激動の昭和を駆け抜けた稀代の政治家、田中角栄。豪胆で人々の記憶に残る数々の名言は、現代におけるスピーチ術の参考にもされてきた。本作は普遍的な日本人の世界観を新しい舞台芸術として発信する劇団ポラリスが、ビジネス書「田中角栄 心を掴む3分間のスピーチ」をモチーフに、浪曲の名人とも言われた角栄の生い立ちも含めて純国産オペラ化し、2022年12月に旗揚げ公演として上演。主演の浪曲師・玉川太福を筆頭に、オペラ歌手の柿迫秀、吉武大地ら、異色の才能達がどんな角栄を演じるかに注目が集まる。
太福「40年以上も前の演説ですが、今の時代に繋がるような内容が沢山含まれているんですね。角栄さんは非常に本質を捉えたことを当時から仰っていて、語る能力だけでなく、時代を見る先見の明があった政治家だと改めて感じます。角栄さんが吃音を矯正する為に始めたとされる浪曲ですが、我々玉川一門がお家芸とする『天保水滸伝』という演目が角栄さんと所縁があったということで身近に感じております。普段は1人で複数人を演じていますが、共演者の方のエネルギーを頂けるのは舞台ならでは。今回は大劇場でどのようにスケールアップするか楽しみです」
柿迫「オペラで政治家を演じる機会はそうそうないので、凄く新鮮でした。共演者の皆さんの熱量が同じ方向に向かっていて、全員が角栄さんに魅了されていたと感じました。人を愛し、絆を大切にする義理と人情に溢れた方であり、現代では希薄になりつつある言葉ですが、角栄さんという人の中にはそう
いった部分が沢山詰まっていて、老若男女問わず、共感する部分があると思います。そこに僕らは惹きつけられて、また表現したいと思うんですね。その公演がまた続くことが非常に嬉しいです」
吉武「歌で物語を綴るという意味では浪曲とオペラも共通しています。そこに人の心をグイッと惹きつける強烈な名言と、昭和独特のエネルギーも加わり、今まで観た事がない舞台と言えます。今回、新たに加わる若い合唱団も注目ですが、是非、角栄の母の声と語りを担ってくださった木村多江さんの存在にも注目です。また、新潟公演が決まった際には娘の田中真紀子さんに手紙を書いたらすぐに応援の返事を頂くことができました。浪曲やオペラファンのみならず、義理人情に厚い田中角栄というキャラクターの言葉とエピソードが刺さる人はこの世に沢山いると思うので、是非生で観て欲しい作品です」
（取材・文：小笠原大介 撮影：山本一人（平賀スクエア））
玉川太福さん
「幕末の侠客の世界ですね。『清水次郎長伝』という最も有名な侠客伝も、実際に博徒同士の喧嘩に同行した講釈師が考案したと伝えられています。今日ではまるで想像のつかない、“斬った張った”の世界を眺めてみたいです。喧嘩で活躍しないような、三下奴という下っ端がいいですね。怪我しないように、逃げ回りながら見学したいです」
柿迫 秀さん
「全世界共通一言語の世界に住んでみたいです。世界中が1つの言葉で会話可能。生まれた国は違っても誰とでも会話可能。仲良くもなれるし、喧嘩も出来る。きっとそれでも争い事はあるんだろうな。私はオペラを勉強するために、イタリアで6年間過ごして、外国生活のコミュニケーションの楽しさももどかしさも両方経験したので。もしそのハードルが無かったら、どんな世界になるのか興味があります」
吉武大地さん
「“人の寿命が20年しか生きられない星”。架空であるならば“太く短い”人生を歩んでみたい。20年という期限の中で人はどう生きるのか見てみたいし、自分自身も本気でチャレンジをする。座右の銘が“一日が一生”なので、架空ではなく現実も一日一日を大切にして今年は劇団ポラリスを広げていきたいです」
プロフィール
玉川太福（たまがわ・だいふく）
1979年8月2日生まれ、新潟県出身。浪曲師。2007年3月、二代目玉川福太郎に入門。2013年10月、浅草木馬亭にて名披露目興行。浪曲定席木馬亭の他、落語の定席にも出演。『天保水滸伝』、『清水次郎長伝』など古典演目を継承する一方、映画『男はつらいよ』浪曲化など、新作浪曲にも積極的に取り組む。2016年より、にいがた観光特使。
柿迫 秀（ かきざこ・あきら）
1967年5月18日生まれ、島根県出身。オペラ歌手（テノール）。国立音楽大学、同大学院修了。イタリア・ミラノに留学。ベルヴェデーレ国際声楽コンクール入賞。イタリア及びフランス国内においてコンサート等に出演。オペラ『魔笛』タミーノ役、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』フェッランド役など。
吉武大地（よしたけ・だいち）
1979年2月28日生まれ、埼玉県出身。東京藝術大学卒業。その後イタリア・ミラノ音楽院に留学。学生時代から数々のオペラ、オペレッタに出演。帰国後、男性ボーカルグループ「ESCOLTA」でメジャーデビュー。ミュージカルにも多数出演。また、オペラユニット「THE LEGEND」メンバーのリーダーとしても活躍の場を広げている。
公演情報
劇団ポラリス オペラ『 THE SPEECH（ザ・スピーチ）』
日：2023年3月24日（金）・25日（土）
場：シアター1010
料：［3/24］ゲネプロチケット5,000円（全席自由・税込） ［3/25］5,000円（全席指定・税込）
HP：https://gekidan-polaris.jp/
問：カンパニーイースト
mail：info@companyeast.jp
