極限状態の心理を表現するダークサスペンスファンタジーが新章へ! 「全てを疑い、そして奪え」互いの未来を賭けたバトルロワイアル

極限状態の心理を表現するダークサスペンスファンタジーが新章へ! 「全てを疑い、そして奪え」互いの未来を賭けたバトルロワイアル

 “どこまでも続く旅を、景色を、作品として届ける”をコンセプトとする演劇プロデュースユニット Charm(シャルム)。その最新作は2019年に上演された傑作ダークサスペンスファンタジーの続編だ。
 不慮の事故により命を落とし、Withered Lifeと呼ばれる現世と冥界の狭に、記憶を失い存在していた高校生の工藤春は、同様に集められた仲間と共に現世に戻る為のゲームに参加する。
 次々と死んでいく仲間たちが、次のゲームでは敵となって襲いかかってくる修羅場をくぐり抜けた春達の前に、“イブ”と名乗る新たなゲームマスターが現れる。「全てを疑い、そして奪え」
 次々と課される極限の試練の中、新たに参入した玖州組は敵か? 味方か? 互いの未来をかけたバトルロワイアルが始まった。
 前作に引き続き、主演の工藤春を演じる笠原織人、玖州組の頭領・慶悠二役の五十嵐拓人、そして主宰の吉田健児に本作への意気込みを聞いた。

―――今回、続編を描こうと思われた経緯を教えていただけますか?

吉田「元々は1回で完結する予定だったのですが、脚本を書いていくうちにページ数が足りなくなってしまいました。もっと主人公たちが色々なフィールドを旅するという世界を見てみたくなって、続編をつくりたいねということになりました。
 それで続編で何をやるか?となった時に、既存のメンバーでやるのもいいけども、ガラリと変えて新しい風を入れてみてはどうだろうとなりました。新しいものを取り入れることによって、様々な人の価値観を表現できたらなと思い、新章をつくることにしました。
 本作ではアクション、アクロバットがメインになっていて、前作以上に激しいバトルが繰り広げられるので是非、注目して頂きたいと思っています」

―――主演のお二人は、脚本を読んでどんな印象を持たれましたか?

笠原「圧倒的にパワーアップした印象を受けました。キャストの方もそうですが、前作で描けなかったキャラクターのバックボーンや、心情が続編となる本作ではしっかりと描かれているなと思いました。
 漫画『GANZ』に発想を得て、死後の世界で1か所に集められた人達が、理由も分からないままゲームのように敵と戦うという世界観が面白くて、多くの登場人物がいますが、主人公側と敵側のビジュアルも含めてしっかり区別されているので、初めて観る方でも入りやすい作品かなと思います。
 春は良くも悪くもすごく純粋な子なんだと思います。前作でも描かれた弱い一面が本作でどのように成長していくのかという、春自身の物語もあるので、そこも楽しみにして頂きたいなと思います」

五十嵐「脚本を読んだ第一印象は、難しかったですね。登場人物に比例して場面転換も多いのですが、熱量を持たせたままで、お客さんの集中力を妨げることなく物語を届けることが、役者側としてはひとつの挑戦になると感じました。
 特に自分が演じる玖州チームの頭領・慶悠二はゲーム内における絶対的強者。自分も演じる上で絶対に隙を見せてはいけないと思っていますが、個人としての五十嵐拓人はヤカラではないので、隙を作らないように自分も集中力を維持する状況になれていかないといけないなと思いました」

―――五十嵐さんは2.5次元作品に多く出演されていますが、演じる上で心掛けていることはありますか? また笠原さんは主人公の工藤春にどんな印象を持っていますか?

五十嵐「僕自身、かなりのオタクで原作のライトノベルやアニメとか幅広く見ていました。ファンの視点でしっかり点を取ることはきちんと踏まえた上で、ただ漫画やアニメをなぞるだけではなくて、自分しかできないオンリーな箇所も作りたいと心掛けています。期待を裏切らない部分と、いい意味でそこを凌駕する部分、この2つを大切にしています。
 本作で僕が慶悠二に感じたことは、荒々しさというよりも、自分の中にしっかりとした芯を持っているなと。誰かに影響を与えようと思っているのではなくて、ただそこにいるだけで、周囲が自然と影響されている。そんな空気をまとったキャラクターだなと感じました。なので、勝手に見て勝手にビビれよという画を作れたらと思っています。
 だから稽古の段階から皆さんとはあまり仲良くしないようにしたいと……それは冗談です!(笑)」

笠原「春は今、いる世界がどんなものか分からないこともあって、積極的に周囲に絡んでいって、知りたい知りたいと聞きたがる。そういう点では皆との関係性の作り方をしっかり見せていくことが重要だと思います。特にルーム内最強と言われる慶悠二に絡んでいくときには、『こいつが最強か!?』という好奇心を全面に出していこうと思います」

吉田「拓人さんと織人君が言ってくれたように、この2人は対極にあるんですよね。慶悠二は誰よりも周囲を見ているけれども、必要な情報しか喋らない。一方で工藤春は周りが見えていないのに、無理をして見ようとしすぎている。そういう2人の対極のバランスがまた1つの見どころになるのではないかと思います。
 最初、慶悠二を含む玖州組の人達は、僕らとは真逆の生き方をしている人達を客観視で描こうとしましたが、書いているうちに、結局は同じ人間なんだというところに行きつきました。なので観ている方にも『ここは自分と似ている』と共感持ってもらえるような演出も考えているところです」

―――主演の2人に期待したいことはありますか?

