桃から生まれた桃太郎。鬼退治のその後は、一体どうなったのだろう 朗読劇に歌や演技を盛り込んだ新感覚の“リーディカル”第2弾!!

桃から生まれた桃太郎。鬼退治のその後は、一体どうなったのだろう 朗読劇に歌や演技を盛り込んだ新感覚の“リーディカル”第2弾!!

 ドンブラコッコと川上から流れてきた大きな桃から生まれた桃太郎が、サル・イヌ・キジを引き連れて鬼ヶ島で鬼退治。誰もが知っているこの物語に、続きがあったらどうなるだろう。思いつきそうだがあまり実現していない、そんなアイデアを書き起こしたのは、ストレートプレイは勿論、吉本新喜劇から商業舞台までジャンルを超えて幅広く活躍する脚本・演出家 高梨由。そして高梨と二人三脚で作品を創り上げたのは、タンゴ歌手であり、女優の顔も持つ冴木杏奈。単なる朗読劇ではなく、そこに演技や歌も混ぜ込んだ“リーディカル”という新しい形を提唱する冴木に話を聞いた。

―――その後の『桃太郎』ですか?

冴木「ええ、後日譚になりますね」

―――今年春に冴木さんは脚本・演出の高梨さんと『新竹取物語』を上演されています。これも同じスタイル。つまり既存の物語に脚色を加えているんですね。

冴木「はい。単なる朗読はそれまでも色々とやっていたんですが、ラジオという媒体を使ってもっと色々できないだろうかと思ったんです。
 そこで旧知の高梨さんにご相談して、既存の物語をアレンジしてラジオドラマにすることにしました。私はMUSIC BIRDという衛星デジタル音楽放送局で番組を続けていたんです。そこでラジオドラマとして放送したら凄く評判が良かったので、舞台化して福岡で上演しました」

―――それにしても桃太郎に弟が居て、彼が兄の“心”を救いに行く……奇想天外ですが、なんだか心が温まりそうな予感がしますね。

冴木「最初のプロットでは桃太郎の家来だったイヌがリーダーになって、サルやキジとともに助けに行く話でした。そこから弟を出したらどうだろうということになり、イヌ達は再び家来となって鬼ヶ島に行くことになりました」

―――え? 桃太郎は鬼ヶ島に居るんですか?

冴木「そうなんです。鬼と一緒に。その辺りは色々な話が絡んでくるのですが。ともあれ、この物語では“心を救う”という事を投げかけていきたいと思っています」

―――脚本・演出の高梨由さんとのお付き合いはもう長いのでしょうか。

冴木「長いですねえ。最初は人気の漫画原作者 倉科遼先生の作品で脚本・演出に入られて、そこに私が主役で出演したのがきっかけでした。その後、2016年の舞台『希望の色』でもご一緒しまして。さらに現代タンゴの巨匠 アストル・ピアソラと彼とともに多くの作品を遺したオラシオ・フェレールへのオマージュ作品『ブエノスアイレスの傘』でも脚本・演出をお願いするなど深いお付き合いがあります。
 高梨さんは福岡で吉本の劇場を拠点にされているので、先ほどの『新竹取物語』も福岡での公演でした。ただ、東京でも上演をという声も多かったので『MOMOJIRO』の後で東京でも公演します。それに『MOMOJIRO』もまずは福岡公演が先行します」

―――さて“リーディカル”というのは造語とのことですが、発想されたのは?

冴木「高梨さんです。朗読劇といっても私の歌もあるし、芝居の要素もあるしということでこう名付けました。ラジオドラマや朗読劇だと数人のキャストが何役も担当するのが一般的ですが、この舞台では一人一役を基本にします。しかも動きも芝居もありますから、ほとんど普通のお芝居ですね。ただし台本を持っているところが朗読劇の要素を残したところです。新しい形だと思っています」

―――歌ですが、冴木さんはアルゼンチンでも知られているタンゴ歌手ですから、やはりタンゴの名曲でも盛り込むのでしょうか。

冴木「既存の歌に加えてオリジナルの曲も入れる予定ですが、タンゴではないですね。ただ歌詞が合うならオリジナルのタンゴを入れてみたいですね。それなら自分で作詞をしているので、歌詞を話に沿わせることもできると思うんです」

―――リーディカル第1弾の『新竹取物語』ですが、お客さんの反応はどうでしたか?

冴木「すごく良かったです。泣けるお話なので最後は皆さん泣いていました。歌もあったので、それをきっかけに物語に入ってこられるんだなあ、と思いましたね。今まで観たことがないし、朗読劇だと想像していたのと全く違うという声もありました。その反応もあり今回から“リーディカル”という呼び名にしたわけです。でも福岡だけだったので、東京で演って欲しいという声もありました」

―――――今作からは福岡と東京、両方での公演になりますね。そうなると次は冴木さんの故郷、旭川の可能性もありますか?

冴木「それはやってみたいですねえ(笑)。でもまずは東京の劇場でお待ちしています」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

冴木杏奈(さえき・あんな)
北海道旭川市出身。1984年のミスさっぽろに選ばれ、その後タンゴ歌手としてデビューする。さらに人気番組「11PM」に出演。全国的な知名度を得る。歌手として国内だけでなくアメリカ・ヨーロッパ・南米など各地で数多くのコンサートを開催する。2008年、アルゼンチン コルドバで開催されたフェスティバルにおいて「タンゴに貢献した20人に贈る賞」を受賞する。2011年からのMUSIC BIRDで「杏奈カフェ♪♪」は放送600回を超え、12年間継続した。またニューズウィーク日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。

公演情報

リーディカル『MOMOJIRO』

日:2023年12月14日(木)~17日(日)
場:築地本願寺ブディストホール
料:⼀般 前売6,000円 当⽇6,500円
  学⽣席3,500円 ※要学生証提示
  (全席指定・税込)
HP:https://www.annasaeki.com
問:ムーンミュージック
  mail:mmusic@annasaeki.com

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