人気の『ABSO-METAL』シリーズ。その始まりの物語 2つの物語を経て、魅力を湛えてきたアイコを軸にした前日譚

人気の『ABSO-METAL』シリーズ。その始まりの物語 2つの物語を経て、魅力を湛えてきたアイコを軸にした前日譚

ダンスや殺陣、アクション。さらに練り上げた音楽と最新の照明効果や特殊技巧を使ったプロジェクションマッピングなど、考え得る技術と要素を詰め込んだFUSIONICAL STAGEと銘打った公演を続けている銀岩塩。コロナ禍による公演中止なども乗り越えて上演する最新作は、人気の『ABSO-METAL』シリーズの続編『ABSO-METAL~黎明~』。人間を構成するすべての要素が保有メタルに換算され、アブソメタルだけが唯一の絶対的な価値となる『AMORDIE(セント・アモーディ)学園』を舞台にした物語だ。銀岩塩の代表でもある岩田有弘。演出も手がけている俳優の井上正大。前作から“アイコ”役を務め、今回は主人公となる遊馬晃祐。そして前回コロナ禍による公演中止で初舞台のチャンスを逃したものの、今回再登板となった海乃るりの4人に話を聞いた。


――――今回の作品『ABSO-METAL~黎明~』ですが、このシリーズの時間軸ではどのあたりに位置するのですか。

岩田「シリーズで考えると、この作品は1の過去であり、1と2で主人公だった“ルカ”が学園に転入する前、遊馬さんが演じてきた“アイコ”がAMORDIE学園に入学してきた時の物語ですね」

――――井上さんはこの作品の演出を全て手がけられていますが、今回はなにか特別なプランがありますか。

井上「最初から手がけてきましたが、上演する劇場という空間やそこで出来る事を最大限に活かした演出をいつも考えています。1や2はスペースゼロだったのが今回は新宿村LIVEなので、より繊細なお芝居を客席に届けることができるかと思っています。だからこれまでの2作でとった手法は一回止めて、この劇場ならではの表現を探っていくつもりです」

岩田「そもそもこの作品は銀岩塩と井上さんで創り出した作品で、井上さんは充分に本質の魅力をわかっていますから、その世界観でいろいろ遊んでくれると思います。ともかく彼の演出手法にはいつもビックリさせられるので、今回も楽しみです」

――――遊馬さんも最初から出ていますね。

遊馬「ええ、三回目ですけど、今回はガッツリと主役です。台本を読みましたが、ずっと出突っ張りですし、自分がストーリーの中心にいるので、プレッシャーも感じています。また今回は座長ということになりますが、あまり自分のことを座長タイプだとは思っていないので、あくまでも主人公のアイコ役として頑張ろうと思います。これまでこのシリーズを観ていたお客さんはもちろんですが、初めて観る人でもABSO-METALの始まり。世界観を存分に楽しんでもらえると思います」

岩田「『ABSO-METAL』の1と2で遊馬さんのおかげでアイコがすごく魅力的なキャラクターに育っていったんです。それでもう1をやっている時に井上さんと、アイコを掘り下げていったら全体のストーリーがさらに広大に、壮大になるんじゃ無いかと話して「黎明」につながりました。だから遊馬さん演じるアイコがあってこその『黎明』篇なんです」

――――そして海乃さんは前回公演が残念なことに中止となりましたが、今回めでたく初参加ですね。

海乃「まだ2作目の舞台なのでまだまだ右も左もわからないような状況ですが、これまで皆さんが大切に育ててきた作品なので、これまで関わっていらっしゃった皆さんの想いを背負って頑張ります」

――――舞台2作品目とはいえ、声優アイドルの22/7としては沢山のステージを踏まれていますよね。

海乃「でもアイドルとして立つ舞台と、俳優として立つ舞台は全然違いますね。お客さんにご覧いただくことは同じですが、俳優の場合は一度自分が台詞を入れて、さらに相手役と向き合うわけですから、もしも自分がそこで失敗すると全てが駄目になっちゃいますから。またパメラはキリッとした風紀委員長で、普段の自分とは正反対なので、そのギャップも埋められるか不安です(笑)」

岩田「普段は声優アイドルとして活躍されている海乃さんは、自己顕示欲を前に出すタイプでは無くて、謙虚に立ちつつも実は変身願望がある方だと思ったんです。さらに彼女はパメラのイメージに合っていると思いました。目線も強いしキリッとしている。男性はそういった女性に怒られたいじゃないですか(笑)もともとは銀岩塩を手伝ってくださる方が、面白い女優さんがいるよと紹介してくれたのがきっかけですが」

――――これまでも『ABSO-METAL』シリーズでは殺陣、ダンス、プロジェクションマッピングなど様々な要素を詰め込んでいることがひとつの魅力になっていると思いますが、演出家としてはいかがですか。

井上「僕はすごい飽き性でして、10分おきに何か起こらないと座ってられなくなっちゃうんですね。だから集中が持続できるような、あっという間に終わってしまったように思える舞台が良いなあと思っています。でもあまりにもエンターテインメントに走りすぎると、今度は物語が入ってこなくなってしまい舞台の良さが損なわれるので、そこは調整した上で普通の舞台では体験しないような演出を考えています。あと劇場という場所は実現できないことも結構多いんです。ドローンの大群なんて使ってみたいですね。まあ今回は最後の闘いのシーンが見所になるでしょうね。」

――――まもなく稽古に入っていくことになると思いますが、初参加の海乃さん。皆さんに何かリクエストはないですか?

