舞台はロンドンの下町、1843年のクリスマスイブ。金儲け一筋の孤独な商人・スクルージが、クリスマスの夜に不思議な体験をして自分を見つめ直すハートウォーミングな小説『クリスマス・キャロル』。新たに松村雄基を主役に据えて上演される。前回公演の映像を観て「無性に優しい気持ちになりました」という松村は、無慈悲で周りから嫌われていたスクルージに訪れる心の変化を、役者としての
姿勢に重ねてみせる。
「僕自身、善悪のみならずたくさんの顔や姿が自分の中にあります。それをセレクトしているのは、僕自身の心、想いです。だからスクルージは特別な人という印象はありません。誰にでもある“負の部分”が何かのきっかけで心に充満してしまった人なのかもしれません。そんなときこそ、解き放たれる瞬間や自分の望むべき姿を渇望しているのだと思います。多くの役柄でもそうですが、今の自分と向き合い、自問自答して、あるべき姿はどこにあるかを探す作業そのものが、この役へアプローチする一歩と思っています」
スクルージにとって鍵となる3人の女性を杉本彩が演じ、スクルージの亡き親友マーレイを、昨年からのキャストである吉田要士が引き続き演じる。
「全幅の信頼を寄せつつ、新たな化学反応も楽しみです。スクルージの心の扉を開ける方々の心根に触れる感動、そこで起きる何かを大いに期待しています」
近年はミュージカルでの活躍も続く松村は、その魅力を「芝居、言葉だけでは表しきれない何かを表現できる」と話す。
「音楽の持つ無限の可能性と、人の複雑な心境を伝える言葉の妙や芝居の奥深さ。その両方を絶妙なバランスでミックスし、1+1=2以上のモノを作り上げることができるのがミュージカルの魅力だと思います」
世代を超えて愛されるクリスマスの物語が、美しいナンバーと共に温かい感動を呼び起こす。そんな舞台になりそうだ。
「なぜ、クリスマスって無条件に心が晴れやかに沸き立ち、笑顔が溢れるのでしょうか。キリスト生誕のお祝い、人々の幸せを祈る日を通して自分を見つめ、生きる喜び、大切さを感じることができるからかもしれません。この作品が、ご覧いただく皆様にとって、生きることの素晴らしさを感じていただくささやかなきっかけになりますよう、精いっぱい務めます。ご高覧ください」
(取材・文:西本 勲)
「ご褒美の一杯……やっぱり、一所懸命に稽古を重ねた芝居を、精一杯、皆と務めて、お客様に喜んでいただけた後に、スタッフ、キャストと共に分かち合う、舞台終演後の一杯が、僕にとってのご褒美です。」
プロフィール
松村雄基(まつむら・ゆうき)
1963年生まれ。高校在学中の1980年、ドラマ『生徒諸君!』主役でデビュー。1984年、『スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争~』を筆頭に大映ドラマの黄金期を支え、以降も多くのドラマ・映画に出演。30代からは舞台にも出演し、舞台『狐狸狐狸ばなし』、『女たちの忠臣蔵』、『華々しき一族』、『大川わたり』など代表作多数。近年はミュージカルにも積極的に出演し、舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 – 大坂冬の陣-、『ロミオ&ジュリエット』、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』といった人気作で重要な役を演じている。書家・剣舞家としても活躍し、第17回東京書作展では内閣総理大臣賞を受賞。
公演情報
ミュージカル『クリスマス・キャロル』2023
日:2023年11月20日(月)・21日(火)
※他、地方公演あり
場:きゅりあん 大ホール
料:S席9,500円 A席8,500円(全席指定・税込)
HP:https://musical-christmascarol.com/
問:あなぶきエンタテインメント
tel.03-6809-1267(平日10:00~17:00)