初舞台・初主演にはハードルが高い作品―― あえて挑む意味とは “ことば”を持たずに育ったカスパーに、初舞台となる寛一郎が挑む 

初舞台・初主演にはハードルが高い作品―― あえて挑む意味とは “ことば”を持たずに育ったカスパーに、初舞台となる寛一郎が挑む 

 19世紀のドイツ。地下牢に閉じ込められ、社会から隔離されて育ったカスパー・ハウザーは、発見当時1つの“ことば”しか知らなかった……。そんな実話をもとにノーベル賞作家ペーター・ハントケが書いた戯曲『カスパー』に、映画やドラマで着実にキャリアを積み重ねている寛一郎が挑む。なんと本作が初舞台で初主演になる寛一郎は、どんな気持ちで挑むのか。

 「“初”を経験できることは嬉しいし、緊張感とぎこちなさを楽しんでいるところもあります。全てが挑戦で具体的にどうなるかはまだ見えていません。この作品はほとんど僕が独りでしゃべるようなもので、相手役とのやりとりがあまり多くない。初舞台にはハードルが高い作品だと思いますが、そこは気が楽です」

 舞台にはただひとつのフレーズを繰り返すカスパー。そこにカスパーを調教しようとするプロンプターと呼ばれる3人の男(首藤康之・下総源太朗・萩原亮介)が現れ、膨大な“ことば”をカスパーに浴びせかける。そんな台本には膨大な量のセリフが延々と続いている。

 「僕も読み切るまで台本を3回くらい閉じています(笑)。しかし、ちゃんと自分の中で目的を持って読むととても面白いんです。それに“ことば”に対しての解釈については今の僕には大切なテーマで、それを代弁しているような作品なので挑戦したいと思いました。そして、もともと自分自身の中にあった“舞台はやらない”という気持ちを崩すには、これくらいパンチがある作品でないといけないかなと思いました。それにまっさらな状態で挑むので、色々なことも吸収できると思っています」

 映像と舞台とでは集中力の使い方が違うと俳優たちは言うが、寛一郎はどう考えるのだろうか。

 「そういうこと(舞台)をまだ体験していないので、自分の集中力が続くのかどうか……不安要素です。ですが『カスパー』の世界にちゃんと入り込めば、出来てしまうんじゃないかとも思います。ともかく頑張ります。それにすぐ目の前にお客さんがいるのも未経験。でもそれがパワーをくれる源になるかと思います」

 俳優たちは舞台の上で観客の想像を超える力を発揮する。だからこそ劇場に足を運ぶのだ。きっとこの『カスパー』でもそんな寛一郎を目撃することができるはずだ。

 「人が生きる上で大切な“ことば”ついての作品で、難しくて暗い作品だと思われるかも知れません。でも観た後に何かを持ち帰ってもらえるでしょう。お待ちしています」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))

子供の頃から変わってないなぁ~と思うところはありますか?

「全ての季節、パンツ一丁で寝る。子供の頃から大分変わったので、習慣として残ってるのは就寝時の格好、そして寝る姿勢ですね。季節関係なく、タンクトップorTシャツ+パンツで絶対に寝ます。どんなに寒い時でも、何にも縛られず、でも大事なところは守ってる感覚が好きなんでしょう。あとうつ伏せや丸くなって寝ます。これも一種の防衛本能なのかもしれません。」

プロフィール

寛一郎(かんいちろう)
1996年8月16日生まれ、東京都出身。2017年、映画『心が叫びたがってるんだ。』で俳優デビュー。同年公開の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、翌年公開の『菊とギロチン』での演技が高く評価され、第92回キネマ旬報ベスト・テン 新人男優賞など様々な賞を受賞。その後も順調に映画・ドラマに出演し実績を積む。2022年、NHK 大河ドラマ『鎌倉殿の13 人』では、源実朝を暗殺する公暁役を演じ、全国的にも印象を残した。舞台作品への出演は本作が初となる。

公演情報

カスパー

日:2023年3月19日(日)~31日(金)
場:東京芸術劇場 シアターイースト
料:9,500円 ※他、割引あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://tspnet.co.jp/
問:tsp Inc. mail:contact@tspnet.co.jp

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事