今までにない役やお芝居の化学反応を通して新たな魅力を見せたい 若手もベテランも全力で“バカバカしさ”に挑む舞台に

今までにない役やお芝居の化学反応を通して新たな魅力を見せたい 若手もベテランも全力で“バカバカしさ”に挑む舞台に

 アイドルを志す学生たちの青春を描き、大きな反響を呼んだ『志立彩色女学院アイドル科』。初演、再演を経て、2024年、男性キャストによる『志立彩色学園アイドル科』が上演される。引き続き脚本・演出を務めるのはバルスキッチンの前野祥希。学園の卒業生で伝説的アイドル・星ひかるを塩谷瞬が演じる。

―――男子バージョンはどういった作品になるんでしょう。

前野「ベースの内容は女子と大幅に変わりません。ただ、コメディというと男性の方が笑わせやすい部分が出てきますし、本番でも稽古でもキャストとの関係値は作りやすいというか、男子校ノリでできるかなというのがあるかなと思っています」

―――塩谷さんは卒業生で伝説的アイドル・星ひかるを演じます。

塩谷「僕が演じるのは、色々なことに影響を与えたり、後輩たちが背中を追ってくる中で色々なドラマが生まれたり、最後はみんなを応援するポジションに回る役割です。僕は普段、人間賛歌のような作品が多くて、笑い中心の作品は珍しい。勉強もさせてもらいつつ、たくさん笑って楽しんでもらえるものを作りたいなと思っています」

前野「凄く真面目にお話しいただきましたが、台本は凄くライト。馬鹿馬鹿しいことをさせるので大丈夫かなと思いはじめました(笑)」

塩谷「バルスさんの味をどんどん出してもらえれば」

前野「ボケとツッコミ、ストーリーテラーなどの役割でいうと、塩谷さんにお任せするのはボケです。きちんとお話しするのは今日が初めてですが、実は初めましてではないんです。僕が俳優をやっていた20歳くらいのころ、塩谷さんがゲスト出演した『ハンチョウ』というドラマに僕もゲストで参加していたんです」

塩谷「結婚式の時の?」

前野「そうです。犯人の幼少期みたいな感じで」

塩谷「え、あの時の子!? めっちゃ大きくなったじゃん!」

前野「(笑)。役としての関わりは正直なかったんですが、挨拶をした時に凄く爽やかに挨拶を返してくれて。見た目の印象と中身が本当に変わらない人だという印象がありました。そこで、キラキラした部分と培ってきた経験による厚みで、先輩的な役柄として作品の中軸にいてほしいと。プロデューサーの力もあってキャスティングでき、ラッキーというか『塩谷瞬さんが出るの!?』っていうテンションでした」

塩谷「前の現場でも『出るの!?』って言われました(笑)。みんなに意外だって言われて面白いなって思いました。前に会った、ドラマの時は僕、怖くて熱い感じの役でしたよね」

前野「役からガラッと切り替えて挨拶してくれた印象が強いです」

塩谷「その時は犯人役だったんですが、なぜ事件を起こしたのか、何に苦しんでいたかを伝えないと、僕が視聴者だったら納得できないと思ったんです。監督がデビューからお世話になった人だったので自分で考えた背景を現場終わりで話したら、思いを組んで頂いて、当日3~4ページのセリフを追加して頂いて。思い入のあるシーンになりました。でも当日だったので結婚式のシーンでキャストさん、スタッフさん100人くらいいる中で必死にセリフを覚えました(笑)。


 その時に、ドラマでもこんな風にできるんだと感動したんです。本当キャストさんや監督、みなさんのおかげですが、芝居をするときの化学反応って凄く面白い。今回若い人たちの中に飛び込んでどんな化学変化が生まれるか楽しみです。あと気づかれないこともあるのでいうのですが、、、僕の最大の長所・短所が天然です(笑)」

