松田岳、田中尚輝、鐘ヶ江洸の原案作品を大塚雅史の短編戯曲とともに上演! BSPが紡ぐオリジナル企画が始動

松田岳、田中尚輝、鐘ヶ江洸の原案作品を大塚雅史の短編戯曲とともに上演! BSPが紡ぐオリジナル企画が始動

 ブルーシャトルプロデュース(BSP)が新たな企画を始動する。BSPメンバーが原案・脚本提供と出演者に分かれ、BSP作・演出の大塚雅史の短編戯曲も織り込み、新時代に合わせた少人数編成で短編の舞台作品として紡いでいくオリジナル企画だ。
 今回は松田岳、田中尚輝、鐘ヶ江洸の原案をプロジェクトリーダーでもある田渕法明が脚本化。舞台「魔法使いの約束」などに出演する新正俊を中心に、土倉有貴、坂口湧久らが出演、チームワークに定評のあるBSPが新たな作品づくりを目指す。

田渕法明が脚本初挑戦

――リリースの担当者に田渕さんのお名前があるということは、プロデューサーとして関わっているということですか?

田渕「そうですね、この時期に自分たちに何ができるかと考えたところ、こういう企画が面白いのではと僕自身が発案いたしました。僕たちはBSP作品を一緒に作っていく他に、2.5次元作品や外部のプロデュース公演などに出演させていただいていまして、いろんな経験や知識をそれぞれが持っていると思うんです。その部分をあらためて共有できたらという想いがあります」

――コロナ禍ではありますが、挑戦としてはとても良いタイミングのようにも思いました。

田渕「挑戦のタイミングとしては良かったかなと。ずっと何かをやりたくてもスケジュール的なこともありましたが、みんなが持っている作家性の部分で関わってもらって、持ち寄れたらすごくいいなと。
 発表してから時間が経ちましたが、まだ心配がいっぱいです(笑)。実は坂口さんと会うのはこの取材が初めてなんです。凄くワクワクしていると同時に、脚本を書いたり(プロジェクトの)まとめ役ですが、どう思われているのかとか、初めてのチャレンジとして手探りの感じではありますね」

――脚本家デビューとなりますが、前から興味があったのですか?

田渕「おそらく役者たちはみんな本を書いてみたいとか、作品を作ってみたい欲は必ずあると思うんです。そんな声を実現させたい、自分もそういう欲があったので、思いきって実現しようじゃないかと」

――よく知っている仲間たちの頭の中を見ることで、どんな発見がありましたか?

田渕「原案の3人とはそれぞれ会議をしました。何を考えていて、どんな作品を作りたいか聞き取って、“じゃあこういう物語にしようか……”を3回ほど繰りかえしました。思ったのは、役者って意外と暗いんだなって(一同笑)。うちに潜むドロドロしたものを表現したいものとして出てくる。
 それを明るいコケティッシュな方向にもっていったり、ミステリー方向にしたりちょっと味付けをした感じです」

土倉有貴は振付師としてデビュー

――そして土倉さんはこの企画を聞いたとき、どう思われましたか?

土倉「率直に言いまして『振り付けを土倉で』と言われて『え?俺?』って言いましたね。(一同笑)この企画は僕も大賛成で出演については二つ返事で、振付については初挑戦なので一瞬考えました(笑)。田渕くんと世界観とかちょこちょこ話しているうちに、最初は僕にできるかなという想いもあったんですけど、期待に応えたい気持ちもあり、その中で初稿より前のプロットの段階を見せてもらっているうちに、これはやってみたい、頑張ってみたいと。出来るかなという不安よりもやってみたい気持ちがどんどん強くなってきて、“できるかも! 俺ならできる! よしやろう”と。
 僕はダンサーではなく、役者が表現する世界でBSPとして積み上げてきたBSPの 表現があるので、今までとまたちょっと違った味が出せればいいのかなって。僕は観劇が趣味でめっちゃ観ていてインプットが多いんです。自分が今まで貯めてきたものをアウトプットできたら」

――振付ということはダンスがあるのでしょうか?

