
人気、実力ともにトップクラスのヴァイオリニストとして精力的な活動を続ける川井郁子が、デビューから20年の節目を祝うステージ『月に抱かれた日・序章&コンサート ~ガラシャとマリー・アントワネット~』を上演する。これまでもハイセンスな感覚で挑んだ革新的なステージを披露してきた川井だが、音楽舞台のパートでは戦国の世に生き、儚く散った細川ガラシャと、フランス革命の中で散ったマリー・アントワネットを繋ぐ物語を披露する。
「細川ガラシャは日本の歴史上、自分の意思をはっきり主張した女性。凄い強さを感じますし、キリシタンだということで音楽的にも西洋と東洋の要素を織り込めると思いました。そんな中、細川護熙さんからガラシャとマリー・アントワネットとの繋がりを教えていただきました。そこでマリーの心情も加えたいと思ったのです」
ガラシャを東洋の殉教者と捉えた宣教師達は、彼女を題材に音楽付きの戯曲を作って披露。当時の王侯貴族に好まれたという。そして幼きマリー・アントワネットも母親たちと共にその作品を観劇していたそうだ。そんな東洋と西洋を繋ぐ縁の表現に、川井は能楽師の津村禮次郎、笛の藤舎推峰をはじめ一流の演奏家を揃えて挑む。
「テーマのひとつは “越境”です。西洋と日本の音楽。伝統芸能の能と最新の映像技術。それらが起こす化学反応を期待しています。能は凄く好きで、津村さんには私の魂を演じて頂きます。笛とはあまり機会が無かったのですが、推峰さんの笛の音色に感動してからのお付き合いです。今回は大事な役を担って頂きます」
そして音楽舞台では、ガラシャの子ども時代を愛娘の川井花音が、夫の忠興を直系の子孫である三井高聡が演じる。
「娘は初舞台になります。親馬鹿ですが楽しみの一つですね」
後半のコンサートでは5ステージそれぞれにゲストが登場。川井の演奏を華やかに彩るだろう。
「小西真奈美さんは普段から仲良しですが、ステージでの共演は初めて。秋川雅史さんはこれまでに何度かご一緒しています。他の皆さんは初共演ですが、皆さん素晴らしい表現者ばかりですからどうなるか楽しみです。音楽舞台ではお客様を非現実世界にお連れして、ここでは一転、存分に楽しめる時間にしたいと思います」
「自分自身ここまで大がかりな舞台は初めてだが、色々と欲張った」と笑う川井。予告映像で少しだけ観られるホログラムやプロジェクションマッピングなどをふんだんに使ったステージに期待は高まるばかりだ。常にオリジナリティを追い求めてきた20年の集大成ともいえるステージをしっかり目と耳に焼き付けたい。
(取材・文:渡部晋也)
プロフィール

川井郁子(かわい・いくこ)
川県出身。東京藝術大学、同大学院修了後、2000年にアルバム「The Red Violin」でデビュー。ヴァイオリン奏者として国内外の主要オーケストラをはじめ、指揮者チョン・ミョンフン、テノール歌手ホセ・カレーラスなど世界的音楽家たちと共演。ジャンルを超えた音楽世界を創り上げている。さらにバレエ・ダンサーのファルフ・ルジマトフや熊川哲也、フィギュアスケートの荒川静香らとも共演。大阪芸術大学にて後進の育成にも力を入れている。
公演情報

川井郁子デビュー20周年音楽舞台&コンサート
日:2021年12月10日(金)~12日(日)
場:新国立劇場 中劇場
料:9,000円(全席指定・税込)
HP:https://ikukokawai-unframed.com/
問:サンライズプロモーション東京
tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)
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