盛りを迎えて咲き誇る薔薇園のような、今でしか観られない瞬間の演劇を 実に贅沢なプログラムで贈る、10周年にふさわしい記念公演

盛りを迎えて咲き誇る薔薇園のような、今でしか観られない瞬間の演劇を 実に贅沢なプログラムで贈る、10周年にふさわしい記念公演

 プレイヤーたちの会話を通して推理を進めるパーティーゲームとして、根強い人気をもつ「人狼ゲーム」を演劇に採り入れた『人狼TLPT』が初めて上演されてから10年の歳月が経った。そこで記念公演といえる『人狼TLPT 10th Anniversary -ROSERIUM-』が上演される。13人の役者が「人狼ゲーム」のルールに基づいてアドリブで物語を進め、観客もまた推理を楽しみながら鑑賞するスタイルは、昨今注目されているイマーシブ・シアターのひとつとも言えるだろう。
 そんな人狼TLPT 10周年を記念する今回は、それに因んでか、なんと10種類の設定が用意された。またこれまでに参加した役者だけでなく、オーディションで選ばれた役者も参加し、彼らだけで務める“ルーキー”ステージも用意されている。サブタイトルに薔薇園を意味する「ROSERIUM」とつけられたのは、思い思いのタイミングで咲く薔薇の花々による薔薇園には、その時々でしか観ることができないライブ感を持っているが、それはこの舞台にも通じるものであり、その瞬間を見逃さないで欲しいという想いからだと総合プロデューサーの桜庭未那はいう。まさに10周年にふさわしい想いが込められた今回の人狼TLPT。桜庭に加えて、総合演出を任されている松崎史也に話を聞く。

――――まずは10周年おめでとうございます。ここまで続いているのは凄いことだと思います。

桜庭「始めた時は最初の舞台が無事にできれば良いとだけ思っていて、2回目ですら実現できるとは思ってもいませんでした。むしろキャストの方が作品への可能性を信じて「10年やりましょう」と声がけしてくれていました。その後公演を続け、節目毎の周年イベントを重ねてきて10年となると、もうこのコンテンツも生き物になった気がします」

松崎「10年前、32歳の僕は俳優として灯が消えかかり、演出家としては駆け出し。そんな状態でした。それが人狼TLPTを10年やり続けて、現在は演出家として自分でも思ってもいなかったような仕事をするようになり、演劇に携わっています。きっと人狼TLPTがなかったら俳優は辞めていたでしょうし、これを続けたことで演出家としても気づきがありました。それは舞台上で感情を込めて放った言葉は、公演にとって真実になるということ。これはアドリブ劇だからこそ体験できたのだと思いますし、演出家、俳優。お互いの立場で役立っています。だからこそ人狼TLPTにはこれからも続けて欲しいです」

――――そもそもは桜庭さんが発想された舞台ですが、どんなきっかけで人狼TLPTが生まれたのでしょうか。

桜庭「役者をしていた私は同時にゲームおたくで(笑)、男子に混じって遊んでいるタイプでした。人狼ゲームも結構昔から楽しんでいて、パソコン通信を通してプレイしたりもしていました。あるときに仲間でプレイしたとき、ちょっとふざけて演劇的な設定を持ち込んだら凄く盛り上がって、それをみんなでやっているうちに感動のドラマがうまれました。そこでもしもこれを本物の役者が関わって演技を交えてプレイしたら、とんでもないことになると思って企画したんです」

――――医師マドック役として何度も人狼TLPTに参加している松崎さんですが、今回は出演だけでなく、総合演出という立場でもあります。

松崎「今回の記念公演には2本の柱があると思っています。まずは10年間関わってくれたお客様、プレイヤー、スタッフ全員への感謝のステージであること。そしてこれから先の10年を作っていく意思を明示すること。これを今できるのは自分だという自覚と自負があります。そして今なら演出家としてそれを若い俳優に伝える事ができるだろうと思います」

