若い女性キャスト30名出演も華やかだけで終わらない 新人占い師のルーペの先に見える若者の心の奥底に眠る想いとは?

若い女性キャスト30名出演も華やかだけで終わらない 新人占い師のルーペの先に見える若者の心の奥底に眠る想いとは?

 脚本家・演出家の山本夢人が主宰するAUBE GIRL’S STAGEは、俳優・モデル・アイドル・声優など、若い女性キャストだけで上演する演劇プロジェクト。2016年に旗揚げした後、着々と公演を重ねてきたが、世界的なコロナ禍で相当な影響を受けたという。
 それを経験しての今作は、不思議な能力を持った新人占い師が引き起こす物語。人気グラビアアイドルで人気で昨年公演でも主演を務めた咲菜月と、アイドルを経てバラエティ番組で活躍している石原由希を主役に据えたこの作品について、2人と作・演出の山本に聞いてみた。

―――AUBE GIRL’S STAGEさんも、旗揚げ8年目になるのですね。

山本「気が付いたら、こんなに時間がたっていました(笑)。方向性の根本は変わっていません。若い役者たちが成長していく姿をお客様に楽しんでいただきたい。そこから派生して作風を試行錯誤したり、導き方を試行錯誤したり、色々なものを取り入れたりしていっています。
 アイドル舞台みたいなやつでしょ?と言われることが本当に多くて、間違いではない部分もありますが、アイドル含め若い役者たちを集めて割とちゃんとお芝居する方向性の舞台プロジェクトです。若い子たちなんで、粗削りな部分は多々、もう多々あるとは思うんですが(笑)、それでも演劇ファンの方々に、こんなにたくさん若いいい役者がいます!と挑戦状を叩きつける! そんな風に考えて日々作品を創っています」

―――旗揚げから変化したことはありましたか?

山本「根本は変わってないんですが、出演者たちの今ある魅力を積極的に出していこうという感じにはなってきましたね。旗揚げ当初は彼女たちの未来のために、みたいな感覚が強かったと思うんですけど。
 背景にはコロナも大きかったと思います。演劇界も社会もどんどん閉塞して、未来も大事だけど、今も大事。また、昨今の芸能の門をたたく若い子たちは、今、できるところまで輝きたいという子が多いと感じます。そこをちゃんと出してあげたい。彼女たちのキラキラした部分を出すよう心がけるようになってきたかもしれません。
 作風では、特殊技能や特殊設定が増えました。その方が若い子たちは立つんですよ。旗揚げ当初は青春群像劇が多かったですが。最近は昔の『セーラー服と機関銃』や『スケバン刑事』の現代版のような作品を創れないか、若い女性主人公で特殊設定で、かつエンタメ界でちゃんと評価される作品創り、そういった感じになってきていると思います。群像劇に戻ることもあると思いますけど(笑)」

―――AUBEさんだけでは無いですが、コロナ禍でだいぶ予定を狂わされたのでは無いですか。

山本「うちは2020年はリーディング公演が中止になって、本公演もできませんでした。その後2021年に2本、2022年に3本公演を打ちましたが、動員も苦しく、そのほかにも本当に様々なことがありました」

―――それを乗り越えての第1弾ですね。

山本「いえいえ、何も解決していません。焼け野原に立っている気持ちです。でもやらなければいけないという使命感でここに立っています」

―――今回は新作ですね。

山本「ええ。時沢空乃(ときさわ・そらの)という新人占い師が居て、彼女のルーペで覗いて貰うと、過去に自分がした決断の、もう一方の先を3分間だけ観ることができる……というところからストーリーは始まります。そしてここの2人は主人公の空乃役になります。」

―――咲さんはAUBEの作品(『シンギュラリティ・ゼロ』)で主演されていますね。

咲「前回は初舞台でもあったんです。そのときに山本さんから『AUBEは1度出演すると、また出演したいといってくれる役者さんが多い』と聞いていたのですが、まさにその通りだと凄く思いました。なんだか座組が暖かいのと、山本さんが優しいんです。今回まさか主役とは思いませんでした」

―――石原さんは初参加。山本さんの印象を聞かせてください。

石原「ええ初めてです。でも周囲からは(山本さんが)厳しい方だという噂は聞いています(笑)」

山本「厳しいというのは、芝居に対して深いということだと思います! 多分(笑)」

石原「そうですね。例えば集客目当てでアイドルを使うようなことはせず、しっかりとお芝居に向かい合っている。そんな姿勢が素敵で出演を決めました」

―――お二人ともグラビア系のお仕事が多いんですか。

咲「私はグラビア中心です」

石原「アイドルを経て、バラエティアイドルというのか、色々なことをさせて頂いてました。だから舞台は5年振りくらいでブランクを感じますが、今年から本格的に女優に転向したいと思っているんです」

―――演劇とは異なるフィールドで活躍されるお二人を選んだ決め手はどこでしたか。

山本「総合力と存在感ですね。単に芝居が上手いだけで無く人間力があるか。その点、2人は広い意味で他の方よりも頭ひとつふたつ抜けていました。
 あとは肝の太さですね。それが強い人はグングン伸びて行くんです。彼女たちはグラビアとかバラエティで経験を積んでいるので、そういった部分から培ったものかもしれませんが、本来の性格でもあるとも思います」