田渕「この作品は捨てられた物語が集まる場所が舞台になっていまして、その短編の立ち上がりの部分や、風景の移り変わりの部分のパフォーマンスを土倉くんにお願いしています」

土倉「コンテンポラリーとは違う、いい感じに仕上げたいですね。いま音楽が出来上がってくるのが凄く楽しみです。脚本やキャストの顔を見ながらイマジネーションを膨らませているところです。
 ミュージカル作品などではダンスのキャプテンがいて、振付の方は別にいるんです。振りがついたものをそのキャプテンが面倒見ていくのですが、そういうポジションは経験していまして。でもクリエイティブの作業は初めてなので新たな挑戦です。しかも(坂口)湧久くんは本当に小さい頃から知っていて……」

坂口「そうなんです! 手をつないでもらってダンスレッスンを受けていました。僕はフェッテ(バレエ用語で回転する技のこと)が苦手で(笑)、今回それは入れないで欲しいです」

土倉「あははは。得意な事から苦手な事も知っているからこそ、みんなが一番よく見える、カッコよく見える振りを考えたいですね」

田渕「僕はとにかく、とっくん(土倉)の優しさを出してくださいって伝えていて。彼の優しさがこの物語の鍵になるので、それが乗ればもう成功だと思っています」

土倉「おおお! 頑張らないと」

――そして土倉さんは役者としても出演されます。

土倉「物語を捨てる場所に訪れる男を演じます。僕が好きな役者さんは、技術もそうだけど醸し出す雰囲気や纏っている空気とか人間味、経験してきたことが素敵な人。この役は人生経験がないと演じられない、そんな味が出せる役だなって思っています」

田渕「訪れた目的も自分の物語を捨てに来ている、どちらかというと人生を捨てるあきらめを抱えた役なので、土倉さんにはぜひ今までの大なり小なりの挫折の経験を出していただけたら」

土倉「あははは!」

BSPの次のステップに

――新さんは出演者として参加することについていかがですか?

新「僕自身、BSPに出演するのは2年ぶりで、2.5次元作品やミュージカルなど新しいことをたくさんやらせていただいたので、その経験をBSPに戻ってきてお芝居ができることはとても嬉しいです。今回新しい試みなので、BSPの次のステップになるんじゃないかと感じています」

――成長をみせる場にもなるので久しぶりの共演は緊張しますか?

新「土倉さんも田渕さんも舞台を観に来てくださっていたので、逆に安心な部分はあります。よく知ってもらっているので僕のできることをやるだけです。新しい刺激を受けて僕も変われたらと思います」

――新さんはどんな役どころになるのでしょうか?

新「僕は物語の捨て場の管理人役を演じます。とても不思議な役で彼は何者なのか、楽しみにしていてください」

――坂口さんはいかがですか?

坂口「台本を頂いていて、自分が何を演じるのかと思いながら読んでいまして、実は先ほど役どころを聞きました。短編の物語を担っていくので、色んな役を演じます。BSPさんの作品は何度か拝見していまして、新しい企画作品に出演できるのは嬉しいです。しかも短編集は僕自身はじめての参加で、一つの作品でいろんな役に挑戦できるところが楽しみです。新しい挑戦なので、一所懸命頑張らないと! 今からドキドキワクワクしています」

――短編はどのくらいの長さになるのですか?

田渕「一編が15分くらいになる予定です」

坂口「あまり経験できない役ができそうで、そういうところが役者の醍醐味といいますか、切り替えは難しいですけど、稽古でも色んな挑戦ができそうで楽しみです」

色んな選択肢がある企画に

――2人は企画会議には参加されたのですか?

田渕「最初の企画の立ち上げの時、まず新くんが参加できるか、そこから始まりましたね」

新「急に電話がかかってきて、何かやってしまった?と焦りました(笑)。お話を聞いたらイベントをやるか何かやりたいことはと聞かれて。僕はずっと作品を作りたいと言ってたので、それなら僕は公演を打ちたいですと伝えて、そこからこの話が立ち上がったんです」