吉田「前作と比較してもはるかに大きい世界観をお客さんに届けたいと思っています。脚本家としては、句読点よりも助詞・助動詞といった付属語にこだわりたいと思っていて、台詞としての単語を立てることよりも、単語のあとに続く箇所に人の葛藤などをうまく入れて欲しいですね。
 特に主演の2人はかなり戦闘シーンが多いのですが、その戦う意味にもウエイトを置いて欲しいですね。速い殺陣よりも意味のある殺陣と言いましょうか。本作では正義か悪か、イエスかノーかで人を判断できるわけではないというのが1つのテーマでもあります。
 一方で演出としては言葉を咀嚼できないと意味がないので、全てのキャラクターが粒立って最初から最後まで物語を紡いでいってもらえたらなと思います」

―――読者にメッセージをお願いします。

笠原「前作に引き続き、僕の中で共通しているテーマがあって、それはキャラクターとしても役者としても苦しむ姿が観られる作品だということです。普段はあまり観られないそういう部分が観られる作品は稀有だと思いますし、続編であっても、配布資料に詳しく説明がされているので、初見の方でも楽しめる作品になっています。是非、多くの方に観てもらいたいです!」

五十嵐「第1作目からのお客さんに受け入れてもらうことは前提として、キャラクターが増えているので2作目から観られる方も多いと思うので、そういう方にもきちんと寄り添えるように……って言いながら、自分はそういうキャラじゃないなと気づきました。ちょっとチューニング間違いました(笑)」

一同「(笑)」

五十嵐「五十嵐拓人的にはそういう気持ちを持ちつつ、魅力的なキャラクターが多いので、全員叩きのめせるように頑張ります!(笑)」

吉田「Charmとしてもすごく人気がある作品です。ダークファンタジーを描いていますが、人の苦しみや葛藤を作品としてのアクセサリーにならないように、良くも悪くもお客様の心に影響を与える、観終わったあとに、人が生きる意味について考えられる、何か人間の真理に迫れるような作品にできたらなと思っています。是非、皆様のご来場をお待ちしています」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

笠原織人(かさはら・おりと)
1992年生まれ、埼玉県出身。2002年1月、蜷川幸雄演出の舞台『身毒丸 ファイナル』でデビュー。以後、『NINAGAWA マクベス』マクダフの息子役、ドラマ『大奥~第一章~スペシャル』徳川家綱役など出演。ROCKミュージカル『ピンクスパイダー』出演をきっかけに本格的な音楽にも目覚め、アーティストとしても活躍。出演作に、舞台『テイルズ オブ ザ ステージ~ローレライの力を継ぐ者~』ディスト役、『ヨルハ ver1.3a』シリーズ 司令官ホワイト役、『信長の野望・大志~最終章~ 群雄割拠 関ヶ原』佐竹義重役、映画『TELL ME~hideと見た景色~』kiyoshi役などがある。

五十嵐拓人(いがらし・たくと)
1994年生まれ、青森県出身。2017年、映画『春みたいだ』で主演。舞台では、2.5次元ダンスライブ『ALIVESTAGE(アライブステージ)』シリーズ 須貝誠役、音楽劇『黒と白 -purgatorium-』シリーズ強欲・マモン役のほか、舞台『呪術廻戦』では両面宿儺役を好演した。

吉田健児(よしだ・けんじ)
1992年生まれ、山形県出身。Charm主宰。エンタメ時代劇シリーズ『さくらば』(脚本)、Charm Vol.8『蛮勇戦歌』(作・演出)などが主な代表作。殺陣師として緑川光・浪川大輔・岸尾だいすけ・森久保祥太郎・小西克幸 出演の映画『D5 5人の探偵』を手掛ける。他にも、岐阜県主催 関ケ原ナイト2019 野外音楽朗読絵巻『吉継』石田三成役、Charm vol.13『フクロウガスム2023』演出など、幅広く活動する。

公演情報

Charm vol.14『Withered Life ~苛烈玖州事変~』

日:2024年2月14日(水)〜18日(日)
場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
料:S席10,000円 A席8,000円
  一般席6,000円(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/charmcharm2019
問:Charm mail:unitcharme@gmail.com

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