連続対談企画⑤『“演劇”のある生活』[8月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

連続対談企画⑤『“演劇”のある生活』[8月放送分] (BS松竹東急プロデューサー・湯浅敦士×カンフェティ編集長・吉田祥二)

第5回 無料放送局『BS松竹東急』 8月の演劇ラインナップをご紹介!

 BS松竹東急は、映画、歌舞伎、一般演劇などのエンターテインメントを通じて人々に感動を届けてきた松竹グループと、渋谷をはじめとした街づくりによって、人々の豊かな暮らしの基盤を構築してきた東急グループがコラボレーションして、今年3月26日開局した放送局。編成コンセプトに、『誰もが楽しめて親しみやすい歌舞伎や劇場文化』を掲げている。

 また演劇以外にも、映画、オリジナルドラマなど、あらゆるジャンルの番組を編成し放送する無料総合編成チャンネルとして、上質感やワクワク感をお届けするという…、なんとも謎に包まれた放送局である。

 この企画では、かねてより親交のあったBS松竹東急の湯浅プロデューサーを迎え、カンフェティ編集長の吉田とともにBS松竹東急のラインナップを紹介しながら、ざっくばらんと各々が思う演劇について月いちペースで語っていく、そういう対談企画である。

※過去回は下記リンク先にて公開中!
 (第1回)4月のラインナップ
 
(第2回)5月のラインナップ
 
(第3回)6月のラインナップ
 (第4回)7月のラインナップ

8月のラインナップはこちら!

土曜ゴールデンシアター
8月6日(土) 夜6時30分~「ライ王のテラス」
8月13日(土) 夏の特別企画 ノーカット版!テレビ初放送!2週連続「超歌舞伎」
         夜6時55分~ 超歌舞伎『當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』
         『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』(2019)
8月20日(土) 夏の特別企画 ノーカット版!テレビ初放送!2週連続「超歌舞伎」
         夜6時30分~ 超歌舞伎『都染戯場彩 (みやこぞめかぶきのいろどり)』
         『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』(2021)
8月27日(土) 夜7時~二兎社 「こんばんは、父さん」

週末ミライシアター
【演劇】 沖縄の劇団特集
 8月6日・20日(土) 深夜0時30分~劇艶おとな団「迷える9人の沖縄人」
 8月13日・27日(土) 深夜0時30分~脚本 新井章仁(劇団ビーチロック)「オジイチャンの物語」

【映画】
 8月7日・21日(日) 深夜0時30分~真夏のミステリー映画特集①
 8月14日・28日(日) 深夜0時30分~真夏のミステリー映画特集②

吉田「三島由紀夫最後の戯曲作品から、中村獅童さんと初音ミク主演の超歌舞伎、そして、沖縄演劇と、もう『演劇』という言葉でひとくくりにできない位の幅の広さですね。個人的には、地方公演もやっているので知ってる方も多いと思いますが、改めて二兎社さんの作品を全国の方々に見ていただけるのがとても嬉しいです。」

湯浅「それでは、まず土曜ゴールデンシアターからですね!」

吉田「よろしくお願いします!」

湯浅「8月6日には『ライ王のテラス』をお送りします。カンボジア最強の王として現代にも語り継がれる、ジャヤ・ヴァルマン七世王と、アンコール王朝の衰亡を背景に描いた壮大な物語です。三島由紀夫原作の戯曲を、宮本亜門さんが演出した話題です。」

吉田「宮本亜門さんといえば、ミュージカル、ストレートプレイからオペラ、歌舞伎まで、ジャンルを越える演出家として国内外でも活躍される日本を代表される演出家ですね。テレビのコメンテータとしても活躍されているので、舞台を知らない人でも、知っている方は多いと思います。余談ですが、私、小さい頃に姉に連れられて、宮本さんの演出家デビュー作『アイ・ガット・マーマン』を劇場で見たんです。原体験的に、今でも思い出に残っています。カンフェティでも何度かインタビューさせていただきましたが、情熱にあふれたとても魅力的な演出家さんです。」

