動物電気30周年記念公演は面白恐ろしいホームドラマ!? 不老不死、UMA、超常現象がてんこ盛り! 30年分のお約束伝統芸も!

 1993年に明治大学演劇サークルOBらによって結成され、人情喜劇をベースに、時にはプロレスを彷彿とさせるほどに体を駆使した“笑って泣ける舞台”を信条とする動物電気が旗揚げ30周年を迎えた。
 その記念公演となる本作は、劇団に突如として吹き荒れたオカルトブームを機に、ある町にやってきた何でも願いを叶える超人的なおんなを巡って起こる面白恐ろしい物語。田村優依(なかないで、毒きのこちゃん)、帯金ゆかり、松本D輔ら、強力な客演陣に加え、もはや伝統芸ともなっている30年分の“お約束”も大棚卸しということなのだから、ファンのみならず、初見の演劇ファンにも見逃せない1本となりそうだ。
 主宰の政岡泰志、小林けんいち、森戸宏明に本作への意気込みを聞いた。

―――まずは30周年おめでとうございます。これまでの軌跡を振り返ってみていかがですか?

政岡「ありがとうございます。今真っ先に思うことは、この記念公演が面白いのができて無事に終わって欲しいという気持ちだけですね。
 僕らは明治大学の演劇サークルから始まっていて、10周年と20周年はあまり過去を思い出すことはなかったのですが、30周年になって急にそこの原点を思い出すようになりましたね。甘酸っぱいあの時代を。きっと年を取るってこういうことなんでしょうかね(笑)。
 でも30年もやったし、少しぐらいおセンチになってもいいんじゃないかな。平たく言えば、仲良くやろうやという気持ちもあります」

小林「年を重ねるごとに時間が経つのが早く感じますよね。15年ぐらいまではやっときたなという感じでしたが、そこから20年、30年はあっという間でしたね。
 過去に出演された方にメッセージをお願いしているのですが、集まってみるとこんなに多くの方に関わってもらっていたんだなと実感します。一口に30年と言っても相当な期間ですから。まだそんなに体力的な衰えは実感していないですが、受け身は取れるのか?とか、(燃やした)毛は生えてくるのか?とか、多少の不安はありますが、痛々しくない程度に出来る限り、身体を張ることはやっていきたいですね」

森戸「30年は特別なことなんでしょうけども、山登りに例えると、特に高いところを登っている感覚はなくて、見える景色は同じ。普通に平地を歩いているだけなんだなという感じがします。
 増減はあってもメンバーがいて、外部から参加して下さる方がいて、ずっとついてくれるスタッフさんがいてやってこれている。だから自分達だけで30年やってこれたんだという気はしていません。その中で毎回より良いものは出したいですし、年齢にふさわしい深みみたいなものを出せたらいいですね」

―――新作はオカルトをテーマにしています。

政岡「最近はあまりオカルトや念力という言葉を聞かないじゃないですか。昭和っぽい響きが懐かしいですよね。僕がそういう話が好きなので、一度テーマにしてやってみようかなと思いました。
 僕の地元の広島でも1970年代に目撃されたという謎の類人猿『ヒバゴン』のうわさがありました。昔は今みたいにSNSがなかったので、口伝手に伝わる面白さがありましたよね。
 これまでも、タイムスリップや精霊を登場させたりしていましたが、僕らはそういうジャンルが好きなおじさん達。今、僕らが欲しいものは何かを考えたら若い力なんですよ。なので不老不死の力を与えることができる不思議な女性が現れて、その彼女を巡って争いがおこるみたいな話にしました。どうせならヒバゴンも出しちゃいましょうかね(笑)」

小林「僕もオカルトの話は好きですね。世の中には不思議な話が沢山あって、そこに想いを馳せることはワクワクします」

森戸「僕も昭和の人間なので、ツチノコとか超能力者のユリ・ゲラーが流行った時代はよく覚えています。ああいうのがゴールデンタイムに放送されてしまうという時代でしたから。それを若い人達に観てもらって、ああこういう世界も面白いなと思ってもらえたらいいですね」

