人気俳優の植田圭輔が初代国立演芸場さよならアンバサダーに就任「落語でも歴史物の噺なら、2.5 次元舞台作品の題材と接点がありますね」

 国立劇場一帯の大規模な建て替え工事に伴い、いよいよ10月末で一旦閉場となる国立演芸場。東京都内に4ヶ所ある寄席のスタイルを基本としつつも、国立演芸場ならではの企画や顔ぶれが楽しめるということで、永きにわたって熱心なファンも多いが、演芸場側は閉場の節目を活かしてもっと多くの、これまで国立演芸場に足を運んだことのない若い世代に国立演芸場を知ってもらおうと、2.5次元をはじめ多くの作品に出演する人気俳優の植田圭輔を「初代国立演芸場さよならアンバサダー」に任命。落語を筆頭とした演芸や、それを楽しむ演芸場を盛り上げる試みを始めた。そして6月中席の千秋楽となるこの日は、植田が初めて国立演芸場を体験する日となった。


―――――植田さんは以前『ハンサム落語』に出演した経験もお持ちですが、一方で生粋の大阪人でもいらっしゃる。落語にはどんな印象がありましたか。

 「ハンサム落語には2回出演しています。でもあれは通常の落語とは違い掛け合いでした。僕は大阪人だから吉本新喜劇の方がより身近でしたね。といっても、劇場まで観に行く機会はあまりなくて、もっぱら週末にテレビの生中継を観て楽しんでました。実は演芸場に足を運んで観るのはたぶん今回が初めてだと思います。落語に関しては劇場に来て生で聴くというのは、ちょっと敷居が高い感じでした。なにしろ本物の「芸」ですし、歴史あるものですからね」

―――――この国立演芸場に足を踏み入れて、印象深かった部分はありますか?

 「そもそも劇場はそれぞれ特色なり顔になる部分があると思いますが、ここも独特の内装などが印象的でとても良い空間だと感じました。そして驚いたのは、演目が始まってからも客電(客席側の照明)がずっと点いているところです。演劇の場合は必ず客電が消えてから本番が始まるので、当然客席側は真っ暗ですからね」

―――――いろいろな企画やラインナップを作ってくれる国立演芸場ですが、今回は上方落語が中心の顔ぶれでしたがいかがでしたか?

「関西弁をこちらが特に意識しないぐらい自然に聴いてました。噺家さんの語尾や、役に入って話すときの演じ方は、僕も時代物の作品を演じる事が多いので、感心しながら“さすが熟練されてる”と思いました」

―――――国立演芸場の定席(月の最初の10日間と次の10日間に組まれるレギュラー・プログラム)は寄席のスタイルで、落語だけでなく「色物」と呼ばれる漫才や曲芸、紙切りや奇術などが演目に2、3入りますが……。

 「なるほど、そういったものなんですね。ずっと落語ばかりかと思っていたので、始まる前に出演者を見たときに、ちょっと意外に思いました」

―――――初めての演芸場、寄席体験。なにかイメージは変わりましたか?

 「最初は敷居の高さを感じていたはずが、いざ入場してみると結構リラックスできました。僕自身が役者であるだけでは無くて、人前に出て話す機会も結構多いんです。だから日頃から“上手に伝えること”は気にしていますが。今日ご出演の皆さんはそこが凄く上手で、とても勉強にもなりましたし、何より純粋に楽しめました」

―――――今日のトリを務めた笑福亭鶴光さんは上方の噺家さんですが、演目の『荒大名の茶の湯』はいかがでした。

 「秀吉亡き後の豊臣家7人の重臣と、徳川側の重臣が出てきますが、そのあたりは2.5次元作品の題材と接点があると思います。戦国武将については僕達もその時代を舞台にした作品が結構あるし、舞台に臨むにあたって知らないことは調べてお客さまに届けている側ですから、ある程度馴染んでいます」

―――――落語の後に踊りを披露されました。

 「あれもビックリしました。踊りを、とおっしゃってもまさか僕等がやるダンスでは無いとは思いましたが(笑)。噺家は誰でも踊れるとおっしゃっていたのを聞いて、改めて表現者なんだなと思いました」

―――――何かの役で落語を演じてみたいなんて思われませんか。

 「チャンスがあれば演ってみたいですね。修行をしてない僕達が落語の世界に入るのは難しいと思いますが、やってみると面白い化学反応を起こすかもしれません。考えてみると2.5次元舞台作品はアニメやゲームの世界観と演劇をミックスしたものですが、その2つも融合はたやすくないものだったと思うんです。でも今ではジャンルとしてポピュラーになりましたからね。僕はそんな時代の中に居させて貰っているわけです」

―――――どうでしょう。次回はお友達と連れ立って演芸場にいらっしゃる。そんな気持ちは湧きませんか?

 「友達、しかも役者とか人前に立つ人間ならなおのこと誘いやすいですね。芸人さんや演芸好きな仲閒は多いですし、普段からいろんな劇場に足を運んでいる役者もいますから。初めての人には「演芸場で新しい世界を覗いてみませんか」とお誘いしたいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

 

プロフィール

植田圭輔(うえだ・けいすけ)
大阪府出身。2006年、第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストにてファイナリストに選出される。2007年に俳優としてデビュー。2.5次元舞台を中心に数多くの作品に出演。最近の出演作に、『ワールドトリガー the Stage』シリーズ(空閑遊真役)、舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズ(中原中也役)、ミュージカル『ヘタリア』シリーズ(日本役)、舞台『鬼滅の刃』シリーズ(我妻善逸役)、舞台『東京リベンジャーズ』シリーズ(松野千冬役)など。9月には『ブラッククローバー the Stage』(アスタ役)の初公演が控えている。

公演情報

8月中席/9月上席/9月中席

『8月中席』 日:2023年8月11日(金・祝)~20日(日)
『9月上席』 日:2023年9月1日(金)~10日(日)
『9月中席』 日:2023年9月11日(月)~20日(水)
場:国立演芸場
料:一般2,200円 学生1,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は公演HPにて ※非売品特典付(全席指定・税込)
HP:https://www.ntj.jac.go.jp/engei
問:国立演芸場 tel.0570-07-9900(10:00~18:00)

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