レトロ文學の復刻で再注目! ユーモア小説の大家・獅子文六が愛した作品 海外コメディを上演し続け55年。劇団NLTが挑む昭和の喜劇

レトロ文學の復刻で再注目! ユーモア小説の大家・獅子文六が愛した作品 海外コメディを上演し続け55年。劇団NLTが挑む昭和の喜劇

 昭和の人気作家・獅子文六(岩田豊雄)の隠れた名作『二階の女』が、およそ40年の時を経て博品館劇場に帰ってくる。本作は、文六の短編小説をもとに、飯沢匡が脚本を手掛け喜劇として舞台化された。開戦前夜の当時と、不安定さ漂う空気感がリンクする現代だからこそ「上演するにふさわしい作品」と劇団代表の川端槇二は意気込む。

川端「海外のコメディをずっとやり続けてきた劇団が、創造の原点でもある両先生の喜劇作品に取り組むこと、それが劇団のコメディ路線の見直しにもなって路線拡大にも繋がるのではないか。集団の大きな役割として今世に問うてみるべきではないかと」

 劇団作品にかかせない女優・阿知波悟美に印象を聞くと。

阿知波「戦争に向かっていく時代に置かれた人々の想いや、当時の考え方の刷り込みだったり、とても深いものがいっぱい入っていて、自分に問いかけてくるような作品。これをNLTが喜劇としてやる意味があるんじゃないかと思っています」

 そんな中で始まった初読み合わせでは、大きな手応えがあったと興奮気味に語る。

阿知波「凄く嬉しかったです! 役者達が、それぞれちゃんとキャラクターを携えて読み合わせに来てる感じが凄く良くて興奮してしまいました。いっぱい発見があって帰ることができず、帰り道が一緒の共演者と飲みに行ってしまった(笑)。充実した話ができ、構築はこれからですが、この作品を上演しようと企画した制作や代表の気持ちがわかって、ちょっと着火しました」

川端「全く同じ。今回は初読み合わせでいきなり立体的な絵が出てきちゃって、これは凄いなって。改めて岩田先生がお書きになった小説の人間の面白さや関係のおかしさ、そこに飯沢先生の時代を見る目の凄さ、筆の力を感じましたね」

 演出は数々の演劇賞受賞歴がある鵜山仁が担う。昭和の作品と鵜山のコラボレーションが楽しみと2人は目を合わせる。

阿知波「最近は洋式の生活をしているから、立ち座りが多い和物は我々にとって身体的に凄く挑戦です。それでも作品の面白さ、昔の方がどのぐらい素敵だったか、2人の先生の素晴らしい脳内を覗きに来てください」

川端「“二階の女”とはなんぞやと。喜劇だけれども不条理劇として面白い局面が切り出される予感がしています。博品館劇場で味わう面白さと、お持ち帰りいただいた後で怖くなったり、二度お楽しみいただける作品になったら」

(取材・文:谷中理音 撮影:森井 舞(平賀スクエア))

2023年を総括!と聞いて、一番最初に浮かんだ出来事は?

川端槇二さん
「後期高齢者だと自覚した。近年、持病の脊柱管狭窄症が悪化して左脚に痺れを感じていた。3月のオペレッタ『こうもり』の持ち役・酔っ払いの看守で左脚を庇ったせいか右膝に違和感を感じ、直後の小劇場での舞台で痛みを感じ、4月に別団体の『こうもり』の後、関節炎と診断された。5、6月はリハビリに励んだが、7月に急遽引き受けた舞台でも不本意な動きしか出来なかった。その後の時代劇でも正座は出来ず、新人育成公演でも、育成対象者の演出家の要望するダンスやマイムにも充分な対応が出来ず、これは〈始末書〉ものだと恥じ入った」

阿知波悟美さん
「私にとっては、まだまだ通常とはいえない1年でした。ここ数年、コロナ禍によって、公演が中止になったり、ツアーが出来なかったり、客席に観客50%だったりと、我々役者にとって厳しい日々が続いていました。今年になってやっと緩和され、公演はできるようになりましたが、演者もスタッフも全く変わらず感染対策をしています。しかし、どんなに対策しても罹患することもあり、私達は毎日不安と恐怖の中にあります。ご観劇いただいたお客様に直接お会いすることもかなわず、無事に千穐楽を迎えた仲間たちと打ち上げも出来ず。仕方がないのでしょうが、やはり寂しさを感じています」

プロフィール

川端槇二(かわばた・しんじ)
劇団NLT 代表。1967年、NLT舞台『鹿鳴館』で初舞台を踏む。その後、劇団の喜劇路線第1作となる『マカロニ金融』に出演。以降、出演のほか、演出も行い若手劇団員育成にも力を注ぎ、創立者・賀原夏子の“賀原イズム”を伝えている。主な出演作に『毒薬と老嬢』、『ばらばら』、『招かれた客』、『黒蜥蜴』、『OH!マイママ』など。

阿知波悟美(あちわ・さとみ)
北海道出身。故・賀原夏子が主宰の劇団NLTに入団。28歳の時に『レ・ミゼラブル』初演オーディションに合格し、テナルディエ夫人で出演。2010年、ミュージカル『キャンディード』で読売演劇大賞 優秀女優賞を受賞。ドラマや映画では、世話好きなおばちゃんから厳格な母親や上司といった幅広い役どころで多くの作品に出演。2016年、故郷である今金町の「ふるさと応援大使」に任命される。

公演情報

劇団NLT公演 No.169 『喜劇 二階の女』

日:2023年12月13日(水)~17日(日) 
場:博品館劇場
料:特典付チケット7,500円 一般6,000円
  金ヨル割[12/15 19:00]4,000円
  U29[29歳以下]3,000円
  ※団体のみ取扱/要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:http://www.nlt.co.jp/
問:劇団NLT
  tel.03-5363-6048(平日11:00~16:00)

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事