――新さんもこの企画のきっかけを作ったひとりなのですね。

田渕「はい。そして坂口さんは本作のキャスティング担当の方が是非にと、新くんとも今後共演があるそうなので、同じカンパニーとして出来ることが嬉しいですね」

――これが第一弾となり、さらに色んな方が関わって続いていく企画になりそうですね。

田渕「この枠組み自体、ずっと続けていけるようにと考えたので、次は自分が原案を考えたり。それこそ全国に(劇団ひまわりの)支社やエクステンションスタジオがあるので、例えば大阪でやったり、色んな選択肢がある企画にしたので、今後の為にも何としても成功させたいと思っています」

――そして気になるのはA・B・C・Dと表現されている物語です。

坂口「実は公式サイトのビジュアルの男の子が持っている本をよく見ると、題名が書いてあるんですよね」

田渕「そうなんです。鐘ヶ江くんの作品は、彼が演劇に対する熱い想いがあり、そこから“幼稚園児のお遊戯会で主役に選ばれなかった男の子の苦悩”を独白形式で描きます。どう頑張っても人生の中で主役になれない、頑張っているのに報われない人みたいな部分をコメディタッチで書かせていただきます。
 田中くんの作品は、最初、一番の優等生が一番悪者だったみたいな学園もののアイディアが出てきて。いじめとか、そういう部分をどうやって切り取ろうかと考えたときに、いじめの関係者たちが監禁されるところから始まる学園ミステリーを思いつきました。緊張感ある物語を描きます。
 そして松田くんは、最近植物を育てているそうで(笑)。いろいろ話していく中で植物が育っていく環境と、移ろっていく人生観みたいな話を聞いて、植物と人生を重ね合わせたような作品を作りたいと。僕はそれに恋愛要素をプラスして、ひとり芝居に仕上げました。今までのBSP作品にはないテイストですね」

――今までのBSP作品は、歴史物や熱い作品が多かったと思いますが全く違う方向ですね。

田渕「はい。大塚さんと鐘ヶ江くんの作品がパッションを帯びていますが、今までにない温度感の作品を揃えています」

――最後に意気込みをお願いします。

新「物語を最後までつなげていけるように、自分ができることをしっかり全力でやっていこうと思いますので、ぜひ劇場にお越しください」

坂口「短編集で色んな作品のいろんな役に挑戦します。その役で皆さんにお見せするところは一部になりますけど、役をしっかり深めていきたいです。物語を伝える役割を担えるよう頑張ります」

土倉「振り付けは、この気持ちがあるから、こういう動きに繋がっていくんだと思います。それは普段から思ってきたことなので、そこは大切にしていきたいです。あとはのりくん(田渕)が言ってくれた優しさを大事にやっていけたら」

田渕「みなさんにワクワクしてもらうためには、まず僕たちがそう思って作らないといけないと思っています。自分自身がまずワクワクして最終的にお客様にもそれが伝わる作品作りを目指します」

(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

田渕法明(たぶち・のりあき)
1983年10月7日生まれ、大阪府出身。舞台を中心に活躍中。近作にメイシアタープロデュース『十二人の怒れる男』、ブルーシャトルプロデュース『応仁の乱』、『新選組リメンバー』、『Dr.コルチャックと子どもたち』などがある。

土倉有貴(とくら・ゆうき)
1981年6月24日 東京都出身。多くのドラマや映画、舞台などに出演。代表作は映画『逆境ナイン』、東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』・『ミス・サイゴン』、ミュージカル『忍たま乱太郎』など。

新 正俊(しん・まさとし)
1999年9月6日生まれ、大阪府出身。ドラマや舞台で活躍中。近作に舞台『魔法使いの約束』シリーズ、舞台『Dr.コルチャックと子どもたち』京都公演、「One on One 33rd note『back-to-back』」などがある。4月より舞台『魔法使いの約束』第3章出演。

坂口湧久(さかぐち・わく)
2001年11月7日生まれ、岡山県出身。ドラマや映画、舞台などで活躍中。近作にミュージカル『キッド・ヴィクトリー』、ミュージカル『ボードビル』、ミュージカル『王家の紋章』など。4月より舞台『魔法使いの約束』第3章 ジュード役が控えている。

公演情報

ブルーシャトルプロデュース短編集Vol.1
『僕たちの知らないファンタシア』

日:2022年2月17日(木)~20日(日)
場:シアター代官山
料:5,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.blue-shuttle.com/bsphantasia/
問:劇団ひまわり tel.03-3476-0011

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事