城山羊の会・山内ケンジの新作書き下ろしがKAATに初登場 毎日1ページずつ稽古場に届く台本。それを待つ少年のような自分。

城山羊の会・山内ケンジの新作書き下ろしがKAATに初登場 毎日1ページずつ稽古場に届く台本。それを待つ少年のような自分。

 テレビドラマや映画はもちろん、現代の演劇界で活躍する数多くの劇作家や演出家の舞台に出演している橋本淳。実はKAATの舞台とも不思議な縁があるのだそうだ。

 「KAATでの作品に出させてもらうのは3回目ですね。初代の芸術監督だった宮本亞門さんと、次の白井晃さんそれぞれの作品に出演しました。そして今回の長塚さんですから。なんだか芸術監督が替わる度に呼んでもらっているみたいで(笑)」

 笑って話す橋本が出演するのは、KAAT初登場となる山内ケンジの書き下ろし新作『温暖化の秋-hot autumn-』。CMディレクターとして白戸家シリーズを始めいくつもの話題作を手がけ、並行して主宰する演劇プロデュース・ユニット「城山羊の会」でファンを惹きつける山内作品を“神奈川でも観たい!”と芸術監督・長塚圭史のシンプルな動機をきっかけに実現した企画だ。橋本はそんな山内作品の面白さをどう捉えているのだろう。

 「山内さんの舞台に参加させてもらうのも3回目になります。面白さといえばやはり言葉選びや会話の妙でしょうか。それと僕は山内さんの目を通して現代をどう見ているかという部分が好きですね。台本が毎日1ページくらいしかやってこないので(笑)。週刊誌を待っている少年のような気持ちになります。それでも山内さんの書くものに僕は絶対の信頼を持っているので、あとは山内さんの尻に火がつくのを待つだけです(笑)」

 嬉しさでいっぱいの橋本に、山内作品との出会いも聞いてみた。

 「20代の半ばくらいのころ、一緒に舞台を創っていた河原雅彦さんから城山羊の会を教えてもらって、観に行きました。こんなエログロの日常会話をする劇団があるのかと思いました。その時の公演チラシに、次々回公演のオーディション告知があって、それに個人的に応募しました。だからCMディレクターとしての仕事は知らなくて、後で聞いてびっくりしました」

 橋本は舞台に出演するようになった頃、観る力を養うために年間最低100本は舞台に足を運んだという。こうした積極性が現在の彼を作り上げているのだろう。最後に意気込みを伺った。

 「山内さんが書く言葉一つひとつをかみくだきつつ、どう具現化するかが毎回のテーマですが、さらに城山羊の会が持つ独特な空気の中で、自分がどうたゆたえるかが、楽しみでもあり怖さでもあります。せひご覧いただきたいです」

(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

読書の秋、つい読み返してしまう本はありますか?

「最近だと燃え殻さんの作品が好きで、『これはただの夏』という小説を数回、数十回読みました。アマゾンさんのオーディブルという朗読のページでこの作品を朗読させてもらったということもあるのですが、なかなか同じ小説を数回読むことはしなくて、どちらかというと苦手かなと思っていたのですが、数回読み直してみると見えてくるものもあって、『これはただの夏』は、読み手である僕に、今思っていることだったり僕自身のことが返ってくる感覚もあるので、夏以外の季節にまた読むと、違った感覚が味わえるのではないかと思っています。朗読したあとも何回か既に読んでいて、きっと自分に立ち返れる本なのかなと思って読んでいます。あとはエッセイとかを読むことが多くて、最近では中島らもさんのエッセイなどを読みました」

プロフィール

橋本 淳(はしもと・あつし)
東京都出身。中学生で芝居に興味を持つ。高校生の頃、自分がスーツを着て通勤している姿が想像できず、そうならない人生を模索するうちに俳優へと行き着き、芸能事務所のオーディションを多数受けた結果、アミューズに所属。2004年、ドラマ『WATER BOYS 2』でデビュー。その後舞台へも積極的に出演し、現在活躍する様々な作家・演出家の作品に出演して演技の幅を拡げる。現在も舞台・映画・ドラマと多方面で活動中。

公演情報

KAAT×城山羊の会 『温暖化の秋 -hot autumn-』

日:2022年11月13日(日)~27日(日)
場:KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
料:一般6,000円 早期割引【11/13~16】5,000円 ※他、各種割引あり。詳細は劇場HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.kaat.jp/d/ondankanoaki
問:チケットかながわ tel.0570-015-415(10:00~18:00)

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