グランド・バレエ『かぐや姫』第2幕が世界初演! 「影姫」によって描きだされる、新しいかぐや姫の物語

グランド・バレエ『かぐや姫』第2幕が世界初演! 「影姫」によって描きだされる、新しいかぐや姫の物語

 東京バレエ団が振付家・金森穣とともに手がける日本発のグランド・バレエ『かぐや姫』。本作は全3幕を予定し、今秋の全幕公演に向けて今なお進化を続ける意欲作。その第2幕がこの春、東京文化会館にて世界初演となる。

 「第1幕はドビュッシーの交響詩『海』から始まって、かぐや姫のいきいきとした村での生活や初恋が描かれました。ですが2幕では舞台が宮廷に移り、雰囲気がガラッと変わります。違う物語を観ている感覚かもしれません」

 そう語るのは、本作から登場する帝の正室・影姫を演じる金子仁美だ。

 「影姫は穣さんが創作したオリジナルの登場人物です。かぐや姫が光だとしたら、影姫は影。かぐや姫のような光り輝く人になりたいと願う、寂しい人なのではないかと私は思います」

 原作にない役どころということで、一から影姫を作り上げていくのには苦労したという。

 「私が勝手に想像しているのは『大奥』の世界(笑)。影姫は宮廷を意のままに操る高貴な存在ですが、一度も自由を手にしたことがありません。一方のかぐや姫は自由な幼少期を過ごしたものの、無理やり宮廷に連れてこられて“ここは私にふさわしくない”と葛藤している。正反対のふたりなのに、不思議と鏡合わせのように通じるものがあります。帝との三角関係も見どころで、終盤に3人で踊るパ・ド・ドゥがすごく切ないんです」

 また、伝統的なバレエスタイルと金森が培ってきた革新的な創作メソッドが融合したダンスも本作の特徴のひとつ。「クラシック・バレエとは全然違いますね」と金子は語る。

 「クラシック・バレエはバシッとポジションが決まっていますが、穣さんのメソッドは骨をひとつずつ動かしたりとかなり独特。冒頭、影姫が4人の大臣と踊るシーンでは、私はずっと手足をもたれて空中でリフトされています。バレエにはない動きですし、影姫が宮廷の人間をいいように転がしているのが伝わってくる個人的にも好きなシーンです」

 ドビュッシーの楽曲が日本最古の物語と見事に調和するのも、この繊細な振付のなせる技だろう。そして宮廷の男性たちによるエネルギッシュな群舞もあり、最先端の舞踊とクラシック・バレエ、両者の魅力を十二分に堪能できそうだ。そんな本作にかける意気込みを聞いてみた。

 「バレエを知らない人でも最初から吸い込まれる作品だと思います。最初から吸い込んでいけるように頑張ります!」

 宮廷で繰り広げられる恐ろしくも切ない愛憎の行方をぜひ目の当たりにしてほしい。

(取材・文:いつか床子 撮影:友澤綾乃)

 

子供の頃から変わってないなぁ~と思うところはありますか?

金子仁美さん
「負けず嫌いなところ。とにかく負けることがキライで、小さい時は姉と遊んでよく泣いてました。大人になってからは、自分に負けないように必死です!
あとは、お調子者なところも。3姉妹の末っ子だからか、甘え上手というか……。自分でお調子者だなって思います」

プロフィール

金子仁美(かねこ・ひとみ)
群馬県出身。6歳よりバレエを始める。東京バレエ学校を経て、2011年東京バレエ団に入団。主なレパートリーに、2016年、バレエ団初演にてブルメイステル版『白鳥の湖』(四羽の白鳥/ ナポリのソリスト)、『ドン・キホーテ』(キトリの友人)、『くるみ割り人形』(マーシャ)、『ラ・バヤデール』(パ・ダクシオン/ 影の王国)、『ジゼル』(ドゥ・ウィリ)、『M』(海上の月)、『ドリーム・タイム』、『真夏の夜の夢』(タイターニア)などがある。バレエ団初演作品に、2017年、キリアン『小さな死』、2019年、『海賊』(オダリスク)などがある。振付にも積極的に取り組み、2022年に『Daydream』などを発表している。

公演情報

東京バレエ団 かぐや姫 他

日:2023年4月28日(金)~30日(日)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席13,000円 A席11,000円 B席9,000円
  ※他、各種席種あり。詳細は団体HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)

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