人生を味わいつくしたフリーダに1mm でも近づくために 初演よりも、より濃密な、熱い夏を過ごしたい

人生を味わいつくしたフリーダに1mm でも近づくために 初演よりも、より濃密な、熱い夏を過ごしたい

 2019 年夏に上演した、ミュージカル『フリーダ・カーロ―折れた支柱―』が3年ぶりに再演されることが決定した。初演ではピアノとギターだった楽器編成に、今回は弦が加わり、アレンジを変更。さらに作曲の小澤時史が演奏することで、音楽の濃度が上がることに期待が高まる。
 初演に続き、メキシコを代表する女流画家 フリーダ・カーロを演じる彩吹真央が、意気込みを語ってくれた。

彩吹「演じることに正解はないけれど、フリーダは演じることを追求させてくれた。濃密な夏だった。今年はさらに熱い夏を過ごせるはず。池袋をメキシコにしたい」

 実在の人物を描くことについて、作・演出の上田一豪はこう語る。

上田「自分で自分の気持ちがわからないように、実在の人物とはいえ彼女のことは誰にもわからない。僕たちなりの答えを一生懸命考えていきたい」

 舞台上にはフリーダの人生と重なる数々の絵が登場する。これらは本物の絵の大きさや素材を1つずつ調べながら忠実に、誠実に作っているそうだ。また、彩吹は初演時にメキシコへと渡ったという。

彩吹「私が見た景色をフリーダも見ていたという自信ができた。フリーダの人生には大変なことが多く、劇中には目を覆いたくなるシーンもある。私の母も初演を観た後に『かわいそうで、痛そうで、抱きしめてあげたかった』と言っていた。それが彼女の人生です。人として、女として、とても楽しみつつ苦しみつつ生きた人。
 初演を振り返ると、フリーダが一生懸命生きた様に近づきたいがために、私自身が一生懸命に生きていました。実在の彼女に1mmでも近づくためには、自分も命を懸けて演じなきゃと思ったんです。フリーダが心の傷を負った時に、どう感じ、どれほど傷ついたのか……。彼女の心の内をもっと深めていきたい。敬意を表して演じたいです」

 それほどまでにふたりが真摯に向き合おうとするフリーダとは、どんな人だったのか。初演を経ての印象を聞くと。

上田「フリーダといえば、やはり渇望です。彼女は痛みを知っているからこそ、絶対に諦めずに自分の人生を味わいつくそうとした。そして最後に、自分の人生を肯定したんだと僕は思う」

彩吹「飢餓感が彼女の魅力。人間としての満たされない部分だけでなく、女性としての満たされない部分も香ったらいいな。フリーダ・カーロというひとりの女性を、ぜひ知ってほしいです」

(取材・文:河野桃子 撮影:間野真由美)

祝日が1日もない6月。好きな祝日を作れるとしたら、“何の日“を作りますか?

彩吹真央さん
「誠に僭越ではございますが、私の誕生日である6月9日を祝日とさせていただきます。“ロックの日”でもありますので、この日は音楽だけでなく、ファッションや考え方等も自由にロックに表現する日として、国民が笑顔で賑やかに過ごす日になれば、私としては幸せです……」

上田一豪さん
「“家族の日”ってのがあったらいいなと思います。あんまりカレンダーに左右されることがない職業なので、本当に家族には負担ばかりかけています。たまには家族で丸一日過ごす日があってもいいなぁと思うのです。この日は絶対に家族と過ごさないと罰金とか!」

プロフィール

彩吹真央(あやぶき・まお)
6 月9 日生まれ、大阪府出身。1994 年宝塚歌劇団に入団。繊細な演技力と豊かな歌唱力を持つ男役スターとして活躍。退団後の主な出演作に、ミュージカル『シラノ』、『End of the RAINBOW』、『マリー・アントワネット』、舞台『アドルフに告ぐ』、こまつ座『イヌの仇討』、朗読劇『ラヴ・レターズ~ 2021 WINTER Special ~』など、ジャンルを問わず多数出演。作品ごとに幅広いキャラクターを演じ分ける。

上田一豪(うえだ・いっこう)
8月18日生まれ、熊本県出身。東宝演劇部所属。演出家としてミュージカル『四月は君の嘘』、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、『ラヴズ・レイバーズ・ロスト ―恋の骨折り損―』、『笑う男』、『オン・ユア・フィート!』、『ネクスト・トゥ・ノーマル』、『キューティ・ブロンド』、『グリース』、舞台『いまを生きる』などを手がける。

公演情報

Tip Tap ミュージカル『フリーダ・カーロ ―折れた支柱―』

日:2022年6月30日(木)~7月3日(日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:9,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.tiptap.jp/
問:TipTap mail:tiptap0153@gmail.com

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