『幸せになるために』は、日本航空123便墜落事故をテーマに事故に巻き込まれた5組の遺族を描く物語だ。2年ぶりの上演となる本作の主演を鳥居みゆきが続投する。
「前回の公演で、墜落事故のことを知らない若い人がいっぱいいることを知り、ビックリしたんです。ニュースで流れはしますけど、事故が起こった時期だけじゃないですか。そもそもニュースを観ない若者も多いですし……。舞台ならそういう子たちにもアプローチできるのかなと。この事故を忘れてほしくないからこそ、また演じられるのは嬉しいです」
鳥居が演じるのは、墜落事故で息子を亡くした母親だ。鳥居の切実な演技は前回も絶賛の声が多かったが、本人にはかなり負担の大きいものだったという。
「私、ちょっと反省していて。前回は役に入り込みすぎて食事が取れなくなっちゃったんです。どんどんその人になっていって、毎日悲しくて苦しくて。でもその時、そういう自分でよかったとも思ったんです。何も感じずに稽古して、本番を迎えて、飯行くぞ!って切り替えられる自分じゃなくてよかったです。そういう不器用さは残しつつ、今回はもっと俯瞰で演技ができたらいいなと思います。どんなに資料を読み込んでも本当にその人にはなれないのだから、私自身の部分も残しておかないと」
今回の再演も鳥居にとって過酷なものになるのでは?と問うと、「しんどいことって凄く好きなんです」と力強い笑顔で語る。
「それにこのお芝居を通して、人に対して結構感情が向けられる人間になりました。私、人のことがどうでもいいんですよね。昔からドライってよく言われていて、だけど、特に子どもに対して愛情を持つようになったんですよ」
以前にも航空機事故を自身の単独ライブで扱ったこともある鳥居だが、本作を通じて訴えたいものとは。
「事故があったことを忘れないでほしいという前提はありますけど、人はみんな死に向かって生きていることを個人個人で実感してほしいなというのもありますね。この舞台では残された遺族のことを語っていますし、もちろんそこに思いを寄せてほしいです。それと同時に、人はいつ死ぬかわかんないんだよってことも思ってほしい。私は常にメメント・モリを意識して生きていたいんです。死を感じることで、生を感じる……。この事故のことを知らない人も、1度は観に来てくれたらと思います」
(取材・文:いつか床子 撮影:平賀正明)
「子供の頃父親に、救急車の音が近いと高い、遠ざかると低くなることを『これはドップラー効果というもので、お父さんが発見したんだぞ』と言われていたので、うちのお父さんはなんて凄いんだと思っていた。大きくなってからドップラー効果の説明を見かけてドップラーさんが発見していたことを知った」
プロフィール
鳥居みゆき(とりい・みゆき)
秋田出身、埼玉育ちのお笑い芸人。自分を表現できる場を求めてお笑いを志し、歯科助手として働きながらお笑い養成所に通う。2000年、お笑い芸人デビュー。サンミュージック所属後は先輩である山田ルイ53世の助言から生み出した「ヒットエンドラーン!」のネタで大ブレイク。以降も単独ライブ開催、映像作品への出演、絵本やコラムの執筆など、お笑いの枠に囚われない自由な表現活動を展開。舞台出演も多く、近作では『アキバ冥途戦争~浪速喰い倒れ狂騒曲~』に出演。本作『幸せになるために』は、2022年公演でも主演を務め、追加公演を開催するほどの評判となった。現在、発達障害をテーマにしたEテレの子ども番組「でこぼこポン!」の主要キャラクター・でこりん役を務めている。番組をきっかけに児童発達支援士と発達障害コミュニケーションサポーターの資格を取得した。
公演情報
“STRAYDOG”Produce 『幸せになるために』
日:2024年7月11日(木)~15日(月・祝)
場:新宿村LIVE
日:2024年8月24日(土)・25日(日)
場:in→dependent theatre 2nd
料:プレミアム席[特典付・1~2列目]10,000円
A席 一般6,000円
高校生以下3,000円 ※要身分証明書提示
(全席指定・税込)
HP:https://www.straydog.info/2024shiawase
問:STRAYDOG PROMOTION
mail:s-pro@straydog.info
(平日11:00~18:00)