同じ時代を生きてきた2人の女優が、古屋に暮らす老姉妹を演じる二人芝居 演劇が好き過ぎるからこその熱意が火花を散らす

同じ時代を生きてきた2人の女優が、古屋に暮らす老姉妹を演じる二人芝居 演劇が好き過ぎるからこその熱意が火花を散らす

 かつて小劇場ブームの一角を担う存在として華々しい活躍を見せ、現在に至るまで旺盛な創作意欲で突き進む劇作家・演出家・女優の渡辺えり。劇団青年座で研鑚を積み、数多くの映画やドラマに出演し、90年代以降は舞台作品でも活躍を見せる女優・高畑淳子。実年齢もほぼ同じの2人が、渡辺の手による『さるすべり』で共演する。

渡辺「高畑さんとは同世代だから同じ芝居や映画、本を観てきているので、お互いに感覚が凄く合う。さらに2人とも田舎から出てきて1からコツコツやってきましたから。新劇とアングラで出会うことはなかったけど、ようやく共演の機会があって。それならば二人芝居をやりたいと思って」

高畑「二人芝居だからきっと台詞の分量が凄いと思うんです。やったことがないので、どうしようかと思ってます。最近、これからはぼやーんと舞台にいられるようになればいいなと思っていたのですが、こんなに台詞があったら無理ですね。渡辺さんは凄く正直な演劇少女。こんな人なかなかいませんから……まぁ、少女という歳でもないけど(笑)」

 2020年に初演されたこの作品。コロナ禍で急遽劇場が空いたことから書いたのだという。

渡辺「劇場が空いてしまって急遽、木野花さんとやることにしたのですが、トークショーなどを考えていたら、木野さんが新作を書けと(笑)。稽古期間も1週間しかない、そんな綱渡りみたいな公演でした。だからもう一度きちっと稽古してやりたかったんです。木野さんは私より7歳年上なので、そのあたりも弁えて書きましたが、高畑さんとご一緒するにあたり、だいぶ手を入れています」

 ここ数年の渡辺作品は生演奏が入るなど音楽にも力を入れているが、今回もコントラバスとバンドネオンが参加するという。

渡辺「初演に引き続き、コントラバス奏者の川本さんに音楽監督をやってもらいます。曲もおかしな歌を1曲新たに入れる予定です」

高畑「私、声がすぐ裏返っちゃうんです。だから歌には凄く苦手意識がありますね」

渡辺「でもこのところ毎年『パリ祭』に出てるじゃない。裏声で歌っちゃえばいいのよ(笑)。お上手ですから」

高畑「そうねぇ。確かに『パリ祭』のステージに比べたらお芝居は少しも怖くないけれどね(笑)」

 古屋に暮らす長女と出戻りの妹。姉妹の物語が、やがて演劇が好き過ぎる2人の女優の物語と交錯していく、シュールなコメディー作品。個性派女優2人の舞台が実に楽しみだ。

(取材・文:渡部晋也)

プロフィール

渡辺えり(わたなべ・えり)
劇作家・演出家・俳優・歌手。オフィス3〇〇主宰。1983年、『ゲゲゲのげ 逢魔が時に揺れるブランコ』で第27回岸田國士戯曲賞受賞。1987 年、『瞼の女-まだ見ぬ海からの手紙-』で第22回紀伊國屋演劇賞 個人賞受賞。舞台だけでなく、多くのドラマなど映像作品に出演。映画『Shall We ダンス?』では、第20回日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞受賞。本作『さるすべり』は英訳され、自身2作目の英訳出版となった。

高畑淳子(たかはた・あつこ)
大学進学のために上京し、桐朋学園大学短期大学部を経て劇団青年座に入団。舞台女優としての活動の他、70年代中盤からは映画やドラマに多数出演。1988年の紀伊国屋演劇賞 個人賞、文化庁芸術祭 個人賞受賞以降、数々の賞に輝き、2013年には第38回菊田一夫演劇賞 演劇大賞、読売演劇大賞 最優秀女優賞を受賞。こうした功績が認められ、2014年、秋の叙勲で紫綬褒章を受ける。

公演情報

オフィス3○○ 舞台『さるすべり』

日:2024年4月6日(土)~15日(月)
場:紀伊國屋ホール
料:一般7,800円 
  U-25チケット[25歳以下]3,500円 ※枚数限定/要身分証明書提示/当日引換券(全席指定・税込)
HP:https://office300.co.jp/
問:オフィス3○○ mail:mail@office300.co.jp

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