中島庸介率いるキ上の空論が1年2ヶ月ぶりの新作『朱の人』を初の下北沢 本多劇場にて上演することが発表された。舞台は1999年、底抜けに明るく無敵だった中学2年生の兄。けれど高校で演劇に出会い次第に兄は壊れていく……。
「主人公は僕と同い年。僕自身の物語ではないけれど、僕が東京に出てきて体験したこと、見てきた風景は脚本に反映されていると思います。今回、僕の中でテーマにしている1つが表現者のエゴ。人の死ってよく舞台の題材にされるけど、軽々と扱っていいものだろうかという疑問がずっとあって、それをここで書いてみようと考えました」
主演は村田充と藤原祐規の2人。ともに壊れていく“兄”を演じるという。
「村田さんとは以前からご一緒したかった。5年ほど前からオファーしていて今回ようやく叶いました。藤原さんは何度もご一緒していますが、自分を曝け出せる役者さん。2 人は同一人物で、自信満々で明るかった頃の兄を藤原さんが、上京して変化していった兄を村田さんに演じてもらいます」
2人を取り巻くキャストも個性派揃い。本作のためにオーディションで8名の役者を選んでいる。
「選ぶ基準はマンパワーがあるかどうか。ある意味素人でもよくて、スキルは気にしません。僕の芝居ではキャラクターを演じるのではなく、なるべく素でいてほしい。稽古では“自分がこの人物の立場だったらどのように台詞を吐きますか”と伝えます。その立場になったとき泣けるなら泣いてもらうし、泣けないなら泣かない芝居に演出を変える。役者に投げる部分が多いので、演じ手にはやり甲斐があるのではないでしょうか(笑)」
では作り手のやり甲斐とはなにか? 作者としてのこだわりを聞いた。
「こうしたらお客さんはこの作品を嫌いになるだろうな、ということをあえて書いたりしています(笑)。“不快”というのもひとつのエンタメだと思っていて、肝心なのはそこで観た人が思惑通り受け止めてくれたかどうか。でも今回は“不快”は描くつもりはなく、純粋な気持ちで取り組んでいます。演劇界の実情をあけすけに描いているので、シンプルに面白がってもらえたらいいですね」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:間野真由美)
昼くらいから、10人くらいで、みんなで集まって飲む。大笑いしながら、乾杯したり、肩組んだり、自分が飲んでるお酒を、一口飲む?って、友達に渡したりしたい。夜遅くなって、周りが暗くて見えなくなっても、『暗っ』とか『寒っ』とか言って、それでもそのままダラダラ過ごす。数年前当たり前にやってた事が、今は理想のプランです。
プロフィール
中島庸介(なかしま・ようすけ)
岐阜県出身。劇作家・プロデューサー。「キ上の空論」主宰。18歳から独学で演劇を学び、岐阜・名古屋で活動。2009年東京進出と同時に演劇ユニット「リジッター企画」の作家・演出家として活動開始。2013年に個人ユニット「キ上の空論」を旗揚げ。全作品の脚本・演出を手掛ける。言葉遊びや韻踏み、擬音の羅列や呼吸の強弱、近年では若者言葉や方言など、会話から不意に生まれる特有のリズム〈音楽的言語〉を手法に“ ありそうでなさそうな日常” を綴る。
公演情報
キ上の空論 #15 朱の人
日:2022年4月13日(水)~17日(日)
場:下北沢 本多劇場
料:一般6,700円 U-25割[25歳以下]4,500円(全席指定・税込)
HP:http://kijyooo2013.com/shunohito/
問:LUCKUP tel.03-6770-3628(平日10:00〜18:00)