コメディ×演劇×ダンス=“ブルプリ”! 水族館に生きる「魚類」の物語

コメディ×演劇×ダンス=“ブルプリ”! 水族館に生きる「魚類」の物語

 多くの有名アーティストの振付を手がける振付師のJUNを中心に、2012年に結成された“ブルプリ”こと「Blue Print」。コメディ作品に、クオリティーの高いダンスパフォーマンスを取り入れた総合エンターテインメント作品を創作してきた。これまで奇想天外な題材に挑戦してきたが、今回挑むのは「魚類」! 2018年公演の続編として、水族館に生きる魚類の物語を全力でお届けする。主宰のJUN、脚本・演出を手がける劇団SETのおおたけこういち、パフォーマーのATSUSHIの3人に話を聞いた。


―――今回の『BASHAAAAAAAN!!-THE WORLD OF AQUARIUM-』は、2018年公演の再演ではなく、続編ということですね?

おおたけ「はい、続編になります。この『BASHAAAAAAAN!!』という舞台は、とある家の水槽の中の魚をテーマにした話です。福島県内の家で、震災に巻き込まれるも、無事助かるという話だったのですが、今回は、奇跡の生還を果たした魚として、東京の水族館に招かれるという設定にしました。

前作に引き続きカクレクマノミが主人公で、水族館の魚たちと色々巻き起こすコメディ作品。初めて観ていただく方でも十分楽しめるような内容にしたいと思っています。」

―――続編の構想は初演の時からあったのですか?

おおたけ「全くありませんでした。もともと全く違う内容の企画を考えていたのですが、このコロナ禍で、色々と考えまして。

昨夏、『TORI STORY』という鳥の話をやりました。今できることをやりたいという思いから、マスクの代わりにクチバシをつけて、作品を作ったんですね。今年も昨年とそんなに状況は変わっておらず、お客様が純粋に100%生の舞台を楽しめるような状況ではないような気がしていて、安全性を第一に考えようと思って。どうしたら良いかなと思った時に、アクリル板やビニールシートを活用してはどうかなと思いつきました。

まだ検討段階ですけど、アクリル板やビニールシートを水槽に見立てたら……というところから、あ、うちらには「魚」があると思って(笑)。2018年の初演をそのまま再演するよりも、震災から10年ですし、続編という形にしたらどうかなと思いまして。」

―――それで舞台が「家の水槽」から「水族館」へと。

おおたけ「はい。僕は福島県出身なので、身近にいるんですけど、故郷を離れて東京で暮らしていたり、避難生活を続けていたりしている人も多いんですね。魚も実はそういう状況があって。それをヒントにストーリーを書けないかなと思って、いま脚本を執筆している最中です。」

―――続編の構想を聞いた時、JUNさんとATSUSHIさんはどう思われましたか?

JUN「Blue Print結成10周年ということで、本当は今までのキャラクターを出して、お祭りのようなことをしようと考えていたんですが、コロナ禍でそれが難しいなと判断しました。おおたけとは、コロナ禍になる前からずっと、この『BASHAAAAAAAN!!』を再演したいと言っていて、再演を福島県いわき市でやれたらいいなと話していたんですけどね。

本当は去年の『TORI STORY』も別の企画を考えていたのですが、コロナ禍だからこそということで、急遽企画を切り替えた。マスクをつけて舞台をやるなんて、今考えると、Blue Printが最速だったのではないでしょうか(笑)」

おおたけ「大変な状況の中で、キャストだけではなく、スタッフ、制作も含めて、より舞台に懸ける熱い思いを感じましたよね。配信もおこなったのですが、そういう試みが早い段階でフットワーク軽くできたのは、ブルプリだからかなと思います。」

ATSUSHI「僕は魚だろうが、鳥だろうが、なんでも良くて。おおたけが書いて、演出してくれることに、全面の信頼しているから。10年前に初めてブルプリで芝居をやらせてもらって、以来、グループの一番の笑わせ役というか、飛び道具みたいな感じでやってきているんですけど、僕を面白く使ってくれるのは、この人しかいないと思っています。」

JUN「去年、彼は他の舞台と被っていたので、ブルプリの出演予定はなかったんですよ。だけど、予定していた舞台がコロナで舞台ができなくなっちゃって、急遽ブルプリに出られることになったんですよ。」

ATSUSHI「本番1週間前に現場に入ったんです。」

JUN「あまりに直前で、マイクも用意できないから、喋れない。なら、学芸会のように、太陽とか雲とかそういう役をやってもらおうと(笑)。それが結果面白かったよね。」

ATSUSHI「おいしいところを全部もっていきました(笑)。おおたけが僕のことを引き出してくれるんです。この人が書いて、演出してくれれば、僕はなんでも良いんです。今回も楽しみですね。」

おおたけ「あっくん(ATSUSHI)がどういう風なキャラクターだったら面白いか、僕自身も楽しみながら書いています。ただ、今回は初参加の方もいらっしゃって、まずはゲストの皆さんを輝かせないといけない。あっくんは去年、太陽を演じて、自ら輝くことを知ったと思うので、今度は自分で輝けるようになってほしいですね(笑)」

―――最後に観劇を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします!

