現在放映中のNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』をはじめ日本アカデミー賞で優秀脚本賞を受けた『パッチギ!』、『フラガール』など、人気ドラマの脚本を数多く手がけている羽原大介が、新たな演劇ユニットを始動する。2年前に解散した昭和芸能舎では29回の公演を打ったが、今回はまた新たな気持ちで始めるという。公演の準備に余念が無い羽原に話を聞いた。
―――羽原さんは以前も昭和芸能舎という劇団を主宰されていますが、再び新たなユニットを組まれるのはどうしてでしょう。
「昭和芸能舎を20年くらいやってきて、固定化されたメンバーの中でやれることはやったかなとおもって終えたのですが、さらにもう少し新たなメンバーと共に、役者に制限を設けない状態で始めたいなと思ったんです。今の僕は映画やテレビドラマの脚本が多いですが、やはり芝居が原点なんですね。芝居って経済行為としては効率悪いけれど、それでもライフワークとして続けていきたいと思います」
―――最終公演が2020年。再始動までの間隔が割と短いですよね。
「昭和芸能舎の解散公演以前から朝の連続テレビ小説(『ちむどんどん』)の準備に入っていて、しばらく(劇団は)やれないなと思ったこともあったんです。すごい大仕事で2年半くらいは動けなくなりましたから。その目処もついたことも理由ですね」
―――キャストはどんな形で決められましたか。
「オーディションをしましたが、その他に直接オファーした方もいます」
―――顔ぶれを見てみるとかつてダブルダッチの世界大会を制した高橋駿一さんや、俳優への転身前にはバレエの世界でキャリアを積んだ大滝樹さんなど、体の動く人が多い気がします。
「たまたまですよ(笑)」
―――台本はこれから仕上がるのだと思いますが、こうしてメンバーが決まるところから見ていると、あて書きになりますか。
「効率よく稽古を進めて、皆さんの長所がお客さまに届くようにと考えると、小劇場はどうしてもそうなりますね。でも連続ドラマの脚本でもキャスティングが決まるに従って、あて書きになっていくことは多いです」
―――確か大学(日本大学芸術学部)を出られてから芸能事務所のマネージャーになって。その後につかこうへいさんの事務所に移るんですよね。それはつかさんの助手としてですか。
「いやいや、運転手や下働きですよ。僕の学生時代は丁度つかさんが一時期劇団を休止していた時期で、学生仲間やいくつもの劇団がつか作品を沢山やっていたんです。『熱海殺人事件』なんか4人いればできちゃいますからね。それを通じて僕はつか作品に心酔していました。それでマネージャー時代につかさんに会う機会があった時、心酔していたことを告げると『じゃあ俺のところに来れば』となったんです」
―――その後下積みを経て井筒監督との『パッチギ!』辺りから広く知られるようになるわけですね。じゃあ今回の新ユニット立ち上げは、そんな芝居の虫がまた騒いだというところでしょうか。
「芝居の、というよりも“つかさんの虫”でしょうね、きっと」
―――さて、旗揚げ公演の作品ですが、どんな内容になりそうですか。
「ある3姉妹を軸として、玉の輿・一攫千金を狙う女たちの七転八倒ドラマというか。『ちむどんどん』では品行方正な3姉妹を描きましたが、その真逆をいってみようかと思っています」
―――どんな作品になるか期待が膨らみますね。それはきっとファンの皆さんも同じだと思いますが、羽原さんからのメッセージを頂けますか。
「お客さんにも我々にとっても楽しい芝居をワクワク創れる仲閒を集めました。いつも考えていることですが、観に来てくれるお客さんが元気になってもらえるような芝居作りを心がけています。必ず元気が出ると思いますのでぜひ劇場にお越し下さい」
(取材・文&撮影:渡部晋也)
プロフィール
羽原大介(はばら・だいすけ)
鳥取県出身。日本大学芸術学部文芸学科を卒業後、芸能プロダクションでタレントのマネージャーとなる。その頃出会ったつかこうへいに誘われ、つかこうへい事務所で運転手や裏方として働く。その後、制作会社に就職。Vシネマや低予算ドラマの脚本を書き始める。1992年に脚本家としてデビュー。日本アカデミー賞優秀脚本賞では2006年に『パッチギ!』が優秀賞、2007年には『フラガール』が最優秀賞を受賞(共に共同脚本)。一方で2001年に新宿芸能社(後に昭和芸能舎に改名)を旗揚げ。2020年の解散までに29回の公演を打った。
公演情報
羽原組 旗揚げ公演
『DOWNTOWN STORY』
日:2022年9月13日(火)~19日(月・祝)
場:赤坂RED/THEATER
料:4,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.team-habara.com
問:羽原組
mail:team.habara@gmail.com