湯浅「さらに鈴木亮平さん、倉科カナさん、中村中さん、吉沢亮さん…と錚々たる顔ぶれでもあります。」

吉田「鈴木亮平さんの肉体美もすごいですね!」

湯浅「そして、8月13日、20日は2週連続で超歌舞伎をノーカット、テレビ初放送!でお送りします。」

吉田「超歌舞伎はひとことで表すと、伝統芸能の『歌舞伎』と、最先端技術『ボーカロイド』が融合した公演、ということになると思いますが、こんなことが成立するのか?と初めて聞いたときは度肝を抜かれました。ただ思ったのは歌舞伎って伝統芸能ではあるけど、その時その時の時代の今を映すことで在り続ける演劇だとも思うので、今流行っているものとコラボするって決して特別なことじゃない、とうなずける企画ですね。」

湯浅「実は僕が入社してからずっと編成したいと強く思っていた作品でもあります。2016年から始まった超歌舞伎ですが、2019年の超歌舞伎は初めて歌舞伎を演ずる劇場で公演されたこと、あとは舞台上から3階まで獅童さんと初音ミクさんが宙乗りしているところも見どころです。」

吉田「宙乗りって演者さんが舞台や観客席の宙を舞う、あの宙乗りですよね。初音ミクさんがどうやって宙乗りするんですか?」

湯浅「それは是非とも観て楽しんでください!そして翌週には、昨年上演された超歌舞伎を放送します。コロナの影響で1年越しの公演となったこともあり、獅童さんご自身も並々ならぬ思いを込めて演じられたとおっしゃっていました。」

吉田「それは見逃せませんね!」

湯浅「しかも今回はすべての演目をノーカット、テレビ初放送にてお届けします。」
※「今昔饗宴千本桜」は編集版の放送はあるが、ノーカット版は初放送。

吉田「なんと贅沢な!」

湯浅「繰り返しますが、学生時代から初音ミクの楽曲が好きで日々聞いていました。今回の演目でも使用されている『千本桜』や『ロミオとシンデレラ』はもちろんですが、特に『メルト』『ワールドイズマイン』『初音ミクの消失』は何度聞いたかわかりません!」

吉田「全部名曲ですよね。」

湯浅「そして今年も超歌舞伎2022の公演もあり!」

吉田「獅童さんの息子さん・小川陽喜さんが出演することでも話題の芝居ですよね!」

湯浅「はい、そちらも楽しみですが、テーマ曲が『初音ミクの消失』なんです。」

吉田「いつに増して語りますね。」

湯浅「ええ!今から本当楽しみです!そして、8月27日には二兎社『こんばんは、父さん』を放送します。」

吉田「二兎社は、劇作家・演出家の永井愛さんが主宰するプロデュース劇団です。もともとは1981年に、大石静と永井愛のお二人が設立した劇団で、ともに卯年生まれということから、劇団名を『二兎社(にとしゃ)』と付けたそうです。『言葉』や『習慣』『ジェンダー』『家族』『町』など、身近ではあるけど意識下に潜む問題を題材として、現実の生活に直結した作品が特徴です。これまで、読売演劇大賞や岸田國士戯曲賞など様々な賞を受賞され、また多くの作品が、外国語に翻訳・リーディング上演されています。個人的には、メディアと権力の関係を描いた『ザ・空気』シリーズが好きですね。」

湯浅「佐々木蔵之介さん、溝端淳平さん、平幹二朗さんという豪華な顔ぶれでおくる本作。ある夜、昔経営していた町工場がは廃屋になっているのを知った父(平幹二朗)が、身を隠すために忍び込むのですが…そこにはすでに先客がいて、というところから始まります。」

8月の週末ミライシアターでは沖縄の劇団を特集!

