郊外の一軒家。独居老人の元に事情を抱えた孫がやってくる 10年前、外部に書き下ろした作品を劇団として紡ぎなおす

郊外の一軒家。独居老人の元に事情を抱えた孫がやってくる 10年前、外部に書き下ろした作品を劇団として紡ぎなおす

 劇作家・演出家の田村孝裕、俳優の恩田隆一ほか、舞台芸術学院47期卒業生により旗揚げされた劇団「ONEOR8」。次回公演『連結の子』は、もともと田村が文学座のために書き下ろし、第56回岸田國士戯曲賞の最終候補に残った作品だ。それを10年経った今、劇団でやってみようと思ったのは何故なのか。

田村「コロナ禍で演劇活動がストップしたときに、劇団公演以外に書いた台本を期間限定で無料公開しました。そのとき10年ぶりにこの戯曲を読み直しました。この作品は岸田國士戯曲賞もダメだったし、文学座で再演の話も出ていないから、僕にとっての黒歴史だったのが、読み直したら面白かった。登場
人物が抱える生きづらさは、今でも通用する気がした。そこで自分の演出で尻拭いをしたくなりました」

恩田「読み直したら面白いし、ちょうど作品を探していたところだったので、良いタイミングでもありました。登場人物がおじいちゃんと少年が軸になるので、まず僕ら劇団員ができる役を当てはめて、そこから客演のみなさんにお願いしていきました」

 昭和を感じさせる一軒家に暮らす独居老人のところに、刑務所から出てきた孫が同居して……、という物語。軸となるおじいちゃんを演じるために招かれたのは、数多のドラマ・映画・舞台で活躍してきたベテラン、高橋長英。

高橋「今回みなさんとは初めましてですけれど、田村さんの作品は何本も拝見してきました。登場する人物それぞれが各自の世界でそれなりに、それぞれの役割を背負って出てくる。だから誰に注目しても光って見えるという、そんなところが面白いですね」

 さらに近年注目を集めている俳優・竹井亮介が重要な役まわりで出演する。

竹井「劇団の作品は何本か拝見してますが、どれも面白くて、出てみたくなる作品ばかりでした。でも僕は長いことコントやコメディを中心にしていたので、オファーがあるとは思わなかった(笑)。だから声が掛かって食いついた感じです」

田村「おふたりとも即決した感じです。罪を犯した孫を受け入れるおじいちゃんの懐の深さ。その点ですぐ高橋さんが浮かんだし。竹井さんは劇団員の間で名前はずいぶん前からよく挙がっていました」

 ちなみに『連結の子』というタイトルは、家族がみんな鉄道マニアというところに由来するという。静かな中で丁寧に紡ぎあげる家族の物語が蘇ろうとしている。

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

祝日が1日もない6月。好きな祝日を作れるとしたら、“何の日“を作りますか?

田村孝裕さん
「6月30日“折り返しの日”。私には曜日の感覚が全くありません。土日祝日に関係なく、稽古や本番があるからだと思います。曜日感覚がないと、日にちや月の感覚も曖昧になってくる。すると肌寒くなってきた10月頃に『もう1年が終わるの?!』と月日の早さに驚かされるのです。これが毎年のこと。10月に驚くのはもううんざりなので、“折り返しの日”で心の準備ができたらと思います」

恩田隆一さん
「泥酔の日。降り続く雨と競い、長く酒を呑み続ける日。雨が止むのが先か、自分が病むのが先か下半期の運試しも含めて競います。とにかく日頃の家事などを放り投げて、ただただダラダラ飲み続ける日。結果、翌日雨に勝利したのかどうかの記憶があるか否かが問題ですが……」

高橋長英さん
「“完全休養の日”。祝日は元々いらないと思っています。特にゴールデンウィーク後の6月にはもう祝日はいらないと思いますが、ただただボーッとしてダラダラと過ごす一日、完全休養日ならあっても良いかと思います。何もしないでいるのは難しいですが、贅沢な一日になります」

竹井亮介さん
「6月は梅雨の時期にあたります。現在、平年の梅雨入りは6月7日なのだそうです。実はこの日は、なんと私の誕生日!なので、大変恐縮ですが、“竹井亮介誕生日”という祝日はいかがでしょう。すみません! 即撤回します! でもやはり梅雨にまつわるものがいいのではないかと思います。“海の日”や“山の日”だってできたくらいですから、梅雨の6月には、“雨の日”なんていうのが、いいのではないでしょうか。全ての6月生まれの人のため、“雨の日”を制定してほしいものです」

プロフィール

田村孝裕( たむら・たかひろ)
東京都出身。1998年「ONEOR8」旗揚げ以来、作家・演出家として劇団の全作品を手掛ける。その他様々なジャンルの外部公演に脚本を提供。本作を含め『絶滅のトリ』、『世界は嘘で出来ている』の3 作品が岸田國士戯曲賞候補となる。また、『世界は嘘で出来ている』は鶴屋南北戯曲賞候補にもなった。

恩田隆一(おんだ・りゅういち)
東京都出身。舞台芸術学院の同期生と劇団「ONEOR8」を旗揚げ。2007年より劇団の座長となる。下町気質で人情味に溢れる役を演じることが多い。劇団公演以外にも多数の客演を経験。

高橋長英(たかはし・ちょうえい)
神奈川県出身。ドラマや映画、それも現代劇から時代劇まで幅広く出演し、作品を支える名脇役として活躍。舞台出演も多く、2015年のトム・プロジェクトプロデュース『Sweet Home スィートホーム』では、第50回紀伊國屋演劇賞 個人賞を受賞。

竹井亮介(たけい・りょうすけ)
神奈川県出身。1999年に嶋村太一、野間口徹とコントユニット「親族代表」を結成。その他、元「ラーメンズ」小林賢太郎によるコント番組「小林賢太郎テレビ」や小林がプロデュースする諸作品にも多数出演。

公演情報

ONEOR8『連結の子』

日:2022年6月30日(木)~7月10日(日)
場:すみだパークシアター倉
料:4,000円(全席自由・税込)
HP:https://wp.oneor8.net/
問:ONEOR8 tel.080-6577-1399

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