチェロの独奏だ。

太一「エレキチェロでは本来の音色のみならず、エフェクターによって多種多様な音色を1台の楽器で演奏できます。エレキ楽器特有の音色から動物の鳴き声、様々な環境音を素材として音楽を構成することができるし、今までにないオーケストレーションを創り出すことで本来無機質であるコンサート会場を異次元空間にすることも可能だと考えます。

 ぜひ“動く絵画”דエレキチェロ”でお届けする新感覚エンターテインメント『コミニョーリ煙突夢物語』の世界を体感してみませんか。心よりお待ちしております」

伸一「コラボイベントとして『九十九太一 エレキチェロ・コンサート』を13日に同館内で開催します。前日12日には、同じ演目で『九十九太一エレキチェロ演奏会』を近くの音楽スタジオMusica Hidratante で前夜祭的に開催予定です」

(取材・文:渡部晋也)

今年の夏はスポーツがアツい! あなたが注目するスポーツは?

九十九伸一さん
「スケートボードがまだメジャーでない頃、以前バルセロナ現代美術館前の広場で、たくさんの若者たちがスケートボードに夢中になっているのを見て、感動したことを思い出します。現代アートのパフォーマンスだとも思いました」

九十九太一さん
「特別関心のあるスポーツはありませんが、しいて言えば、スペインの女子サッカーです。なでしこジャパンをはじめ、現在世界的にも女子サッカーが注目されていますが、先日、FCバルセロナ女子チームが、ヨーロッパ・チャンピオンズリーグに優勝し、街は熱狂しました」

プロフィール

九十九太一(つくも・たいち)
スペイン・バルセロナで生まれ育つ。幼少期からチェロの音色に興味を持つ。7歳でチェロ学び始め、12歳でカタルーニャ州立バルセロナ高等音楽院に入学。15歳から作曲とチェロを両立させながらチェロ界の巨匠 マルサル・セルベーラ氏、エンリコ・ディンド氏、ピーター・ティーマン氏に師事。2011年、バルセロナ・リセウ音楽大学チェロ科卒業。卒業リサイタルでオリジナル・チェロソロ曲を発表し異例の高評価を得る。西洋と東洋を融合させた神秘的なリズムとハーモニーを形而上的に組み込む音楽スタイルを中心に、自然や様々な時代の芸術作品からも刺激を受け、創作活動を続けている。

九十九伸一(つくも・しんいち)
1980年にミラノにアトリエを構え、メキシコ・プエブラ文化省の招待による「メキシコ国内巡回展」に参加。各地の美術館で個展。1986年にバルセロナに拠点を移し、彫刻家エドワルド・チリダ氏によってその作品が認められる。2001年、スペイン国際現代美術展ARCOではフォアン・カルロス国王陛下の賞賛を受ける。2003年、国際コンテンポラリーアートフェスティバルNiCAFに出展。以降スペインと日本を往復して作品を発表。各地で大規模な企画展を開催している。

公演情報

九十九伸一展 ~ツクモワールド コミニョーリ 煙突夢物語~

【九十九太一 エレキチェロ演奏会】
日:2024年7月12日(金)19:00開演(18:30開場) 
場:Musica Hidratante

【九十九太一 エレキチェロ・コンサート 「動く絵画」×「エレキチェロ」=「デジタル紙芝居」】
日:2024年7月13日(土)14:30開演(14:00開場)
場:大和市文化創造拠点 シリウス3F マルチスペース

※演奏曲目は2公演とも同一

料:1,500円(全席自由・税込) 
HP:https://www.s-tsukumo-kan.jp
問:ギャラリーおがわ 
  tel.046-267-0077(10:00~18:00/月火休)

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