市川右團次を主演に、昨年第一回開催を迎えた「伝統芸能華の舞」。二度目の開催となる今回は、歌舞伎十八番の内『鳴神(なるかみ)』と『楠露(くすのつゆ)』、『楠公(なんこう)』の「楠木正成二題」を披露する。
右團次「『鳴神』は派手な立廻りに美しい女形、最後は六方で花道を引っ込む歌舞伎の十八番。長唄『楠公』は私が子供の頃に日本舞踊家の父と踊った演目で、今回倅の右近と一緒にと考えました。さらに能楽独調の『楠露』を加えて『楠木正成二題』とし、昨年とはまた趣向の違った舞台をご覧頂こうと考えています」
『鳴神』といえば市川宗家のお家芸であり、鳴神上人を演じるにあたり市川海老蔵の指導を仰いだという。
右團次「鳴神上人は高僧ということで、『根底にある品位を忘れずに演じてください』とご指導を頂きました。その言葉を念頭
に、鳴神上人の内なる気位を大切に演じるよう勤めます」
一方『楠公』は素踊りで、右團次が楠木正成を、右近がその息子の正行に扮し、親子共演を繰り広げる。
右團次「作中は親子の別れの場面もあり、ドラマチックにお見せできればと思います。私が初めて正行を演じたのは10歳位、ちょうど単身上京してきた頃。私自身父と別れて暮らしていたので正行の気持ちはよくわかり、倅にその心情を伝えられたらと思っています。ただ私と倅では持っているものがまた違い、私の表現を押し付けることなく、彼の良さを引き出してあげたいと考えています」
素踊りに挑戦する右近に心境を尋ねると、「これまでは衣裳や化粧をして踊っていたけれど、今回は素顔で踊るので大変だと思う」と緊張の面持ち。父であり師匠でもある右團次については、「普段は優しいけど、稽古で怒るとちょっと怖い」と本音もちらり。その上で「立廻りがかっこいい。お父さんのような役者になりたい」と尊敬の念を口にする。
右團次、右近親子に加え、『鳴神』には市川笑三郎、『楠公』には大谷廣松、市川弘太郎らが出演。全国16ヶ所で上演を行う。
右團次「お客様に喜んで頂き、僕らはそこで元気や勇気を頂く。一度きりの空間を共有できればと思っています。歌舞伎の色々な魅力を楽しめる演目になっています。歌舞伎が好きな方も初めての方も、この機会に歌舞伎に親しんで頂けたら幸いです」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:安藤史紘)
市川右團次さん
「今までにハロウィンの仮装を行ったことはないのですが、仕事上、毎日仮装しハロウィンパーティーをしているようなものです(笑)。色々な衣裳を着て仕事をしておりますので。」
市川右近さん
「今までに2回ぐらいハロウィンパーティーに行きました。仮装は何回かしたことがあって、黒猫、F1レーサー、鬼滅の刃の我妻善逸の仮装をしました! ハロウィンパーティーで、お面だけつけている人がいて、見ていて面白かったです。」
プロフィール
市川右團次(いちかわ・うだんじ)
1963 年11 月26 日生まれ。飛鳥流家元・飛鳥峯王の長男。
1972 年6 月、南座『天一坊』の一子忠右衛門にて初舞台。1975 年、三代目市川猿之助(現・猿翁)の部屋子となり市川右近を名乗る。2017 年1 月、新橋演舞場にて三代目市川右團次を襲名。近年ではスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』のエドワード・ニューゲート(白ひげ)を務めるほか、古典でも存在感と風格を見せ、『車引』では勇ましい荒事の魅力を見事に表現。テレビドラマ『陸王』やバラエティ番組出演、オペラの演出を手掛けるなど、マルチな才能を発揮している。
市川右近(いちかわ・うこん)
2010 年4 月18 日生まれ、東京都出身。市川右團次の長男。
2016年歌舞伎座『義経千本桜 渡海屋・大物浦』にて初お目見得。2017年新橋演舞場『雙生隅田川』の梅若丸、松若丸で二代目市川右近を名乗り初舞台。スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』ではトニートニー・チョッパーを演じ、『東海道中膝栗毛』、スーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』などに出演。ラグビーワールドカップ2019 の開幕式では父 右團次と共に『連獅子』
を披露した。
公演情報
伝統芸能 華の舞
日・場:2021年11月 9日(火)13:30開演(13:00開場)
和光市民文化センター 大ホール
11月12日(金)13:30開演(13:00開場)
府中の森芸術劇場 どりーむホール
※他、地方公演あり
料:特等席8,000円 一等席6,800円
二等席5,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.zen-a.co.jp/
問:Zen-A(ゼンエイ)
tel.03-3538-2300(平日11:00~19:00)