前野「(笑)」

塩谷「だんだん出てくると思うので、それを最大限利用してもらえると面白くなると思います(笑)」

―――カンパニーについてはいかがでしょう。

前野「今の子って天才的というか、器用な子が多いですよね」

塩谷「そういう意味で、僕らも学ぶことが多いだろうし、若い子がメインになってどんなものを作っていくか楽しみです」

前野「技術も経歴も様々な20人くらいが、限られた時間の中でダンスや芝居のレベルを一定にするのは難しいと思う。ただ、例えば塩谷さんと絡むときに普通に芝居ができるっていう関係値があるだけで、よく見えたりする。そういう意味では、塩谷さんや林(剛史)さん、浅倉(一男)さんがどうやって若い子たちに刺激を与えてくれるか期待しています」

塩谷「林くんは勝手に仕切ってくれるから(笑)。演出家さんが作るものと僕ら役者サイドが作るもの、両方の良さをいけたら良いのかなと思います」

前野「“仕事だからこれだけやればいいでしょ”じゃない空気が出来上がるだけで、作品のテーマが活きてくると思うんです。夢を追いかけるとかキラキラしている姿を仕事にしようとしている人たちの話だから」

―――本作の見どころを教えてください。

前野「男の子たちがアイドルを目指して歌やダンスを練習し、最終的にパフォーマンスで締めるという物語なので、見せ場としてはやっぱりライブとダンス。物語とパフォーマンスの掛け算でよりよく見えるのがポイントです。例えば中盤と後半で同じパフォーマンスをするんですが、最初はダメで後半はキラキラしている。同じことをしているのに変化が見えるのが面白さかと思っています」

―――プロデューサーの方から『主役は学生たちだけど、塩谷さんも座長だと思っている』というお話もありましたが。

前野「主役は別にいるけど、女子バージョンをやった時も伝説のアイドルが一番印象に残ると言われていました。輝いているのをビジュアルでも見せるためにずっとLEDライトを背負ってもらっていて(笑)。塩谷さんにもやってほしいことがあって、美術と一緒にアイデアを練っているところです。失礼かもしれないギリギリのラインだけど、変な遠慮があって中途半端になるのは嫌だなと思っていて。だから、嫌な時は言ってください」

塩谷「はい(笑)。舞台の場合は稽古初日から完成させて!という現場以外はスロースターターで、全体を見てリアリティーや台本の意味を考えて創っていくので時間はかかりますが、積み重ねてくとどんどん伸びていくタイプなので、みんなで熱く語ってぶつかって本番でも進化していく作品にしたいですね。

舞台ってお客さんがいて初めて芝居が生きていく。芝居は役者同士のキャッチボールだけど、その先に何があるかで空間や世界観の広がりが全然違うんです。小劇場でも大劇場でも、お客さんが入ってこそ。だから作品がお客様にとって意味のあるモノでないとダメだと思ってます。

初めて観る人にもわかりやすい面白さを積み上げつつ、バルスの特色やそれぞれの演者の個性や魅力も出せたらいいと思ってます。」

前野「僕らもずっとコメディをやってきているので、ノウハウは持っています。今日お話しして塩谷さんの天然っぷりがわかってきたので、信頼関係を築けたら遠慮なくいけると思うし、作品でも活きるだろうという予感があります」

―――ここまでお話してきて、改めてお互いの印象はいかがでしょう。

前野「前にお会いした時の爽やかな印象と同じです。プラス、演出家としていじっても大丈夫だなって(笑)。これが僕ですというのを見せてくれるし、お客さんを喜ばせたいという根本的なところが一緒。お互いにチャレンジしながら作っていけたらと思います」

塩谷「安心しました。僕も素直でストレートな人間なので、やっぱり心の底で繋がってないとっていうのがあるんです。そういう意味ではご縁があって信頼関係ができたのは凄く嬉しいことです。ギャグメインの喜劇の経験がほとんどないので新しい挑戦にもなるし、みなさんに楽しんでもらえるビジョンが見えたので楽しみです」

