桃太郎を鬼目線から描いた人気作 さらなるパワーアップをして再演へ!

桃太郎を鬼目線から描いた人気作 さらなるパワーアップをして再演へ!

 門野翔が主宰する、平成生まれが集まったユニット「@emotion(アットエモーション)」。“日常に刺激を”をコンセプトとして活動しており、土屋シオンと遠藤しずかが新加入して、さらなる勢いを見せている。そんな「アトエモ」が今回上演するのは、2017年に上演した人気作『ももがたり』。誰もが知っている『桃太郎』を鬼目線から描いた物語で、恋模様もあり、殺陣もあり。初演時よりもパワーアップしての再演となる。
 主宰の門野翔、新メンバーとなった土屋シオン、出演する秋葉友佑、星璃の4人に舞台への意気込みと見どころを聞いた。


―――『ももがたり』はどんなお話なのでしょうか?

門野「『ももたろう』を題材にしたお話で、鬼をメインにして進んでいくストーリーです。『ももたろう』に出てこない妖(あやかし)が出てくるんですけど、橘ひとみさんにヒロインとしてやっていただきます。秋葉友佑との恋物語からスタートしていって、華やかなエンディングを迎える物語です!」

―――秋葉さんは鬼役ということですが、今回の出演にあたっての意気込みをぜひ!

秋葉「前回も鬼役をやらせていただいたのですが、僕自身、すごく印象に残っている作品で。『ももたろう』を鬼目線で描くという捉え方が面白いですし、人情味があるんですよね。(門野)翔くんの素晴らしさを体感した公演でした。
 再演にあたって、キャストが変わります。桃太郎役を翔くんがやるということで、ラストは殺陣があるんですかね?! 1対1ですかね?! ……先輩に負けないようにやりたいなという気持ちです」

―――星璃さんはどうでしょう?

星璃「僕は前回の作品に出ていないんですけど、客席で観ていて、バラシ(公演終了後の片付け)だけ参加したんですよ。きっとね、出ていた誰よりも働いていた。それが僕のこの物語の思い出なんです(笑)。
 プライベートでは翔さんと仲良くさせてもらっていて、いろいろ関わることが多いのですが、@emotionさんの作品、好きですね。童話や絵本の題材をもとにしてストーリーが展開していくのですが、そもそもの題材が面白いし、言葉遊びも楽しい。殺陣も本格的ですし、いろいろと魅力ある見せ方をしてくれるんです。@emotionに出るときは、とにかく楽しみですね」

―――バラシだけでも参加するぐらいですものね(笑)。

星璃「はい、バラシだけでも参加するぐらい伝説の作品なんですよ(笑)。あと、今回は個人的に(土屋)シオンくんと共演できるのが嬉しいです。もともと同じ事務所で、仮面ライダー好きの僕から『シオンさんですよね?』と声をかけたことから関係が始まったのですが、まわりまわって、今こうやって共演できるのは嬉しいです。@emotionメンバーになったばかりだしね?」

土屋「そうなんですよ。僕と遠藤しずかが新メンバーになりまして。個人的に、すごく大切な作品になるんじゃないかなと思っています」

―――改めて、@emotionに入られた経緯は?

土屋「割と重めなんですけど……僕自身が俳優を引退しようと考えていたんです。コロナ禍もあって、自分がいなくても業界はまわり続けていく現状に自信をなくして、自分の意味を見失いつつあって、いろいろとしんどかったんです。自分のことを誰も知らない場所に行って、余生を過ごしたいと思って。
 そんな中、出演した『FLAGMAN』という作品が、本当に僕の中で大切な作品で。その作品の中で、お客さんにお届けしたかったメッセージは簡潔に言うと、『頑張れ』なんですけど、『頑張れ』という言葉を、自分が発しながら自分自身がすごく救われたんですよ。なので『ももがたり』もそういう作品になっていくんじゃないかなと思っています」

星璃「……まぁ重めに言っていますけど、本当はご飯休憩中に翔くんが『シオン、うち入る?』と誘ったんですよ(笑)」

門野「いや、『@emotionってオーディションないんですか?』と聞かれたので、『予定はないけど、いつでもメンバー募集中だよ』と言ったら、意外と真面目に受け止めてくれて、そのまま進んでいった感じです」

土屋「それにしても『ももがたり』、面白いですよね。みんなが普段何気なく読んでいる絵本の中のキャラクターたちにも、もしかしたら物語があるかもしれないという発想で生まれている。絵本の中では当たり前のように鬼は倒されてしまう……僕たちは生きていて、仕方のないことを受け入れたりすることたくさんあるじゃないですか……そういうものにいろいろと抗っていく物語だと思うんですよね」

星璃「なんか狙い通りやな!(笑)」

門野「いやいや(笑)」

土屋「え、僕が勝手に刺さっただけかな?(笑)」

―――このタイミングで再演を決められた理由は?

