昨年の『アリスインデッドリースクール永遠』が新型コロナ感染症の影響でほんの3日間で公演中止という悔しい結果になってから1年と数ヶ月。まだ状況は混迷の中とはいえ、このまま劇場の灯を消すわけにはいかないというスタッフや俳優たちの気持ちが背中を押して、この作品が継続することになった。もちろん中止になった公演のキャストそのままにリベンジする手もあっただろうが、『アリスインデッドリースクール 邂逅』と題された今回の公演では、演出に細川博司を迎えて一新したキャストで挑むこととなった。しかも今回は全てシングルキャストというところに、制作側の覚悟が伝わってくる。W主演となる蛭田愛梨、桜井美里。そして昨年の中断を乗り越え、今回は生徒会長の青池和馬役に挑む平瀬美里。タカラジェンヌからガールズ演劇に挑むゆめ真音に話を聞く。
―――――昨年の公演中断を乗り越えての今回の公演となります。皆さんの意気込みをまず聞かせてください。
蛭田「私はこれが初舞台になるんです。まだ演技経験も浅いので緊張していますが、皆さんと良い作品にできるように頑張りたいです」
桜井「私も2回目の舞台で、しかも前回はショートストーリーなので、本格的な舞台は今回が初めてと言ってもいいですね。まだ不安がいっぱいですが、本番までに頑張って役になりきれればいいなと思っています」
平瀬「前回の公演が3回目で終わってしまい凄く悔しい思いをしました。でもこの作品が大好きなので、是非参加したいと思っていたんです。でも今回は生徒会長の青池和磨なので少し大人なイメージになりますね。人生で経験したことがないリーダーの役ですから、新しい平瀬を見てもらえるように頑張ります」
ゆめ「紅島弓矢役ということで、金髪、ミニスカ、タバコ、金属バット、ヤンキー……と凄いキャラクターで(笑)。しかも『高校生? しかも男子じゃなくて女子?』と正直驚きました。そんなわけで、全くの新境地なのでどんな自分に出会えるかそわそわしています。でも決まったら周りの皆さんから羨ましがられたんですね。そうやって歴代の先輩方が育ててきたこの役に挑戦できるのは光栄ですね」
―――――W主演となるお2人は現在高校3年生。つまりリアル女子高生が等身大で演じる訳ですねプレッシャーはありますか。
蛭田「もちろんプレッシャーはありますが、相方となる桜井さんが同学年なので少し気が楽になりました。うまいコンビ芸が見せられたら良いなと思います」
桜井「まさか自分が主演とは思っていなかったので、プレッシャーは相当なものですが、愛梨ちゃんとは気が合いそうだし、良いコンビになりそうだと思っているんです」
―――――平瀬さんは昨年の舞台でW主演の片方、優役でした。今回は生徒会長ということで、蛭田さんや桜井さんに先輩風を吹かせているんじゃないですか?
「そんなもの無いですよ(笑)。私だって舞台はまだ4本目ですからね。でも昨年の公演の時はもう意味わからないくらいに緊張していました。私、目があんまり良くないので、暗い舞台でスタンバイしているときなんか何も見えなくて凄く孤独なんです。アイドル時代は仲間の顔を見て『さぁ、頑張ろう!』ってやれるじゃないですか。それが1人だと心細いし不安だし。しかもシングルキャストだから風邪も引けないしコロナにもなれない(笑)。台詞も膨大で、それが飛んだら終わりだと思うと不安ばかりで。でも稽古を通して皆と仲良くなって、最後にキャストが解散するときはとても名残惜しかったですね」
ゆめ「この前の舞台(『ワタシタチのキョリ』)が16人の密室劇でして、さらに今回も屋上に閉じ込められる……もう半年間も女の子ばかりで閉じ込められているんですよ(笑)。これまで私を観てきたお客様にとって、今回はビジュアルからして初めてのキャラクターなので、ビックリされるでしょうし、それを受け入れていただけるかが楽しみです。そして私はメンバーの中でも年上なので、カンパニーの中でも引っ張っていく側になれれば良いなと思ってます。最初は不安だったのが、この格好をしてみたらスイッチが入ってテンション上がっています」
―――――平瀬さん以外は『アリスインデッドリースクール』初体験というわけですが、もしも物語のように屋上に閉じ込められたら、皆さんどうしますか?