―――山本さんから見ていると、どんなお二人でしょう。

山本「咲さんはヤンチャなんですが、繊細でもありますし、まっすぐなところもあります」

咲「自分ではわからないですね。でもヤンチャといわれるのは納得できますね。清楚系では無いかも知れません(笑)」

山本「石原さんにも繊細さを感じますし、人とは違った視点でものを見ることができるなと思っています」

石原「性格的に太いわけでは無いと思うのですが、バラエティなどで鍛えられたメンタルのおかげだと思います。2年くらい準レギュラー出ていた番組では、結構過酷なロケとかもありました。一人きりで潜入企画とか。そんなことでメンタルは強くなりましたね。視点については自覚が無いけれどよく言われます。よく見抜きましたね(笑)」

―――彼女たちを含めて完全Wキャストです。

山本「これはAUBEの旗揚げから変わっていないスタイルです。2班ある方が理解のスピードが速いんです。稽古休みのメンバーがもう一方の班を観るので、理解が早くなります。それにやはりライバル心が生まれるのでお互いに伸びていきますね。もちろん僕も追い込んでいきますけど、若いときはそうやってどんどん覚える方が良いと思っています」

―――咲さんは前回どうでした?

咲「初主演で初舞台だからもう一方に引っ張られないように観ないようにしていたのですが、最後の方になって結局観てしまいました。でも違いすぎたので、もはや引っ張られることは無いと開き直りました(笑)」

―――石原さんは? 追い込まれるそうですが(笑)。

石原「私は追い込まれると冷静になるタイプですね。だからその方がいいんだと思います。それと今回の劇場、シアタープラッツは初舞台の場所なので、そこに主演として帰ってこられたのはなかなかエモいですね(笑)」

―――では読者に向けて皆さんからのメッセージをお願いします。

咲「前回の出演から1年間グラビアや映画の仕事をしてきて、今回再び主演となります。昨年の舞台を見た人には私の成長を感じてほしいし、初めての人にはこれをきっかけに私のことを知っていただきたい。何度でも観に来て欲しいですね」

石原「私はずっと女優になりたいと言い続けてきたのですが、どうもそれを周りからネタだと思われているんです。ファンの皆さんもそう思っているんじゃ無いかと思うくらいで。でも真剣に本当に女優を目指しているので、真面目なその気持ちを観てもらいたいです。私の舞台を好きになってくれるファンも増やしたいですね」

山本「AUBE GIRL’S STAGEはテーマで言うとこれまで、AI、若者の貧困、誰かのためになりたい、コロナ失業、サイバーテロ、寛容論、シンギュラリティ、まあ様々な作品を創ってきました(笑)。色んなテーマの中で成功を掴んだり、涙を流したり、今を生きる若者を表現しています。今回も変わりありません。
 今回は異空間ファンタジー。割と軽快で楽しい作品かもしれません。テーマは劇場で確認していただきたいですが、本音と建て前を分けて考えようとか、頭ではわかっているけど心が許さないみたいな時どうする?とか、質の高い演技法も取り入れています。まあ、粗削りな部分は多々あるとは思いますが、コロナ禍で演劇界が大打撃を受けた今、とにかく本当にたくさんの方に劇場にお越し頂きたいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

山本夢人(やまもと・ゆめと)
兵庫県出身。「神戸大学演劇部自由劇場」で役者・脚本・演出を担当した後、劇団「スーパー・エキセントリック・シアター」研究生として上京。その後、劇団「Swanky Rider」主宰になり全公演の脚本・演出を手がける。2011年に演劇ユニット「レッドカンパニー」を旗揚げ。2016年、「AUBE GIRL’S STAGE」を始動。代表作は、舞台『オレンジの画面』、『君に触れて、私は泣きたい』、『ため生き』、『遥か』、『サイバーガール~あるいは寛容論について~』、『シンギュラリティ・ゼロ』、『星を買いませんか』など。

石原由希(いしはら・ゆき)
茨城県出身。アイドルグループ「IDO☆HOLIC」で活躍し、グラビアアイドルとしての活動のほか、「ゴッドタン」やAbemaTVのバラエティ番組で活躍。そこでの奔放な印象が強いが、本人は根っからの女優志望。2022年には芸能活動を一時中断して大学受験に挑戦。見事合格を果たす。

咲 菜月(さき・なつき)
長崎県出身。グラビアアイドル。2021年ミス東スポ2022選考オーディションに参加し、準グランプリになる。さらにサンスポGoGoクイーン選考オーディションにて、オンライン賞を受賞するなど人気を高めている。同年6月にはAUBE GIRL’S STAGE第9回公演『シンギュラリティ・ゼロ』チーム インテリジェンスにて主演を務めた。

公演情報

AUBE GIRL’S STAGE 第12回公演
『NO EXIST VOYAGER』

日:2023年7月5日(水)~9日(日)
場:シアターブラッツ
料:S指定席[特典付]6,500円
  A自由席4,500円
  学生自由席3,500円(税込)
HP:https://www.aube-girlsstage.com
問:公演HP内よりお問合せください

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