―――30年分のお約束の“伝統芸”も大棚卸し。楽しみにしているファンも多いと思います。

政岡「まあ、そうなりますよね! やっちゃいましょうと(笑)」

小林「昔はプロレス技みたいなことをやってましたが、相当アクロバティックな事は(笑)。まぁ、年相応に……」

政岡「何言ってるんだ! 年相応なんてダメダメ!」

小林「ですよね……。全力で身体を張ります!」

政岡「焼石チャーハンとははどう?」

小林「え、あれやるんですか?(汗)」

政岡「炒めた小石に手を突っ込んで熱に強くなるという漫画のネタを実際にやったことがあって……反応ですか? そりゃみんな『アチチチチチ!』ってなりますよ(笑)」

森戸「ゲネの段階まではそんなに熱くなかったけど、本番で小石に水を入れたら『ジュワーー!!』って一気に蒸発して、みんな一斉に腰を抜かすっていう(笑)」

小林「あれはヤバすぎる……」

一同「(笑)」

―――お客さんを「笑わす」でも、「笑われる」でもなく、「一緒に笑う」というコンセプトを大切にしていらっしゃいます。

政岡「お客さんは目が肥えてらっしゃいますからね。偉そうに笑わそうなんて意図をもって臨むと裏を見透かされちゃいますよ。かといって笑われているだけだと卑屈になってしまう。だから一緒に笑っているほうが気持ちいいんですよ。きっと笑い声が好きなんでしょうね。
 昭和の匂いを残した笑って泣けるアナログな舞台こそ、動物電気だと思っているので、普段演芸に触れたことがない方にでも観てもらいたいと思っています」

小林「外部公演で活動する時も全部、動物電気にフィードバックしたくてやっているという感覚がありますね。僕らが面白いと思うことを全力で表現できる場が動物電気の良さだと思っているので、町の定食屋じゃないけども、あそこのあの味はいつ食べても安定してるみたいな。やっぱりここがいいねと思ってもらえる場所でありたいと思っています」

森戸「僕は特別に『これが動物電気だ』というのはないのですが、他所の団体さんに出ると『森戸さん、もう少し動物電気っぽくお願いします』と言われることがあって悩む時があります。笑いの芝居をしろってことかもしれないですが、これまで僕らがやってきたことが周囲の人達に認められていると思えば、それはそれで嬉しいことですよね」

―――他に注目して欲しい部分はありますか?

政岡「田村優依さん(なかないで、毒きのこちゃん)といった若い女優さんが初めて出てくれます。あとは鬼頭真也さん、伊藤美穂さんが15年ぶりに再登場します。そこに最近常連となっている帯金ゆかりさん、松本D輔君らが花を添えてくれるので、豪華な客演陣にも注目してもらいたいです」

―――最後に読者の方にメッセージをお願いします。

小林「これまで動物電気を観に来てくださった方は勿論ですが、まだ観たことがないという方にはこういう劇団があるんだと知って頂ける絶好の機会と捉えています。是非、僕らが面白いと思うことを全力でやっている姿を観に来て頂けたら嬉しいです」

森戸「観たいけどもまだ行ったことがないという方が多いと聞いています。そういう方には、30周年というこの機会に多少無理をしてでも足を運んでもらいたいです。是非、一度観てくださいと声を大にしていいます。
 30年変わらずというのではなく、常に進化したい変化したいと挑戦する姿勢は持っていたいと思います。でも変われないのが僕らなのかもしれませんが。是非、会場にその姿を観に来てください」

政岡「いつも観て下さるお客さんにはいつも以上に楽しんで頂けるように頑張ります。初見の方にはどんな感想を持って頂けるのかとても興味がありますが、一緒に笑って満足して帰って頂ける舞台にしたいと思っています。是非、多くの方のご来場をお待ちしています!」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

政岡泰志(まさおか・たいし)
1971年6月13日生まれ、広島県出身。動物電気主宰。1993年の旗上げ後、作品全作品に参加。作・演出を手がける。1992年~2002年の解散まで、HIGHLEG JESUSのメンバーとしても活躍。最近の公演ではおばさんキャラも定着し、圧倒的な存在感はお客さんを釘付けに。様々な舞台・映像でも活躍中。

小林けんいち(こばやし・けんいち)
1972年9月19日生まれ、長野県出身。1993年の旗上げより動物電気全ての作品に参加。胸毛を燃やしたり、体をはったギャグはおなじみ。1番楽な姿はふんどし姿、となぜか言い張っている。その甲斐あってか、外部客演も多い。

森戸宏明(もりと・ひろあき)
1973年2月8日生まれ、埼玉県出身。1993年旗揚げより動物電気全作品に参加。的確なつっこみと多彩なキャラを演じるセンスは劇団の中枢ポジション。ブログの猫日記では意外な一面も。外部活動も意欲的に行う。

公演情報

動物電気三十周年記念公演
『念力!山動く』

日:2023年6月3日(土)~11日(日)
場:下北沢 駅前劇場
料:4,000円
  高校生&65歳以上3,000円
  ※団体のみ取扱/要身分証明書提示
  (全席指定・税込)
HP:https://www.doubutsu-denki.com/
問:動物電気☆営業部
  mail:info@doubutsu-denki.com

インタビューカテゴリの最新記事