実力派声優たちによる朗読劇シリーズの最新作 声と音楽が創り出すファンタジックな空間で“取り返しのつかない選択”を体感

実力派声優たちによる朗読劇シリーズの最新作 声と音楽が創り出すファンタジックな空間で“取り返しのつかない選択”を体感

 「朗読(リーディング)」と「音楽(ミュージック)」を組み合わせた、原作・脚本 二宮愛の朗読劇シリーズ“リーディックシアター”。実力派声優たちによる声の演技と、生演奏の音楽で独自の舞台空間を創り出し、多くのファンの心を掴んでいる。
 その最新作『トリカゴ』が、2024年1月に上演決定。セカイを征服するために様々な姿で宇宙から飛来する“トリカゴ”からセカイを守るべく、1人の少女の中にセカイを隠した……その結末とは?
 キャスティングから公演形態までトピック満載の本作について、二宮がメールインタビューで答えてくれた。

キャラクター全員に活躍の場がある4種類の物語

―――今回はリーディックシアターの最新作であると共に、KADOKAWAとの共同企画・主催で、同社の朗読劇ブランド「READPIA」を冠した公演になっています。その経緯を教えてください。

 「『トリカゴ』を形にしていくにあたり制作チームをずっと探していて……。その際に、以前からお世話になっているスタッフさんからKADOKAWAさんをご紹介頂き、最初はお手伝いをして頂けたら嬉しい~的なお話をしていたんですけど、KADOKAWAさんの方から“せっかくなら一緒に作っていきましょう”と言って頂いて、今に至ります。ありがたい限りです」

―――『トリカゴ』を着想したのはコロナ禍が始まった2020年だったそうですが、設定やストーリーはどのように作っていきましたか。

 「実はおおまかなストーリー設定自体は17~18年前に考えていたものでした。それを朗読劇にしようと思ったのが2020年ですね。なので、コロナ渦とは本当に関係なく……地球のまわりを自由に飛び回る小鳥のイメージがふんわり浮かんできて“これは物語に出来そう”と思ったのが最初だったと思います。そこからは、その景色に辿り着く為に足場となる設定を固めていった感じです」

―――今回は、公演ごとに最後の結末(END)が変化する“結末選択型”のステージだそうですが、そのアイデアはどこから出てきたのでしょうか。

 「普段あまり作品のキャッチコピーみたいなものは考えないんですけど、『トリカゴ』は最初から”守るべきはセカイか、少女か。”というフレーズが自分の中に浸透していて。朗読劇として何かフックを持たせたいと思った時にトロッコ問題のような2択を……ということも考えたんですが、さすがに究極すぎるなぁと思い直し(笑)、今回4人の男性キャラクターが出て来るということで4種類の結末をお客様に選んでもらうことにしました」

―――作家がストーリーを組み立てるときは、無数の選択肢から1つを選んで形にしていくのだろうと想像します。今回はそれを4通り用意した、ということなのでしょうか。

 「普段はキャラクターの設定を少しずつ編み込んで1本にしていくイメージなのですが、今回はもう“4種類お話を作る”ということを決めてから書いたので、偶発的に出来たものはひとつもなく、どのエンディングも“キャラクター全員にそれぞれ活躍の場があり、存在する意味がある”ことを念頭に置いて描きました。なので、普段の創作活動とまったく違う脳味噌の使い方をして大変でした。国語よりも数学の力が必要だった……(笑)」

豪華声優陣の魅力が存分に活かされる登場人物

―――自身の中にセカイを宿した少女・キリを、日髙のり子さんが演じます。日髙さんと言えば少女・少年役を筆頭に数々の役柄が思い浮かびますが、今回はどのようなイメージでキャスティングされたのでしょうか。

 「個人的には“みんなの理想の少女像”って日髙さんのお声なんじゃないかなぁと思っています。ただ私としては、日髙さんには“単なる少女じゃない”ところのお芝居を期待してお願いしているところもあって……日髙さんご本人がそれを察してくださっていて、今からどんなキリちゃんに仕上げて頂けるのか、すごくすごく楽しみです」

―――そして、キリとの関係性がそれぞれ異なる4人の男たちが登場します。カナリア役の木村良平さんは、リーディックシアターの前作『THE∞×Family team.Fight』に続いての参加ですが、『~team.Fight』での印象・手応えから“今度はこんな役も……”という思いがあったのでしょうか。

 「そうですね、『~team.Fight』での印象からではないのですが、カナリアは元々木村さんのイメージがあって……終演後に“また新しいお話書くの?”と言ってもらった際に“次も出て頂きたいです”と願望だけ伝えていました(笑)。夢を叶えて頂いてしまったので、あとはもう私が頑張るだけだと思っています。何の心配もしていません! ぴったりだったねって早く皆さんに言ってもらいたいです(笑)」

―――“妹を煩わしく思っている”というキリの兄・レイン役は佐藤拓也さんです。二宮さんとはドラマCDで関わりがありますが、今回はどのような狙いで声をかけたのでしょうか。

 「佐藤さんは以前ドラマCDでお世話になったご縁から、今回は逆にお声掛け頂いたというか……私自身何度かリーディックシアターにご出演頂きたくオファーをしていたので、今回こういった形でまたご一緒出来ることになりとても光栄です。レインは現状、何とも言えないキャラクターではあるんですけど(笑)ご本人のキャラクターとの向き合い方がとても素敵で、常にお客様に届けることを大切にしているのが伝わるので、レイン、きっと大丈夫だと思います(笑)」

