「能を初めて観る人へ」のコンセプトを掲げ、幅広い層へ能楽鑑賞の門戸を広げてきた株式会社Global能楽社の主力公演『ひとつのはな』。コロナ禍前には、多言語字幕付きで平日夜の短時間開催、フォトセッションや飲食提供などの付加価値を加え、外国人観光客や初心者向けに特化した公演をおこなっていた。コロナ禍以後は、愛好者にも魅力的な企画を意識し、シテに武田志房、大槻文藏、観世恭秀など熟練の能楽師を迎えた今回の公演は「初心者のみならず、能楽ファンにも十分に楽しんで頂ける公演」と能楽プロデューサーの清水美穂子は語る。
「81歳の大ベテランのお三方の技量となると、ほとんど動きが無い重厚で難解な曲が選ばれる事が多いのですが、『咸陽宮』、『隅田川』、『安達原』の3曲は、ある程度動きもあってドラマ性もあるので、観ている側にも想像しやすい。そこに熟練の技が加わるので幅広い層の方に楽しんで頂ける貴重な機会と言えます。加えて今回はワキ、ワキツレ、囃子方を比較的若い世代の方にお願いしました。お三方と同じ舞台に上がることはすごく大役になりますし、学べる事も多い。今回の経験を持って未来に
向かって頂きたいという思いがあります」
意欲的な料金設定や柔軟な観覧方法も本公演の魅力だ。
「私がこだわっているのが、『一曲。それでもおなか一杯。』というコンセプトで、1曲だけ観るチケットを用意しました。1番安い席は3,900円からで、それで最初の『咸陽宮』を観て楽しんで頂けたら、もう1回3,900円で別の曲を観てもらう。また演目が60～80分と能の中では短い方なので、1演目空けてお茶をしに行ったり、買い物の合間にお立ち寄り頂いたりと、かなり自由度の高い公演になっています」
公演名の「はな」には日本文化への敬意を込めたという。
「能楽界の中で『はな』は大事な言葉です。日本には芸能に限らず、多くの魅力が沢山あって、その中の1つが能であると考えています。能楽堂で上演する能は日本でしか観られない。そういう意味では“日本にある沢山の花の1つ”という意味を込めました。今後は外国の方がふらっと訪れてもいつでも観られる公演にできればと考えており、毎回、異なる流儀や能楽師にお願いしながら、業界内でのバラエティーを持っていけたらと考えています。能楽師の方にはこの公演に出ることが楽しい、お客様にはここに行けば気軽に能を観られるという場にしていけたらいいですね」
（取材・文：小笠原大介 撮影：間野真由美）
「“信頼できる仕事の仲間”です。私は、学生時代のアルバイトから、これまでに色んな業種・職種で勤めて来まして、現在も異業種で4つの仕事を掛け持ちしています。いつの時代の、どの仕事にも、必ず同じ視点での話や、多岐の相談を出来る方がおられまして、役員、先輩、同僚、後輩、顧問先、取引先など、お相手との関係を問わずに、そんな皆様の存在に救われて来ました。もちろん、その仕事を辞める時には断たれる関係も多いですが、そのまま友人として長くお付き合い下さっている方々も多いです。私を生かしていただく上で、仕事を通しての大切な人間関係は最も捨てられない大切なものです」
プロフィール
清水美穂子（しみず・みほこ）
株式会社Global 能楽社 代表取締役。公益財団法人武田太加志記念能楽振興財団 事務局長。能楽プロデューサー。米国留学中、能楽協会の海外公演にて現地通訳を務めたことから同社へ入社。在職1年で事務局長に就任。約10年の勤務にて、公益法人制度改革に合わせた抜本的な組織改革を実現し、又、計15か国における海外公演を企画から現地制作までを担い成功に収める。同社の離職後は、主にテレビ番組の役者の著作隣接権管理を行う団体の代表を務め、芸能プロダクション各社や放送局と共に、デジタル時代のエンターテイメントの在り方を模索する役割を担う。2016年にGlobal 能楽社を立ち上げ、「能を初めて観る人へ」のコンセプトを掲げて、能楽公演「ひとつのはな」を発会。コロナ禍以降は、同事業を公演と配信の両立で、「世界中の1人でも多くの人に能楽を知ってほしい」という目標に向けて歩んでいる。また、企業によるVIP向け貸切公演の制作や、アメリカドラマの能楽シーンの制作など、広い視野で「能」に関わる柔軟な立場でプロデュースを行っている。
公演情報
ひとつのはな #16 #17 #18
日：2023年10月9日（月・祝）13:00開演（12:00開場）
場：観世能楽堂
料：極上席22,000円 特等席15,400円
一等席12,100円 二等席9,900円
※他チケットあり。詳細は団体HPにて（全席指定・税込）
HP：https://jp.nohgaku-experience.com/flower
問：株式会社Global能楽社 mail：aflower-info@nohgaku-experience.com
