―――――2023年5月にさよなら中野サンプラザ音楽祭のために結成された、コーラスグループ“JBB”がコンサートツアーとして復活しますね。
「はい。今回コンサートツアーとして一つの括りになっていますが、ビルボード大阪(6月1日・2日)とビルボード横浜(6月8日・9日)での公演では、昨年やらせていただいたコンサートをコンパクトにしたものを予定しています。一方、名古屋(6月3日)、東京(6月5日)、静岡(6月7日)での公演は、カバー曲ではありますが“新曲”を入れたセットリストになっています。
昨年、中野サンプラザでデビュー(笑)した際は、コーラスを中心にした4人のハーモニーをたった一度だけお届けしました。実際にご来場いただいた観客の皆様以外は、現状、日テレプラスでのオンエアでしかご覧いただけないわけですが、今回は東京以外の場所でもその歌声を届けることができるわけです。
ミュージカルやそれぞれの活動を通して僕たちのことを知ってくださっているけれど、4人がどういうことをしているか、4人だとどういうハーモニーを奏でるのか知らない方々もきっと多いはず。そんな方々にも楽しんでいただけるツアーになったらいいなと思っています。僕もワクワクしています」
―――――“新曲”を入れたセットリストはどのように選曲されたのですか。
「やはり4人でハーモニーを作りたいというところから始まって、洋楽と邦楽のどちらもセットリストに入れたいよねということを話しました。
ちょっと新しいものだったり、意外性があるものだったり、チャレンジングな楽曲だったり……。誰もが知っている曲から、知らない人もいるかもしれないけどコンサートをきっかけにいい曲だなと思ってもらえたらいいなという曲だったり……。よりコンサートが楽しめるセットリストを考えていきました」
―――――特に楽しみな1曲やチャレンジングな1曲は?
「The Manhattan Transferの『Twilight Zone』という曲はご存知ですか? あまりピンと来ないという人も、多分フレーズは聞いたことがある曲だと思います。『Twilight Zone』というテレビ番組があって、その番組にインスパイアされた1曲だそうですが、The Manhattan Transferは世界的にとても有名な男女2人ずつの4人編成のコーラスグループですよ。コーラスを志す人たちだったら、この曲は多分やってみたいと思うんじゃないかな。
そのThe Manhattan Transferがカバーしている『Route66』という曲もスタンダードで有名な曲。The Manhattan Transferバージョンもお洒落なコーラスなのですが、今回は藤岡正明さんがアレンジを加えているので、4人ならではのハーモニーになっていると思います。僕らは女性がいない男性4人だけのグループですが、4人が揃えば高音から低音まで出せる。そういう意味で『Twilight Zone』と『Route66』はそれぞれが培ってきたものが生かされるナンバーかなと思います。
あとスペクトラムの『Act-Show』という曲もなかなかしびれるナンバー。スペクトラムは金管楽器をメインにした日本のアーティストグループなんですが、僕が『僕たちの冒険!』や『SCORE!~Musical High School〜』でご一緒した宮下康仁さんが歌詞を書かれているんですよ。昭和のヒット曲だけれども、その楽曲の世界観は演歌や歌謡曲とは違って、もう少しグローバルな匂いがする。洋楽思考だけど、それが格好いい日本語となってサウンドに乗っかっているという意識が高い音楽なんですよ。
そういう意味では、SEKAI NO OWARIの『Habit』もいい塩梅で比較できるかもしれません。邦楽なんだけど、洋楽的な要素もあるから。
……すみません、1曲に絞れません(笑)」
―――――「JBB」は『ジャージー・ボーイズ』チームBLACKから生まれた4人組ですが、やはり『ジャージー・ボーイズ』で役を背負っているときとはまた違う感覚ですか。
「そうですね。『ジャージー・ボーイズ』から生まれた4人組ではありますけど、『ジャージー・ボーイズ』を意識することは 全くないですね。なぜならば『ジャージー・ボーイズ』のシチュエーションではないから(笑)。
ですが、このJBBとしての経験をまた作品にフィードバックしたいという思いは最初からあります。何のためにJBBをやっているかと問われれば、この作品をもっと多くの人に知ってほしいからなんです。僕たちは『ジャージー・ボーイズ』の稽古で苦労しながらコーラスの技術を磨いて、ギミックを練習して、本番でお客さんの力も借りながら、一つひとつ積み上げている。けれど、公演が終わって他の作品が始まったり、時間が経ったりすると、どうしてもそれらが抜けていってしまうじゃないですか。それが惜しい。
それにコーラスは、それぞれが持っている才能やスキル、経験が思わぬ形で際立ってくるのが面白いなぁと思うんです。『ジャージー・ボーイズ』の劇中では、もう歌えて当然、コーラスができて当然というところからスタートするので、コーラスを作り上げていくことをじっくり体験できなかったりもするのでね。そういう意味でも、JBBの活動は意味があると感じています」
―――――では、中川さんにとって『ジャージー・ボーイズ』という作品はどんな作品だと今思いますか。
「まずは純粋に本当にいい作品だと思うし、今のところ定期的に再演を繰り返していることはすごく嬉しいです。
『ジャージー・ボーイズ』はその音楽を聞いただけで、その時代にタイムトリップできるし、仮にその時代を生きていない人でも、どこかのタイミングで楽曲に出会ったときに「歌ってみたい」と思えるアーティストたちのヒット曲が詰まっている。しかも単にヒット曲が散りばめられているジュークボックス型ミュージカルというわけではなくて、僕たちが日本で作った『ジャージー・ボーイズ』は、藤田俊太郎さんの演出によって、4人の生き様が見える演劇として成立したわけです。実在する4人の人物の人生をお芝居で見せながら、そこに見事にヒット曲がシンクロしているところが評価を得ているのだと思うんですね。
天使の歌声と言われる、フランキー・ヴァリの歌声。僕自身、初めて出す声ではあったけれども、もともとハイトーンボイスが武器だった僕にとって、ヴァリの声を出す訓練は刺激的だったし、大きな財産になりました。僕にスポットライトを当ててくれたという意味でも、すごく運命的な役だし、作品だと思います。 同時に、僕だけではなくて、歌手でもいいし、歌が好きな人でもいいし、もちろんミュージカルが好きな人でもいいけども、これからの新しい才能がこの作品を通して、またどんどん生まれていってくれたらいいなという思いもあります」
(取材・文:五月女菜穂 撮影:友澤綾乃)
プロフィール
中川晃教(なかがわ・あきのり)
1982年11月5日生まれ、宮城県出身。小学生時代から作曲を始め、2001年に自身が作詞・作曲した「I WILL GET YOUR KISS」でデビュー。同曲にて第34回日本有線大賞 新人賞を受賞。2002年、日本初演となるミュージカル『モーツァルト!』の主演に抜擢され、初舞台で第10回読売演劇大賞 優秀男優賞・杉村春子賞など数々の賞を受賞。以後、音楽活動と並行して多数のミュージカルで主演を務める。
公演情報
JBBコンサート2024 in 八王子
日:2024年6月5日(水)18:30開演(17:45開場)
場:J:COMホール八王子 ホール
料:S席9,500円 A席8,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.hachiojibunka.or.jp
問:公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団 tel.042-621-3005(9:00~17:00)