―――二宮作品では常連の山口勝平さんが演じるアデリーは、少女連続誘拐事件の犯人でありながら“面倒見の良い性格”と説明されており、そんな一筋縄ではいかないキャラクターを任せる信頼度の高さがうかがえます。

 「アデリーはいわゆるチートキャラですね。キャラクターの性格や生い立ちに至るまで私の“好き”を詰め込んでいるので、勝平さんに演じて頂けると知った時から安心よりもドキドキが勝ってしまって……困っています(笑)。勝平さんは無限に芝居の引き出しがあるんじゃないかと思っていて、朗読劇という枠を勝手に(笑)壊してしまう素晴らしさがあるので、ハードルは上げるだけ上げておいて問題ないかと!」

―――アリストファネス役の林勇さんは、他のキャストの方々と同じく声優としてのキャリアは豊富ですが、舞台へのご出演はほとんど無かったのではないかと思います。キャスティングの狙いを教えてください。

 「今回の二宮初めまして枠が林さんです。でも、アリストファネスは林さんがいいってずっと思っていました。お歌が上手いのも納得!ということぐらい音域に幅があって、その緩急が気持ち良くて、あとで“この役も林さんだったの!?”という、ここにきて改めて“声優さんってすごい”と思わせてくれたお方のひとりです。アリストファネスも自由に、歌うように、七変化を見せてくれると信じています!」

抽象的な表現から、台詞の先にあるものを感じてもらう

―――ー演劇ファンにとっては、多くの2.5次元舞台をプロデュースしている下浦貴敬さんが演出を務めるのも注目ポイントです。これから舞台として仕上げていく中で演出面での働きはもちろんですが、作品づくり全体にも作用があったりするのでしょうか。

 「そうですね。まだ下浦さんとは数回お話をしただけなのですが“動きをつけることは簡単だけど……”と、私がこだわっている会話劇の静と動の調和をはかっていろんなことを考えてくださっています。ワクワクするアイディアもたくさん聞いておりますが……もちろんそれに合わせて台詞も変化させていくので、これからたくさんお話して作品を形にしていきます」

―――リーディックシアターの特長の1つである生演奏は、今回ストリングスカルテットが参加します。楽曲のイメージも含め、どのような音楽演出を考えていますか。

 「今まではバンド音楽を中心としていたので、単純に音の構成がすごく楽しみです。ただそこはリーディックシアターなので、大人っぽい、大人しい、心を癒すヒーリングミュージック……ではなく(笑)少し背伸びをした少女がセカイを宿しているというちぐはぐさ、世界をうっすらと覆い続ける闇、心地の良い気味の悪さみたいなものを音楽からも感じて欲しいなと思っています。音楽の打ち合わせでこんなに“不気味”って言葉を発したこともそうそうないかなと(笑)」

―――今回は円形ステージでの上演になるようですが、円形ステージ×朗読劇×生演奏、というだけで面白くなりそうな予感がします。どのように活かそうと考えていますか。

 「この空間が、セカイそのものにも、トリカゴのようにも見えてくる。というのを大切に作っています。そもそも朗読劇はお客様の想像に委ねる部分も大きいのですが、今回はあえて抽象的な表現が多く、台詞そのものの先にあるものを感じて頂けたらと思っています。なので円形ステージだけど円に留まらない、こともあるかもしれません(笑)。乞うご期待!」

―――4つのENDがそれぞれ1回きりの上演という、とてもレアな舞台です。公演前に気が早い質問ですが、今後さらに発展させていくアイデアはありますか。

 「この機会を逃したら二度と同じことは出来ないのでは……と思っておりますので、まさに“取り返しのつかない選択”が体感出来る作品だと思っています。私が公演までに出来ることは、出来る限りキャラクターの魅力を伝えて、このとんでもない体験(笑)を1人でも多くのお客様と共有したいなと。今はそれだけですね。皆様の心に巣食うような作品となって、また別の媒体に羽ばたいていったら素敵だなという野望はあったりしますが、ひとつひとつの言葉を丁寧に紡いで一生懸命形にしていきます。どうぞよろしくお願い致します!」

(取材・文:西本 勲)

プロフィール

二宮 愛(にのみや・あい)
音と声の世界を愛する作家として、ドラマCDから展開される作品を多く発信。作詞、漫画原作、舞台やゲームのシナリオなど活動の幅を広げる。主な作品に、ドラマCD『Are you Alice?』、『停電少女と羽蟲のオーケストラ』、朗読劇『錻力のマリ・アンペール』、音楽朗読劇『I’m ふたりぼっち』、リーディックシアター『お憑彼サーカス』シリーズ、『THE∞×Family』3部作などがある。

公演情報

READPIA リーディックシアター『トリカゴ』

日:2024年1月13日(土)・14日(日)
場:品川プリンスホテル Club eX
料:VIPチケット[2公演通し・特典付・1F舞台正面優先]27,600円
  プレミアムチケット[特典付・1F舞台フロア優先]13,800円
  通常チケット9,800円(全席指定・税込)
HP:http://re-no.co.jp/torikago/
問:KADOKAWAカスタマーサポート
  https://wwws.kadokawa.co.jp/support/mf/

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