同じ学び舎から40年、ついに交わるふたりの演劇人生 モノローグでつむぐ“死刑制度”「生身で格闘技をする芝居に」

同じ学び舎から40年、ついに交わるふたりの演劇人生 モノローグでつむぐ“死刑制度”「生身で格闘技をする芝居に」

 ふたりは明治大学の同学年。しかし60歳の今まで会ったことはなかった。それでも劇作家・川村毅は「重要な役だからこそ、小林さんにお願いした」と言う。

川村「演じていただく『男』という役は、あえて言うならラスボス。キャスティングは悩んだけれど、小林さんはぴったり。存在感があるのにラスボス感を消すこともできる。また『男』は作家的な役割もあるので、僕と同い年なのもいいかなと」

 登場人物は5名。10年前の初演(※当時はリーディング公演)では4人だけだったが、改作を重ねるうちに『男』という役が追加された。

川村「『男』はそれまでの流れをバッと変える存在。この役がうまれたことで、一線を越えたところまでたどり着いた感じはします」

 作中では、死刑制度に関わる人物たちによるモノローグ(独白)が交互におこなわれる。日本とは制度が異なるアメリカ、デンマーク、韓国でも上演され、話題となった。

小林「難しいけれどチャレンジングな作品。日本の死刑制度は考えることを拒否するシステムになっている気がしていて、今まであまり深く考えてこなかった。そこにこの戯曲がグサグサ刺さる。日本では死刑制度は必要だという声も多いようだけれど、他は廃止している国がほとんどで……と、いろいろ考える刺激があって、歯ごたえのある作品ですね! 一人で読んでいても埒が明かないので、稽古で他の出演者の声を聞きながら取り組んでいきたいです」

 戯曲には仕掛けがある。死刑制度にまつわる物語なのだが、「ものすごく高難度のエチュードに取り組んでいる俳優5人、というふうにも見えて面白い」と言う小林に、川村も「そう!」と頷く。

川村「これは〝役者の芝居〞。デジタルを使った演出もいろいろ考えていたんですが、このキャスティングが決まった時に、役者の身体と声で格闘技をやってもらえれば面白いものができると確信を抱きました。生身の肉体だけでやろうと思っています」

小林「プレッシャーですね(笑)。でも今はプレッシャー大歓迎ですよ、舞台に2年くらい立っていませんから。この作品は去年から延期となったけれど、今回その
ままのメンバーで上演することを意気に感じ、その期待に応えたいと強く思っています。」

川村「本当に、スタッフキャスト一人残らず、みんな待ってくれてるんだ、と嬉しいですね」



(取材・文:河野桃子 撮影:間野真由美)

プロフィール

川村 毅(かわむら・たけし)
1959年生まれ、東京都出身。1985 年度岸田國士戯曲賞を『新宿八犬伝 第一巻 – 犬の誕生-』にて受賞。1996 年、ACC日米芸術交流プログラムによりNY滞在。1998年、ニューヨーク大学客員演出家として招かれ、三島由紀夫作『近代能楽集- 卒塔婆小町・弱法師-』英語版を演出。 ほか、ドイツ・ブラジル・フランス・ルーマニアなどで作品を上演。『4』で第16 回鶴屋南北戯曲賞、平成24 年度文化庁芸術選奨 文部科学大臣賞受賞。戯曲集ほか著書多数。 

小林 隆(こばやし・たかし)
1959年生まれ、埼玉県出身。1988 年、劇団「東京サンシャインボーイズ」に入団。ドラマ『古畑任三郎』シリーズやNHK大河ドラマ『新選組!』など、三谷幸喜作品をはじめ、数多くの映像作品に出演。近年の舞台出演作に『蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~』(作:長田育恵/演出:マキノノゾミ)、『骨と十字架』(作:野木萌葱/演出:小川絵梨子)、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season1ほか。

公演情報

ティーファクトリー
2021/2022あうるすぽっとタイアップ公演シリーズ 『4』

日:2021年8月18日(水)~24日(火)
   ※他、京都公演あり
場:あうるすぽっと
料:6,000円
  U30[平成4年以降生まれの方]4,000円 
  高校生以下2,500円
  ※U30・高校生以下は団体のみ取扱/枚数限定/要確認書提示
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
  (全席指定・税込)
HP:http://www.tfactory.jp/
問:ティーファクトリー tel. 03-3344-3005

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