門野「コロナ禍もあって、なかなか@emotionの本公演ができなかったときに、外部で秋葉と共演する機会があって。『翔くん、『ももがたり』またやりたいですと言ってくれたことがきっかけではありました。
 僕はもともと再演はやらないでおこうと思っていた人なんです。すごく気分屋だし、その時にできたものはその時にしかできないと思っていたから。でも、新メンバーも入って、2022年が団体を旗揚げしてから10周年になるんですね。これを機に過去の自分と1回向き合ってみるのもありだなと思ったんです。
 今のメンバーだったら、余裕で初演を超えられるとも思った。30代になって、同世代も厚みが増してきたので。初演当時はまだまだ若くて、先輩を呼んでいた作品なんですけど、今は同世代でひとつ盛り上がれる作品になる気がしてたんですよ。それで再演を決めました」

―――再演をやられるのは初ですか? 書き直しや加筆の予定は?

門野「初ですね。だいぶ書き直しています。過去の自信がある作品ではあるんですけど、変えてみたいなと思う部分が出てきましたし、キャストさんも変わって見たい景色も変わったので。ただ、伝えたいテーマや雰囲気は変えないつもりです。いろいろなことがボリュームアップされて上演されるのかなと思っています」

―――「アトエモ」の魅力をぜひ教えてください。

秋葉「技量が高い皆さまが引っ張ってくださるので、僕自身、勉強できる場所です。他の現場でもお世話になっているメンバーも多いですが、本当に尊敬できる皆さまなので、勉強させていただきます!」

星璃「僕ね、好きだから一緒にいるんです(笑)。それで、何が好きなのかなと考えると、全員が何にも迎合しないのが好きだと思うんですよね。もちろん代表の翔くんもそうですし、メンバーも代表にすら迎合しない。でも、まとまるときは、ガッとまとまるんです。
 本当に家族みたいな感じなんだろうな。むしろ、家族よりも一緒にいるかもしれない。でも、みんなライバルで『負けてたまるか』と思っている。そこが僕の好きなところですね。それに全部自分たちでやっているので、ちょっとでも力になれたらいいなといつも思っています」

土屋「秋葉さんが仰っていましたが、各々のポテンシャルが高いんです。メンバーが出演する外部の公演も観に行ったりするんですが、本当に贔屓目なしに、目がいくんですよね。だからメンバーとして入って、一番最初に思ったことは『ちょっと座っていられないぞ』(笑)。今回の公演で、『新メンバー感あるね』と言われるのは絶対に嫌! 『新メンバーも負けてないな』と言われたいので、バシバシいきたいですね」

―――来年で旗揚げ10周年ということですが、@emotionのことをぜひ振り返っていただきたいです。

門野「なかなかない機会ですね(笑)。好きでいる限りはやれるからやろうと思っています。星璃が言ってくれていましたけど“迎合しない”ことは僕らの武器で、変わらないことかな。
 “日常に刺激を”というのをテーマでやってきましたが、このコロナ禍で、2年間、エンタメよりもエンタメな日常があって、心潰されそうになったんですけど、より勝負しがいがある時代になったなとも思っていて。この時代に団体があるということも結構レアじゃないですか。悲しきかな、いろいろな団体がなくなっていって、劇団という価値ももしかしたらそんなに高くなくなっている中で、チームでいるということにきっと意味があると思っています。淘汰されたときに、チームが残っていたら、ちょっと格好いいじゃないですか。
 名倉(周)と中学のときに団体を作ろうと話して、そこから20年近く。最近になって、やっと自分たちの理想の景色が見え始めたんですね。全然まだまだこれからです。いろいろな経験値が溜まってきた中で、この『ももがたり』をきっかけに、新しい@emotionが出来上がる。そんな一歩になる気がします」

―――最後に一言お願いします!