蛭田「もう1人だとなにもできないタイプなんです。だからまず他に誰かいないか探しますね。それでも1人なら空見あげて寝転がっていると思います(笑)」
桜井「私は1人でも平気なタイプですね。そうはいっても大声で叫んで助けを求めるか、脱出方法を考えるでしょうね」
平瀬「まずスマホで脱出する方法を調べます。それがダメなら屋上で生き延びる方法を考えますね。食べられる雑草がないかとか(笑)」
―――――ネットが通じていることは前提なんですね。
平瀬「ハイ(笑)」
ゆめ「実は私、ホラーが本当にダメなんです。そういった映画やドラマを観るのも、小説も絶対ダメ。だから立ち向かうなんて考えられません。だから閉じ込められる恐怖より、そこにゾンビが上がってくるかも知れないということが恐怖です。だから平瀬さんじゃないですが、ネットで上がってこない方法を探ります。でも他に誰かがいれば何とかなりますから、皆で解決策を考えますね」
―――――ではもう1つ。この物語は「お笑い」がキーワードですが、皆さん「お笑い」お好きですか?
平瀬「あんまり詳しくはないんです。友だちから教えてもらった映像を観るくらいです」
桜井「お笑い番組が好きですね。チョコレートプラネットさんが出ている『新しいカギ』(フジテレビ系)とかを毎週観るのが楽しみです」
平瀬「最近はテレビを観なくなっているんです。昔は『エンタの神様』とか『M-1グランプリ」』とかも観ていたんですが、最近はスマホでTikTokとかばかりです。でも大阪に行ったときには吉本新喜劇を観に行きました」
ゆめ「これなら私も語れますね(笑)。昔テレビでやっていた『笑う犬の冒険』(フジテレビ系)が大好きでした。最近だとお笑いコンビ・しゃかりきさんの光ママが好きで。もちろんダウンタウンさん、とんねるずさん、さまぁ〜ずさんとかの王道も好きだし。あとロバート秋山さんのクリエーターズファイルは凄く好きですね」
3人「それは私も好きー(笑)」
―――――では皆さんや作品のファンの皆さんにメッセージをもらえますか。
ゆめ「まだ世の中は落ち着きませんが、この作品を観て、明日もう1日やってやるぞと思える熱気を送りたいと思います。舞台からは演じる側も観る側も得られるものがきっとあると思います。だからこそ、この秋にはエンターテインメントに触れて欲しいと思ってます」
平瀬「さっきも言いましたけど、私はこの作品が本当に好きで、愛している作品です。だからこそ沢山の人に知ってほしいし、観てほしいと思ってます。そして私を応援してくれている人には、役が変わることによる成長を観てほしいと思います。是非劇場にいらしてください」
桜井「世の中がこんな状況ですが、この作品が皆さんの少しでも救いになれば良いと思います。観終わった後に仕事や学校を明日また頑張ろうと思っていただくとか。さらに作品を通して私達のことも知ってもらいたいです」
蛭田「今はまだ直接劇場に来るのを躊躇される方もいらっしゃるとは思いますが、劇場においでいただければ『やっぱり来て良かったな』と思っていただけるよう、精一杯頑張りたいと思います」
(取材・文:渡部晋也 撮影:安藤史紘)
プロフィール
蛭田愛梨(ひるた・あいり)
東京都出身。アイドルグループ「虹のコンキスタドール」の最年少メンバーとして活動。テレビ東京系ドラマ『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』に出演。週刊プレイボーイ・週刊ヤングマガジンに掲載されるなど、幅広く活動中。
桜井美里(さくらい・みさと)
埼玉県出身。幼稚園時代からキッズモデルとしてCMや雑誌などに登場し、小学5年生からアイドルグループのメンバーとして活躍。2015年にスカウトされてスターダスト・プロモーションに所属。桜エビ〜ずの結成メンバーとなる。グループとして2018年6月から12ヶ月連続で新曲を発表するなど積極的な活動を展開。2019年にはグループ名をukkaに改名するが翌年末に卒業。2021年には初舞台を踏んだ。
平瀬美里(ひらせ・みさと)
2011年にスターダストプロモーションに所属。みにちあ☆ベアーズ、3Bjuniorを経て、2016年ロッカジャポニカとしてキングレコードからメジャーデビュー。 ロッカジャポニカの活動終了後はB.O.L.Tに加入、2019年11月脱退。昨年の『アリスインデッドリースクール 永遠』では主役の墨尾優役に挑むも、3回で公演中止となった。
ゆめ真音(ゆめ・まおと)
熊本県出身。音楽家の両親の影響で幼少期から様々な舞台芸術に触れ、15歳で宝塚の受験を決意し、熊本と東京を毎週往復しレッスンに通うが宝塚音楽学校には二度の不合格。これがラストチャンスと上京し、2012年に100期生として宝塚音楽学校に合格。2014年に宝塚歌劇団に入団して雪組の男役として活躍。7年の間、年間200本を超える舞台に立つ。2021年4月に退団した後は、女優、歌手として活動を展開している。
公演情報
舞台『アリスインデッドリースクール 邂逅』
日:2021年9月8日 (水) ~12日 (日)
場:新宿村LIVE
料:S席8,000円 A席6,500円(全席指定・税込)
HP:http://alicein.info
問:アリスインプロジェクト
mail:office@alicein.info