「西部劇」×「ゾンビ」が生み出す劇団史上最高のウエスタンゾンビエンターテインメント! 荒野を駆ける侍と用心棒。蘇るのは“奴ら”か。それとも自由か。

「西部劇」×「ゾンビ」が生み出す劇団史上最高のウエスタンゾンビエンターテインメント! 荒野を駆ける侍と用心棒。蘇るのは“奴ら”か。それとも自由か。

代表で作・演出を手掛けるイイジマ・ショウタが中心となり、映画・俳優専門学校時代の同級生らと2014年に旗揚げした劇団ベイビーベイビーベイベー(BBB)。“映画を舞台で”をコンセプトに圧倒的なシーン数とスピーディーな展開は独特の世界観も相まって多くのファンを魅了してきた。本作は架空の西部開拓時代を舞台に、記憶を無くした侍と賞金稼ぎがゾンビに支配された腐敗した街を駆け巡る、劇団史上最高のウエスタンゾンビエンターテインメントだ。西部劇×ゾンビという異色のコンビネーションがどの様な世界を創り出すのか?作・演出のイイジマ。出演だけでなく衣装も手掛ける関メリッサ。そして主演の岩永亮介、髙橋哲太と共に本作の魅力に迫った。


往年の名作西部劇がヒント。でも正直こんなに大変だとは・・・

―――とても独創的なコンセプトですが、どの様に着想を得たのでしょうか?

イイジマ「僕の頭の中に7年前ぐらいから『荒野のZ』という題名のアイデアがあって、ゾンビ物と西部劇という要素だけが決まっていました。2020年は東京オリンピックの年でもあるし、何かお祭りのような感じに出来ればと準備を始めたのですが、コロナ禍も重なって止む無く1年延期を決めて、今回はそのリベンジとしての上演となります。
うちの劇団は“映画を舞台に”がコンセプトなので、西部劇のお約束にゾンビを加えてみようと考え始めて、1971年の映画『レッドサン』が浮かびました。三船敏郎さん演じる侍が西部の街を舞台に活躍するという異色の西部劇から着想を得て、記憶を無くした侍が西部の荒野で目を覚ますという所から物語が始まれば面白いのではと組み立て始めました。他にも2011年公開のハリウッド映画でダニエル・クレイグさん主演の『カウボーイ&エイリアン』からも発想を得ています」

関「イイジマは一度やると言ったら引かないので、言い出したものは仕様がないかという感じで(笑)。私は衣装も担当しているので、西部劇とゾンビ物をやるなった時に、どこまでが実現可能でどこまでが不可能なのか。妥協点も含めて探らないといけないし、大変だよと伝えたのですが、イイジマは『大丈夫だよ』と安請け合いするものですから、あっそ。じゃあ後で苦しめばいいよと言いました」

イイジマ「ええ。実際に始めてみると彼女の言う通りでした……。大変な事しか起きない(苦笑)。加えてゾンビを入れる事で、リアリティーラインが上がってしまうので、どこまでディテールを追求するかの綱引きも大変です」

関「例えば襟のついたベストは今の時代では誰も着ないものが、当時は主流でした。テンガロンハットもそうですよね。販売店もかなり限られてくるでしょうし、物自体も高価になってくるので、どうしたらいいか。例えば劇中に出てくる娼婦の服は現代の型では再現できないので、一時期流行ったコルセットなども利用するなど、試行錯誤しながらやっています」

ちゃんと映画になっています

―――主演の岩永さんと髙橋さんは本作で「記憶を無くした侍」と「賞金稼ぎ」を演じられます。

岩永「BBBさんの舞台に参加するのは3回目になります。映画を舞台で表現するという事は、カット割りを組み合わせて作品となる映画の画作りを自由度の低い舞台で表現するという事。それは決して簡単な事ではありません。ト書きも含めて役者からも『これ、どういう意味?』というやりとりも沢山見て来ましたが、実際に完成した舞台を観ると、ちゃんと映画の様に見えるのはBBBさんならではの舞台だと思います。
今回は『主演で、侍で、西部劇で、ゾンビ物で』とイイジマさんから矢継ぎ早に聞かされたのですが、正直今でも整理できていません(笑)。刀でゾンビや拳銃と闘うのも勿論初めてですが、自分の中では新しいチャレンジだと思ってかなり今燃えています」

髙橋「BBBさんの舞台は6回目です。初めてお金を払って観た舞台がBBBさんで、こんなに面白いとはと衝撃を受けました。他団体さんの舞台を観てもBBBさんはやっぱり抜群で、いつかここの舞台に立ちたいと思っていたので、お声を掛けて頂き本当に嬉しかったです! 客席側から観ても勿論のこと、僕らが後から見返してもちゃんと映画のシーンの様になっているのはすごいとしか言いようがないです。去年の公演がコロナ禍で延期となって沢山の映画を観る時間がありました。ですので、今回は西部劇とゾンビという設定でも特に違和感を覚えることはありませんし、刀と銃は男の子の大好物ですから、もうワクワクしかありません」

多くのシーンと音を使った場面転換

―――「映画を舞台で」という手法はどの様に作品に反映されるのでしょうか?

関「映画の様に見えるその理由の1つとして、1つ1つのシーンが短いという事が挙げられます。演劇は1つのシーンを3分から5分程かけることはよくあると思うですが、BBBでは数十秒で終わるシーンがカット割りのように展開されていきます。例えば舞台を4分割にして、上手左や下手右手といった感じでどんどんシーンが変わっていく立体的な構造です」

イイジマ「作品によっては、台詞2つぐらい喋ったら次のシーンへという事もあります。映画では映像が主体となって場面転換がおこなわれますが、舞台では台詞がその役目になります。でもBBBでは敢えて足音などのアクションを利用して進めていくことを意識しています。それが独特のスピーディーな展開に繋がっていくのかもしれないですね」

未知のものに立ち向かう主人公と現在の私達に重なるものが

―――その他、本作で注目して欲しい部分はりますか?

