キャストの新たな一面や普段と違う姿も楽しんでほしい 誰が見ても楽しめる、歌・ダンスありのエンターテインメント舞台『有頂天少女』

キャストの新たな一面や普段と違う姿も楽しんでほしい 誰が見ても楽しめる、歌・ダンスありのエンターテインメント舞台『有頂天少女』

 つんこ・山下夏望・中江早紀らが出演する舞台『有頂天少女』が、2023年11月22日(水)から上演される。作・演出を務める吉田武寛に、作品の構想やカンパニーへの期待を聞いた。

―――まずは今回の作品についてお伺いしたいです。数学が苦手な人間からすると、公式のストーリーを読んでちょっと難しそうだな……と感じました。

 「一応フェルマーの定理というものは使っていますが、正直そんなに数学については触れていません。どちらかというとフェルマーが残した『証明方法を見つけたが、それを書くにはこの余白は狭すぎる』というメモをモチーフにしています。
 メモによって人生を翻弄された人など、たくさんのドラマがあったので、解き明かされるまでの360年をドラマチックに描きたいなと思っています。時代にとらわれず、幅広く描こうかなというイメージです」

―――フェルマーの定理をテーマにしようとした理由は?

 「元々『フェルマーの最終定理』に関する逸話を知っていて、ずっと描きたいと思っていたのが理由ですね」

―――様々なジャンルで活躍するキャストさんが揃っていますが、印象はいかがですか?

 「本当に幅広い方が集まっているので、なるべく色々な魅力を引き出せるように頑張りたいなとは思っていますね。
 つんこさんは声優やコスプレイヤーとしての活動が多く、今回が舞台初主演。ぜひ一緒に頑張っていきたいなと思っています」

―――皆さんの役どころはどんな感じになるんでしょう?

 「数学者も描きますが、女子学生たちが船に乗っている話になる予定です。遭難した女子学生たちと数学者の話が混じりあっていくようなイメージ。演出効果として、役に関係ない登場もたくさんしてもらおうと思っていますね。思っている以上にずっとステージに出続けている作品になると思うので、表現に対して自由に挑んでもらいたいなと思います。
 劇場の下見はこれからですが、せっかくコンパクトな空間なので、観ているお客さんを休憩させずに突っ走りたいです」

―――キャストさんのファンの中には、舞台というものにあまり馴染みがない方もいると思います。

 「演劇というもの自体や数学というテーマはハードルが高く感じるかもしれませんが、すごく見やすい作品になっていると思います。歌やダンスもありますから、パフォーマンスも楽しみにしていただけたら。音楽劇まではいかないものの、数曲は入る予定です」

―――「これを知っているとより深く楽しめる」といったキーワードがあったら教えてください。

 「三角形の面積の求め方に触れたことがあれば大丈夫、くらいにはしたいなと考えていますし、作中で触れる予定なので、そんなに気にしなくても平気です。三角形についてもわかっている必要がないくらい、誰でも楽しく見られるようにしようと思っています。
 フェルマーというのは様々な定理を残したすごい数学者ですが、『フェルマーの最終定理』だけは最後まで証明されなかったんです。残されたメモによって自殺してしまった人、逆にこの定理を解き始めたために自殺を思いとどまった人もいる。調べていくとすごくドラマチックで面白いです。しかも360年後にちゃんと証明された。それだけの年月、たくさんの人が挑んできたのがすごいなと思いました」

―――稽古はまだということですが、どんなカンパニーになりそうですか?

 「キャストの半分くらいはお会いしたことがあるので、ゼロからというわけでもないですね。一緒にお仕事をしたことがある皆さんは、ちゃんとお芝居が好きで演出方法なども否定せずに受け入れようとしてくれます。そういう意味では、表現の可能性に挑んでいけるのかなと思いますね」

―――吉田さんは2.5次元やガールズ舞台をはじめ、お花屋さんとのコラボプロジェクト、フォトエッセイの上演など、ユニークなチャレンジを多くされている印象があります。今回の演出についてはどう考えていますか?