土屋「@emotionの代表作『ももがたり』を、新メンバー1発目でやらせていただけるのは、すごく嬉しいです。世知辛い日常が続きますが、楽しんでいただけたら嬉しいなと思っています」

星璃「僕のやる役が、前回、翔くんがやっていた役なんですね。そんなにプレッシャーは感じていないですけど(笑)、人が変われば芝居も変わりますから、いいエッセンスとなって、お客様に見てよかったなと思ってほしいですね。
 あまりこのご時世の状況をクローズアップするのは好きじゃないんですけど、エンタメや演劇は非日常を皆さんに与える瞬間なので、劇場に来てくれる人には、お金を払ってきてくださった分、それ以上の価値を提供して、来てよかったなと思ってほしい。あ、帰りにはグッズを帰ってくださいね!(笑)」

土屋「演劇界の今後のためにね!(笑)」

星璃「そう(笑)。そして、この記事や舞台をみてくださった方が、口コミで広げていただけると嬉しいです。多くの方に会えますように」

秋葉「僕、なかなかというか、1回も言ったことないんですけど、確実に面白いです。確実です。@emotionさんのコンセプトである“日常に刺激を”を、必ず観てくださった方に感じていただける作品だと思います。再演でまた同じ役をやらせていただけるので、前回を確実に超えていく気持ちで、気を引き締めてお届けしたいと思いますので、ぜひぜひご来場お待ちしています!」

門野「4年前の初演でも秋葉が主演やってくれて、そこから外の現場で秋葉を見ることが多かったんですけど、本当に信頼できる役者になりました。こうやって再演にも参加してくれるし、星璃にしろ、土屋にしろ、実力がある若手が、他にもごろっと集まってくる作品になっています。
 きっと小劇場界、演劇界にも刺激になるような作品になれると、僕自身が僕を信じています。団体の10周年に向けての盛り上がりをお客さんにもぜひ感じてほしいです。初演と同じ劇場にですが『またこのサイズか』と思われないような、奥行きを出せたら。初日は2月23日からなんですけど、前日の22日が僕、誕生日なんですよ。32歳一発目、いい花火になったらいいなと思っています!」


(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

門野 翔(かどの・しょう)
1990年2月22日生まれ。子役から活動しており、18歳のとき自身が代表を務めるエンターテイメント企画ユニット「@emotion」を立ち上げ、イベントやネット番組を企画。2012年から団体公演を行い、脚本・演出・振付・殺陣振付をしつつ自身も出演。他、外部公演でも出演はもちろん殺陣振付師としても活躍。舞台以外ではネット番組ラジオなど様々な分野で活動している。代表作に、舞台『爆剣〜幕府御前試合〜』、DMF/ENG提携公演『クレプトキング 月を見ていたかった兎』、DMF/ENG提携公演『メイカ 魔女と幕末の英雄』、@emotion全公演ほか。

秋葉友佑(あきば・ゆうすけ)
1992年4月6日生まれ、神奈川県出身。2013年舞台デビュー以降60作品以上の舞台に出演。代表作は、2.5次元ダンスライブ「ツキウタ。」ステージ『ツキステ。』シリーズ 長月夜役、舞台『弱虫ペダル』シリーズ 東堂尽八役、舞台 劇団シャイニングfromうたの☆プリンスさまっ♪『BLOODY SHADOWS』アイレス役、TVドラマ ギリシャ神話劇場『神々と人々の日々』イアソン役、映画『縁側ラヴァーズ1』滝沢太郎役ほか。

星璃(しょうり)
1994年3月24日生まれ、京都府出身。2012年「劇団Patch」1期生として入団。代表作に舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士―大坂夏の陣― 根津甚八役、舞台『鬼滅の刃』錆兎役、舞台『元号男子』幕末役、Patch×TRUMP series 10th Anniversary『SPECTER』カルロ役ほか。

土屋シオン(つちや・しおん)
1992年8月7日生まれ。俳優集団D-BOYS D2の元メンバー、現在は@emotion所属。代表作に『仮面ライダーフォーゼ』JK役、『新キッズ・ウォー』岸本良平役、舞台では博多座主催ミュージカル『舞妓はレディ』、@emotion『FLAGMAN』、DisGOONieS 饗遊『歌姫』~少年探偵解奇異聞 其ノ一~、晩餐ヒロックス 舞台『シェイクスピア様ご乱心』ほか。

公演情報

@emotion presents RExpression vol.1 桃『ももがたり』

日:2022年2月23日(水)~27日(日)
場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
料:S席6,500円 A席6,000円
  B席5,500円 M席2,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://atemo.official.ec/
問:@emotion
  mail:at.amotion.share@gmail.com

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