海乃「リクエストだなんて(笑)。皆さんの話を聞いていて、もうついて行けるかどうかが不安になっているところですから。殺陣や剣舞はほんの少しだけやったことありますけれど……」

岩田「そう、Twitterに上がっていた海乃さんの剣舞を観ましたけど、上手だったですよ」

海乃「それを各方面からいわれるようになったので、もうTwitterの固定ツイートから削除しました(笑)」

――――それでは舞台を楽しみにしている皆さんへのメッセージを最後に頂きましょう。

遊馬「アイコという役には僕自身もすごい想いがつまっています。それだけにこの劇場だからこそできるアイコで駆け抜けたいと思います。また休演日がないので、自己管理もしっかりして務めあげたいと思います。自分らしくね」

海乃「『ABSO-METAL1』をDVDで拝見して、凄くカッコイイと思いました。だから皆さんを同じ想いにできるように。そしてとても繊細な物語なので、そこも素敵にお届けできるよう、さらに皆さんについて行けるよう、頑張ります」

岩田「この作品、実はコロナ感染症が蔓延する前に企画されていたのです。汗をかくだけで死に至る「スコールス」という疫病が蔓延して、世界の人口が2割減ってしまった世界での物語。偶然にも今置かれている状況にリンクしているんです。このタイミングでの上演はお客さんにも更に響いてくれるのではないかと思っています。今やエンタメを継続するのは凄く大変な時期ですが、それを乗り越えて上演する、まさに今観るべき作品だと思っています。僕自身、一番好きな作品になっています」

井上「アイコという役は1ステージこなすだけでも熱量、体力、そして気持ちを使う役なんですが、晃祐(遊馬)は一回ごとに出し切っちゃうタイプなんで、最後まで持つかどうかが心配で(笑)。でも凄くかっこいいんです、今回はアイコを中心に構築される世界なので、晃祐がどう演じてくれるかが楽しみです。また、コロナ禍で一度中止になっているだけに、今回実現するのはとても嬉しいですし、今作を見て、改めて1と2を観てもらうのも良いかなと思います」

――――ありがとうございました

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

遊馬晃祐(あすま・こうすけ)
岐阜県出身。2015年に舞台『ハイキュー!!』のオーディションに合格し、同作で俳優としてデビュー。2年後の2017年には『おとめ妖怪ざくろ』で初主演を務める。その後は漫画やゲーム原作による舞台や2.5次元ミュージカルなどに多数出演している。『ABSO-METAL』シリーズでは第1作からアイコ役として出演。そこでの存在感が認められ、今作では主演として座長を務める。

海乃るり(うみの・るり)
東京都出身。2016年に声優アイドルグループ22/7のオーディションにて、1万人を超える応募者から選ばれてメンバーとなる。アニメ・キャラクターとリアルなアイドルの2軸で活動を展開する22/7にて「戸田ジュン」を担当。『ABSO-METAL』シリーズには本年6月の舞台に出演、初舞台の予定だったが、公演中止となった。今回が舞台2作目の参加となる。

岩田有弘(いわた・ありひろ)
東京都出身。東京農業大学在学中の2002年に演劇ユニット「秘密兵器」を結成。下北沢を中心に15年以上定期公演を続け「下北沢小劇場の申し子」と呼ばれるように。2013年には劇団「大人の麦茶」にも入団。さらにプロデューサーの銀、脚本家で「大人の麦茶」主宰塩田泰造と舞台プロデュースユニット「銀岩塩」を結成し代表に。俳優として活躍する他、2017年には「牙狼 」初の舞台化をプロデュースするなど、活躍の場を広げている。

井上正大(いのうえ・まさひろ)
神奈川県出身。2008年にミュージカル『テニスの王子様』で舞台デビュー。翌年には『仮面ライダーディケイド』にて門矢士 / 仮面ライダーディケイド役としてテレビドラマ初出演・初主演を飾る。さらにその年の5月には同作品の映画版で映画デビューも果たす。その後も舞台、テレビドラマ、映画など数多くの作品に出演を続けている。銀岩塩には旗揚げ公演から参加し、3作目の『神ノ牙-JINGA-転生』では演出も担当。4作目以降の『ABSO-METAL』シリーズでも全作品の演出を担当している。

公演情報

銀岩塩 v ol.4-5 FUSIONICAL STAGE ABSO-METAL ―黎明―

日:2021年10月16日(土)~24日(日)
場:新宿村LIVE
料:7,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.ginganen.com/abs4-5/
問:【公演問合せ窓口】銀岩塩
  mail:info@ginganen.com
  【チケット問合せ窓口】スタイルオフィス
  mail:stage.contact55@gmail.com

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