 「人を動かしたり色々な小道具を使ったりするのが好きなので、美術で遊ぶというよりは小道具を用いた演劇的なエンターテインメントとして数学を描きたいと思っています。ストーリーはまだまだ組み立てている最中ですが、全員が全力で頑張っていくような話にしたいと思っています。数学というよりは人間ドラマを見届けてほしいですね」

―――コロナ禍で舞台を取り巻く環境が変化している中でも、コンスタントに活動されている印象です。演出をしていて感じる変化などはあるでしょうか。

 「流行っているなと感じたら稽古中もずっとマスクをしてもらうのはスタンダードになりましたね。でも今は客席を使った演出なども徐々に増えて、コロナ禍での制限が緩和されてきているのを感じます。地方のお客様も来てくださるようになり、久しぶりにロビーで顔を合わせる方もいて、変化は実感します」

―――ちなみに、ご自身が挑みたいこと、長年挑んでいることなどはありますか?

 「僕は舞台を始めて23年くらいになりますが、まだまだ果ての見えないのが演劇の世界です。ここから50年くらいは頑張っていきたいと思っています」

―――この先50年のビジョンもあればお伺いしたいです。

 「大きい舞台やミュージカルもやりたいですが、どちらかというとエンターテインメントに特化しているタイプなので、そこを突き詰めていきたいとは思いますね」

―――今回の作品を通してお客様に届けたいメッセージなどはありますか?

 「作品の外で語るのもどうかと思うので、見ていただいて何かを感じてもらえたら」(プロデューサー「初主演や初舞台の方もいるし、数学やフェルマーの定理というところだけを捉えるとハードルが高いと思います。ただ、作品の印象は“フェルマーの最終定理を探して高校生の少女たちが冒険する一大アドベンチャー”という感じです」)

 「そうですね。女子高生が船旅中に遭難して、自分がいる場所もわからなくなってしまう。メモが残されていて、誰かが今いる場所を知っているんじゃないかという話になり、誰かが『これ、フェルマーの定理と同じことだ』と言い出して、彼女たちのエピソードと数学の歴史の話が混ざりあっていくような。
 色々な要素が複雑に絡み合うものの、難しくはない、エンターテインメントに仕上げようと思っています。僕が秘密主義で、あんまり情報を出したくないタイプ。宣伝的には出した方がいいと思うんですが(笑)」

(プロデューサー「原作がないので、世界中で作家しかわかっていない。『フェルマーの定理って何?』が頭にある中で観るとギャップがあって、観終わった時に『すごく楽しかった!』と喜んでくれているお客様の顔は見えています!」)

―――わからない状態でも、来たら絶対楽しめる作品ということですね。では最後に、見にくる皆さんへのメッセージをお願いします。

 「難しく考えずに見にきていただいて、登場人物たちが織りなすドラマがどうなるのかを見届けていただけたらと思います。今回は応援チケットもあって、それもキャストの力になるでしょうが、ぜひ劇場にも足を運んでいただきたいです。
 小劇場でマイクもなく、キャストの実際の声をその場で感じることができますし、お客さんも含めた会場みんなで作り上げるのが演劇だと思うので、ぜひその空間を一緒に作っていけたらと思っています」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

吉田武寛(よしだ たけひろ)
1985年6月22日生まれ。舞台演出家・脚本家。華やかでダイナミックな演出に定評があり、美しく幻想的な世界構築を得意とする。近年は2.5次元舞台やガールズ演劇など、多種多様な作品を手掛ける。代表作に、舞台『風が強く吹いている』、『魔術士オーフェン はぐれ旅』シリーズ、『ピオフィオーレの晩鐘〜運命の白百合〜』など。

公演情報

舞台『有頂天少女』

日:2023年11月22日(水)~26日(日)
場:バルスタジオ
料:S席[最前列・特典付・各回10席限定]8,000円
  A席[特典付]7,500円
  一般席6,000円(全席指定・税込)
HP:https://stand-up-project.jp/schedule/32977
問:バードランドミュージックエンタテインメント
  mail:info@birdlandmusic.co.jp

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