――――当初、4種類のステージが用意されるという話でしたが、いつの間にかそれが10種類(笑)。増えていますね。

桜庭「記念公演として松崎さんを総合演出に迎えようと決まって打合せする中で、もう早い時期に松崎には10個以上のアイデアがあって、提案を頂きました。10周年にふさわしいお祭りにするべく考え抜いた結果こうなりました」

松崎「この10年の間に楽しんでくれた人に対して、さらに楽しんで欲しいという気持ちです。これまでご覧頂いているディープなお客さんにはいろいろ観て頂きたいですが、人狼TLPT初心者のお客さんには、どれか1本ご覧頂いて、それが面白かったらもう1本観て頂ければと思います」

――――オーディションを通して今回初めて参加するプレイヤーによる“ルーキー”ステージは、10年前のご自身を観るような感覚かと思いますが、ゲーム要素がない“ストーリー”ステージというのもありますね。

桜庭「これは初めての試みで、アドリブ部分がない、つまり人狼ゲームによって進行が決まる部分がないステージです」

松崎「10年やってきてはじめて台本に沿った舞台になります。目玉のひとつですね」

――――それにしても全編アドリブで舞台が進行していくというのは、役者にとっても凄いハードワークじゃないですか?

松崎「1日2ステージやると凄いダメージですよ。もう脳が疲れる感じです。設定が事前にあるものもあれば、舞台上で急に展開することもありますからね」

桜庭「冒頭、短めのオープニングで説明があって、みんなが宣誓をする場面になりますが、そこから最後までアドリブです」

――――色々なことが起きますよね。相手に合わせるか、立ち向かうか、瞬時に決めて動かないといけない。

松崎「ケースバイケースで、相手が投げてきた球を捕ることもあるし、打ち返したり、投げ返したりすることもあります。世界観も色々に設定ができますが、今回はオーソドックスなヴィレッジ=村という設定で進めます」

――――それでは10周年公演を前にした観客の皆さんへのメッセージをお願いします。

松崎「僕たちが演劇の端っこでやっている『人狼TLPT』は、演劇のフリースタイルバトルのようなものですが、これは演劇の世界を変えていくものだとも思っています。だからこそ演劇ファンの皆さんに一度は観て頂きたいです。そして人狼ゲームを全く知らない方でも楽しめる舞台になっていますからぜひ一度覧ください」

桜庭「稽古の時に必ずいうことなんですが、これはゲームイベントではなく、物語を作る作業なんです。凄く大変なこの舞台が10年続いたのは、支えてくれたキャスト、スタッフがいたからこそです。全員が自信を持ってお薦めできるメンバーなので、今回もきっと素晴らしい物語が生まれるでしょう。絶対楽しめますので是非一度足をお運びください」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

桜庭未那(さくらば・まな)
東京都出身。役者を経て2012年に舞台『人狼TLPT』自主企画として上演。これまでに無いスタイルの舞台として人気を集め、総合プロデューサーとして毎年公演を実現する。『人狼TLPT』はアニメ・漫画・テーマパークとのコラボレーションや、映画祭への招待を受けるほどの人気コンテンツへと育て、今年10周年を迎える。

松崎史也(まつざき・ふみや)
東京生まれで福岡、愛知で育つ。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、Afro13に参加し役者としての活動を始め、2010年からは演出も手がけるようになる。2012年に人狼TLPTのプレビュー公演に「医師マドック」役で参加。以降、人狼TLPTにおける看板役者としてファンに知られるようになる。また2013年の『人狼TLPT X 新撰組』以降、数作品の演出も手がけている。

公演情報

人狼 ザ・ライブプレイングシアター
10周年記念公演

人狼TLPT 10th Anniversary -ROSERIUM-

日:2022年9月28日(水)~10月10日(月・祝) 場:シアターサンモール
料:ロザリウムシート[一般席]6,000円 / 5,000円 / 4,000円
  ※公演によってチケット料金が異なります。
  ※その他、各種チケットあり。
   詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:http://7th-castle.com/jinrou/10th_anniversary/
問:オラクルナイツ
  mail:info@oracleknights.co.jp

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