―――現時点での意気込み、楽しみなことを教えてください。

前野「ファンの方に喜んでもらえるだけじゃなく、関係者や芝居好きにもしっかり楽しんでもらえるコンテンツにしたいというのが女子の時もあって、男子もその感覚でいきたいと思っています。格好良いだけじゃなく、お芝居としてここが良かった、今までにない表情を見てより好きになった、というきっかけになったら嬉しいです」

塩谷「喜劇かつ学園モノ。僕は役名的にもみんなをキラキラ輝かせなきゃいけないと思うんです。千秋楽でみんながやり切ったと思えるような舞台になれば最高なので、そこに至るまでのものを作っていけたら」

―――最後に、みなさんへのメッセージをお願いします。

前野「みなさんが普段やらないようなバカバカしいことにも挑戦してもらえるよう、遠慮せずに悪巧みしていきます。さらに、ストーリーの熱量やその瞬間の本当の気持ち、汗といったものを見せるための基盤も十分にある舞台なので、楽しみにしてもらいたいです」

塩谷「演出家がこう言っているので、僕らもバカになって面白いことをやれたらと思っています。2月って寒いし気分もちょっと落ち気味になったりする。だからこそ腹を抱えて笑ったり、ほっこりしたりしてもらえる舞台をお届けしたいです」

(取材・文:吉田沙奈 撮影:友澤綾乃)

2024年幕開けです! 今年の野望を1つ教えてください

前野祥希さん
「バルスキッチンを知らしめる! 地道にやってきた事と人の縁が重なり始めている実感をしています。信頼にクオリティでお返ししていきたいです。初心は忘れず、新しい事には前向きに、走り続けて更に強い縁が出来上がっていく年になればいいなと思ってます!」

塩谷瞬さん
「2024年は新しい展開が始まる年。野望は海外での経験と夢を形にしたいと思います! 『 新風飛翔 』新しい風の芽を育てて、早さの翼を持ち、風の時代を 天高く駆け巡る。初心忘れず、走り続けられるよう心も体も鍛え、塩谷瞬にしかできない役に魂を吹き込みたいと思います。『芸術の力で幸せと生きる力を全ての人へ』」

プロフィール

前野祥希(まえの・よしき)
1991年3月23日生まれ、千葉県出身。高校卒業後、役者として舞台やCM・映画などに出演。2015年、初のプロデュース舞台で脚本・演出デビュー。2017年に劇団バルスキッチンを旗揚げし、高島平に設立した「バルスタジオ」を中心に様々な舞台を上演している。近年の主な脚本・演出作品に、『歌舞伎町シュガーナイト』、『ほぼほぼ心霊スポット』、『どぎまぎメモリアル』、『夢ぼくろファンタジア』など。

塩谷 瞬(しおや・しゅん)
石川県出身。15才の時、自分の波瀾万丈な人生経験を生かせる職業は俳優ではないかと考え上京。『忍風戦隊ハリケンジャー』で主演デビュー。映画『パッチギ!』にて、第29回日本アカデミー賞 新人俳優賞 他受賞。主な舞台出演に、『トロイラスとクレシダ』、『ジャンヌ・ダルク』、『The Great Gatsby 2023』など。世界200ヶ国を巡り、アフリカや東ティモールなど海外支援活動や、世界の子どもたちへの「夢の授業」を行っている。【公式HP】 https://shunshioya.officialsite.co

公演情報

舞台『志立彩色学園アイドル科』

日:2024年2月7日(水)~12日(月・祝) 
場:バルスタジオ
料:S席[最前列・各回限定10席]10,000円
  A席[2列目・各回限定11席]9,000円
  一般席[3列目以降]7,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/Saidan_official
問:劇団バルスキッチン 
  mail: baluskitchen@gmail.com

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