ATSUSHI「ブルプリの公演は、本当に今まで面白くなかったことが1回もないです。僕は普段ダンサーで、舞台の宣伝をさせてもらう人は大抵ダンサーかダンスの生徒で、あまり芝居を見慣れていない人が多いんですね。ダンスの先生の僕しか知らない人にとっては、きっとびっくりすると思うから、ぜひ観に来てと言うんですけど、なかなか足が向かない。

でも、1回勇気を出して観に来てくれた人は『すごく面白かったです。また行きます』と言ってくれて、2回3回とリピーターになってくれるんですよね。だから、まだブルプリを観たことがない人にぜひ一度観てもらいたい。そして、こんな団体がいたんだということを知ってほしいです。」

おおたけ「まずは、期限までに脚本書きますということが一番なんですけど……(笑)。僕はずっとコメディが好きなので、お客さんに楽しんでいただけるような作品、笑ってもらえるような作品を作りたいなと思っていて。今回も盛り沢山な内容にしようとは思っています。

こういう時代だけれども、僕はこれからも劇場という空間で、一緒に笑って、楽しみたいんですよね。みんなで一つになれるような作品を目指して頑張ります。」

JUN「まず、僕はこの歳までこういうことができていることが嬉しいし、感謝をしているんですね。もちろんメンバーにも、スタッフにも、そして、お客さんにも。舞台は、俺たちだけではできなくて、お客さんがいてこそ完成するものだと思っているんですよ。

10年もやっていると、僕らより、ファンの人たちの方が作品について詳しく覚えていてくれるんですよ。それって、すごいことだと思うんです。一人ひとりの中に、僕たちの作品や僕たち自身が入り込んで、楽しい思い出として残っているわけだから。
言ってしまえば、たかが1000人、2000人ぐらいしか一つの公演を観ていないし、DVDを販売しているわけでもない。それでも、ファンの心の中には僕らがいる。それはすごいなと思っていて。

10周年という思いもありますけど、まぁ、今のペースで、テキトーに、一笑懸命やろうかなと思います。長く愛されるような団体でいられたら幸せです。」


(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

おおたけこういち
1981年7月14日生まれ、福島県出身。
2000年、劇団SET全国7大都市オーディション準グランプリ受賞後、劇団スーパー・エキセントリック・シアター入団。役者としてドラマ・映画に出演する傍ら、劇団SETの振付師でもあるJUNに従事し、ダンスのスキルを磨く。劇団SET公演では三宅裕司、小倉久寛とともにメインキャストを務め、次世代のSETを担う人材として期待されている。波岡一喜、福士誠治、斎藤工と結成した演劇ユニット「乱〜Run〜」にも所属し、SET以外での活動も積極的に行っている。2010年には劇団SETの後輩である小暮邦明と共に振付ユニット「大小」を結成し、NHK歌謡コンサートなどメディア、舞台の振付師としても活動中。

JUN(じゅん)
1965年4月16日生まれ、福島県出身。
1989年ダンサーとして本格的な活動を開始。フジテレビ系「DANCE!DANCE!DANCE!」“MEGA-MIX”としてレギュラー及びゲスト出演。1992年、LAへダンス留学。米TB「SOUL TRAIN」など、現地のメディアにダンサーとして多数出演。1993年、カポエイラ修得のためブラジル留学。その後再びLAにて数々のダンスイベントに出演する傍ら、ジャズ、HIPHOP、HOUSEなど、オールジャンルのダンスを修得。帰国後、日本に初めてカポエイラを伝承し「CAPOEIRA JAPON」を発足。SMAP、SPEED、倖田來未など有名アーティスト、テレビ「SMAP×SMAP」「笑っていいとも」や劇団SETなど演劇公演の振付を手がける。プレーヤーとして数多くのメディア、舞台に出演。2012年、自らの呼びかけでBlue Printを結成し、主宰を務める。全公演のパフォーマンスを監修。ダンスで心情を巧みに表現し、演技では年長者特有のとぼけた空気感の役柄で、観客の笑いを誘っている。

ATSUSHI(あつし)
1981年9月11日生まれ、沖縄県出身。
1997年、沖縄アクターズスクール入学。ボーカル&ダンスを学び、同校のトップグループB.B.WAVESの一員として日本武道館コンサートに出演。1999年の上京をきっかけにストリートダンスに目覚め、2003年にダンスチーム「AFROISM」を結成。数々のダンスコンテストやダンスバトルで好成績を収め、日本テレビ「少年チャンプル」番組出演。年間を通して都内、地方で数多くのダンスイベントのショーに出演し、メジャーからアンダーグラウンドまで垣根を越えて活躍の場を広げている。Blue Printではエキセントリックな動きと演技で個性的なキャラクターを演じている。

公演情報

Blue Print Vol.11 10th Anniversary
『BASHAAAAAAAN!! -THE WORLD OF AQUARIUM-』

日:2021年7月14日(水)~18日(日) 
場:俳優座劇場
料:前売6,500円
  当日6,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.blueprint-bp.com/home
問:Blue Print mail:info@blueprint-bp.com

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