ジャズ作曲家・挾間美帆プロデュースによる注目のクロスオーヴァー公演 現代ジャズ作曲界の神格的存在、マリア・シュナイダー

ジャズ作曲家・挾間美帆プロデュースによる注目のクロスオーヴァー公演 現代ジャズ作曲界の神格的存在、マリア・シュナイダー

 ジャズ作曲家・挾間美帆が2019年から毎年プロデュースしている『NEO-SYMPHONICJAZZ at 芸劇』は、シンフォニックジャズ(オーケストラで演奏されるジャズ)を中心に据えたコンサート。毎年異なるテーマに基づき、オーケストラで滅多に聴けないようなジャンルを超えた選曲、豪華なゲストが魅力となっている。今年は、挾間が尊敬してやまないマリア・シュナイダーを主役に据えた特別企画が組まれた。

 「このシリーズがはじまった当初から、彼女を呼ぶのが1つの目標でした。今回メインプログラムに選んだ『カルロス・ドルモン・ヂ・アンドラーヂ・ストリーズ』は本当に名作で、もっと再演されるべきです。カーネギーホールでのニューヨーク初演(2011年5月)を聴いているのですが、弦楽器でもやっぱりマリア独自の音になることに驚かされましたね」

 この作品は、2013年のアルバム『Winter Morning Walks』に収録された室内管弦楽の伴奏による全5曲の歌曲集。20世紀ブラジルを代表する大詩人 カルロス・ドルモン・ヂ・アンドラーヂの詩の英訳を歌詞にしている。このアルバムはグラミー賞で、通例クラシックや現代音楽の作品に贈られる部門を勝ち取った記念碑的なアルバム。ジャズ作曲家の作品がクラシック音楽の文脈でも評価される流れをつくった歴史的な重要作なのだ。

 「室内オーケストラとは別に、オリジナルのラージ・アンサンブルから私が編曲した『HangGliding』と『Sanzenin(三千院)』の演奏を予定しています。マリアが前回来日したのは2017年なので、2020年に発表したアルバム『Data Lords』の楽曲は日本でまだ演奏されていないんです。マリア自身も日本でまだやっていないと何度も言っていたので、日本に関係ある『Sanzenin』を選びました」

 今回の来日が特別なのは、マリアが自分のグループではなく、日本の音楽家によって編成されたアンサンブルを指揮すること、加えて1つのコンサートでビッグバンド(ラージ・アンサンブル)と室内オーケストラを指揮するのは彼女にとって完全に初めての経験だからだ。

 「室内オーケストラの前には池本茂貴さん率いるisles(アイルス)をマリアが指揮して、これまでリリースしたさまざまなアルバムから珠玉の名曲を聴かせてくれます」

 今回の多彩なプログラムをマリア自身の指揮によって日本で聴けるのは、きっと最初で最後だろう。絶対に聴き逃がせない今年最注目の公演だ。

(取材・文:小室敬幸 再編集:長井進之介)

プロフィール

挾間美帆(はざま・みほ)
国立音楽大学およびマンハッタン音楽院大学院卒業。これまでに山下洋輔、坂本龍一、鷺巣詩郎、NHK交響楽団、テレビ朝日「題名のない音楽会」など多岐にわたり作・編曲作品を提供。2012年、ジャズ作曲家として世界デビュー。2016年、米ダウンビート誌の「未来を担う25人のジャズアーティスト」にアジア人でただ1人選出。2019年、ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100」に選ばれるなど高い評価を得る。2023年、デビュー10周年記念アルバム『ビヨンド・オービット』をリリースし、日米で発売記念ツアーを行う。シエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンス、DRBB首席指揮者、オランダのメトロポール・オーケストラ常任客演指揮者を務める。

公演情報

NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇 『マリア・シュナイダー plays マリア・シュナイダー

日:2024年7月27日(土)17:00開演(16:00開場)
場:東京芸術劇場 コンサートホール
料:S席 8,500円 U25[25歳以下]3,000円
  A席7,000円 B席5,500円 高校生以下1,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://www.geigeki.jp
問:東京芸術劇場ボックスオフィス
  tel.0570-010-296(10:00~19:00/休館日除く)

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