関 「私が演じるゾーイはお腹に子供を宿しながら失踪した旦那の行方を探すという役柄なのですが、私自身が妊娠6か月の妊婦なんです。妊婦が妊婦役をやるという(笑)。勿論、お医者様からも承認を頂いています。妊娠が分かってからはコロナ禍もあって舞台をお休みしていたのですが、こういう機会は滅多にないと思いましてチャレンジしました。命が失われていく戦いの中で、新しい命を産むという奇跡は現実の自分と重なって何か不思議な思いです。勿論、派手なアクションなどは控えますが、妊婦でも舞台に立てるんだぞという所を見せられたらと思っています」

イイジマ「2019年にこの作品を書いている時はまさかこんな世の中になるとは思ってもみませんでした。色々な事が制約されて、多くの人が目指してきた目標に向かって進むことが出来ないもどかしさや諦めを抱えて生きることを余儀なくされています。これまで戦ってきたステージに立つ事すらできない。でもこの作品の世界ではそうはしたくない。ゾンビという未知のものに立ち向かう主人公たちの姿はコロナウイルスと対峙する現在の私達にも多くを重ねて観ることができるのではないかと思います」

岩永「僕もそう思います。ゾンビに支配された劇中の市井の人達と、コロナ禍の現実をリンクさせて観てもらったお客さんが何かしら心に持って帰って欲しいです。作中の主人公たちが奮闘する姿でも良いですし、板の上で格闘する僕ら役者たちの熱意だって良い。皆様を勇気づけるというと大げさかもしれませんが、1年以上延期となったこの作品には役者・岩永亮介としてだけでなく、コロナ禍を生きる1人の人間として、これまで我慢してきた感情を込めたい。そうする事で何か皆様に伝わるものがあるのではないかと思います。今回は24人という大所帯。皆で力を合わせて最高の作品にしたいと考えています」

関「是非、衣装にも是非注目してもらいたいです! 特に少し現代風にアレンジされた娼婦の衣装は是非観てもらいたいですね。女性キャストの衣装が変わるシーンも今、試行錯誤しながら工夫を凝らしていくのでカッコいい男性陣の衣装も含めて楽しみにしてもらえたら嬉しいです」

―――主演のお2人から読者へメッセージをお願いします。

岩永「この時代だから本作を上演する意味があると思っています。自分が板の上でやるべき事を精一杯やった上で、皆様の心に生まれた感情が僕達の成果だと思っていますので、是非劇場にお越し頂いて、しばし現実を忘れて作品の世界に没頭して頂きたいと思います」

髙橋「自分の役である賞金稼ぎの“ブラボー”になり切って言います。『黙ってついてきな!』」

(取材・文&撮影:小笠原大介)


プロフィール

岩永亮介(いわなが・りょうすけ)
1994年5月30日生まれ、長崎県出身。
親友の「お前それでいいの?」という一言で役者を目指す。主な出演作品は、Rolioli Heart&EATS企画『レストラン・トリロジー〜最高最低の饗宴〜』、感謝の日々を『蒼き空には嵐は吹かず』、劇団ベイビーベイビーベイベー『MERRY10』がある。今作では、「名無しの侍」〈あることがきっかけで記憶をなくし西部の荒野で目覚める。腕は確かで”奴ら”を刀で斬る。〉を演じる。

髙橋哲太(たかはし・てった)
1993年11月2日生まれ、埼玉県出身。
高校の時に何となく読んだ雑誌の役者オーディションの記事を見て、大学入学後間もなく芝居を始める。主な出演作は、劇団ベイビーベイビーベイベー『LIMIT』、『不幸探偵 a Day One』(2019年)がある。今作では、「ブラボー」〈”奴ら”専門の賞金稼ぎ。片目に眼帯をつけ、酒と金に目がない。名無しの侍と出会い無理矢理ウイスキータウンへ連れて行く。〉を演じる。

関メリッサ(せき・めりっさ)
1990年8月1日生まれ、千葉県出身。
東京俳優・映画&放送専門学校を卒業後、2015年に劇団ベイビーベイビーベイベーに所属。以降主要キャストとして出演する一方で作品の衣装も手掛ける。主な出演作品は『LIMIT』、『KILL&DAD』がある。今作では、「ゾーイ」〈ギャング達から旦那とウイスキータウンに逃げ込むが旦那のアーロンが行方不明となる。腹には子供がいる。〉を演じる。

イイジマショウタ
1990年12月17日生まれ、神奈川県出身。
東京俳優・映画&放送専門学校を卒業後、同級生らと共に2014年劇団ベイビーベイビーベイベーを旗揚げ。代表として全公演の作・演出を担い、“映画を舞台で”をコンセプトに、多数のシーン、スピーディーな展開を特徴としたエンターテインメント作品を手掛ける。また、役者として劇譚*華羽織特別公演『DuetRain』に出演した。


公演情報

劇団ベイビーベイビーベイベー
荒野のZ』

日:2021年7月29日 (木) ~8月3日 (火) 
場:中野 ザ・ポケット
料:前売:4,500円
  友割:4,000円(2名様以上ご予約、1人様あたり)
  Z割:3,500円(当公演観劇2回目以降)
  F割:3,500円(7月29日の公演、一律料金)
  Y割:2,500円(高校生以下限定、要身分証提示)
  当日:5,000円
  (全席自由・税込)
HP:https://babybabybayb.wixsite.com/kouya-z
問:劇団ベイビーベイビーベイベー 
  mail:babybabybay.b@gmail.com

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