湯浅「8月の週末ミライシアターでは、沖縄の劇団を特集します。」

吉田「沖縄の劇団を観ることなんてなかなかできないから今から楽しみです!」

湯浅「まず、劇艶おとな団さんの『迷える9人の沖縄人』です。
本作は今年の沖縄で開催された、沖縄・復帰50年現代演劇集として上演された作品で、『12人の怒れる男たち』になぞらえて、本土復帰についての各立場からの意見を交わし合う会話劇になっています。」

吉田「1972年の沖縄の本土復帰を目前に、有識者から主婦、戦争を体験した老婆、沖縄へ移住した本土人などの9名がひとつの部屋に集められ、それぞれの立場や経験から沖縄に対する想い、日本への想いが語られる。当事者でしか分からない『本土復帰』の理想と現実。あらすじを読んだだけで、これは一日本人としてもぜひ観たいと思いました。」

湯浅「そしてもうひとつの作品が、新井章仁(劇団ビーチロック)さん脚本の『オジイチャンの物語』になります。沖縄出身の日本兵や沖縄2世の米国通訳兵、多角的な視点で沖縄戦を見つめ、世代を繋ぐ物語となっています。」

吉田「ハワイ沖縄県系2世の作家ジョン・シロタの小説の舞台化で、移民や戦争を巡る人間模様やアイデンティティーの葛藤を描いた作品ですね。おじいちゃんが孫娘に“あの日”の記憶を、世代を超えて伝えるという展開がとても素晴らしいですね。」

湯浅「今回は本土復帰50年でもあり、また終戦の月でもある8月に沖縄の“ミライ”のために活動する劇団の作品をお届けしようと思いました。」

吉田「沖縄は何度か訪れたことはありますが、一般的には観光地のイメージが強く、でも市街地から車で移動すると、あちこちに歴史の爪痕を感じますよね。でも、実際に昔沖縄で何があったかを深く知る日本人は決して多くなくて。今回の放送を通じて、時代や世代を超えて、いろんな方にとって沖縄について考えるきっかけになるといいですね。演劇ではないですが、カンフェティでも日比谷野外大音楽堂で開催される『琉球フェスティバル』を毎年取り扱いさせていただいていますが、今年は復帰50周年ということで、より特別なイベントになりそうです。年に一度の『日比谷が沖縄になる日』。興味のある方はぜひこちらにも足を運んでほしいです。※沖縄復帰50周年『琉球フェスティバル2022』

湯浅「そして毎週土曜には演劇を、日曜には映画をお届けしている週末ミライシアターですが、8月はミステリー映画作品をお送りします。」

吉田「ミステリーはどちらかというと好きな方ですが、あまりひとりでじっくり観るというタイプではないので、これを機に色々勉強したいと思います。」

湯浅「実は僕の好きな映画ジャンルはミステリーとホラーなんです!今回お送りする作品はきっとどれもこの先どうなるんだろう!と先の読めない展開を楽しんでいただけるのではと思っています。」

吉田「開局して5ヶ月のラインナップを観ていきましたが、本当に演劇のあらゆるジャンルを網羅しているように思います。まだ続きますかね?」

湯浅「9月にはまさかそこに?というようなジャンルが登場する予定です。」

吉田「楽しみにしています!」

プロフィール

●湯浅敦士(ゆあさ・あつし)
日本大学芸術学部演劇学科卒。他局を経て、2021年に松竹東急に入社。BS松竹東急の演劇編成、週末ミライシアターなどのプロデューサーを担当。プライベートでも舞台の脚本を手掛けるなど、演劇を愛する気持ちに満ちている。

●吉田祥二(よしだしょうじ)
シアター情報誌[カンフェティ]編集長。早稲田大学第一文学部卒。在学中に劇団を旗揚げし、以来約10年に渡って同劇団の主宰・脚本家・演出家を務める。2004年に「エンタテインメントを、もっと身近なものに。」を理念に掲げ、ロングランプランニング株式会社を起業。趣味は登山(縦走)。

【放送局】 BS松竹東急(BS260ch/総合編成無料放送)
【局公式Twitter】 @BS260_official

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