あなたの心の血の色は?  古谷実の『ヒミズ』舞台化 「手に負えない現実のなかでも、幸せを求めてる。たとえバカみたいでも」

あなたの心の血の色は?  古谷実の『ヒミズ』舞台化 「手に負えない現実のなかでも、幸せを求めてる。たとえバカみたいでも」

 2001年から2003年にヤングマガジン(講談社)にて連載、2012年には映画化もされた、古谷実の漫画『ヒミズ』を劇団時間制作の谷碧仁が舞台化する。物語は、過酷な境遇に追い詰められながらも生きる中学生・住田祐一と、彼を気にかけるクラスメイトの茶沢景子を中心に動く。
 原作に沿いながら、今の時代、今の観客に届けるならと改変も加えた。突き動かされるまま殴り書きのように書き上げた台本を、キャスト達と現場で練り上げていく。

谷「古谷先生の描くキャラクターを演じるのはすごく難しい。住田は、他者から影響を受けるけど、自分の位置がある。西山潤さんは〝自分の位置はここだ〞と掴むのが上手なところを信頼しています。茶沢役の松田るかさんは、文字を構成しながら話す印象があり、古谷さんの書く独特な世界の言葉を理解して演じてくださるはず」

 初舞台の西山は、松田とともに「不安でいっぱい」と緊張気味だ。

西山「原作をリスペクトしつつ、結末や家族との関係など、オリジナルの部分も面白い。実は、漫画でも映画版でも感じませんでしたが、今回の住田は過酷な境遇にいるけど〝普通の人間〞だと思ったんです。この住田を救いたい。住田は必要ないと思うかもしれないけど」

松田「茶沢さんはまっすぐな愛を持っているけど、その愛はどこからくるのか、原作と同じく背景が見えない。そのぶん自由度が高いので、皆で作っていけるのが楽しみです。どんな人生を生きている人なのかが想像できるように頑張りたい」

 作中には〝ソレ〞という存在が出てくる。住田にだけ見える、正体不明の存在。谷は、「ぴったり!」と三津谷亮のキャスティングに頷く。

三津谷「原作は、怖いけど興味本位でページをめくってしまう。自分の本質を見抜かれたり、闇や本心が見えたようでぞっとします。悪いことをしているような感覚になる。それが〝ソレ〞に近いんじゃないかな。いるだけで嫌な気持ちになる存在になりたいです」

 舞台化にあたり住田役と茶沢役以外の出演者でほか40役を演じる。

谷「自分のことも周囲のこともわかっていない頭でっかちな中学生二人が、周囲の現実に追いやられていく様を見せたい。僕が描きたい人は、手に負えない現実の中でも幸せを求めている。たとえバカでもそうやって生きている。そしてたどり着く結末は、今の現実ならこのラストだろう、というものにしました」


(取材・文:河野桃子 撮影:間野真由美)


“忘れられない夏の思い出”を教えてください

谷 碧仁さん
「僕の実家の近くには国道1号線が通っておりまして、中学生の時に友人3人と自転車でひたすら真っ直ぐ走った事ですね。何があったか、どこへ着いたのかは全く覚えていません。しかし今でもぼんやりと次々と変わる景色や夏の暑さ、そして青春の匂いのようなものを身体が記憶しています。
 膨大な好奇心を“楽しい”と感じて生きていた事が一番忘れられない想い出かもしれません。結構意識していないと、“わからないもの”に対して恐怖心が沸いてくる時があるので、むしろ忘れてはいけない想い出のようにこの文章を書いていて感じました」

西山潤さん
「2年前の夏に友人がパリに住んでいたので一人で遊びに行ったことですね。現地では朝からビール飲んで街をぶらぶらしたり、たまたまパリに旅行に来ていた友達が2人いたので、合流して観光や買い物してお酒のんだりして。夜スーパーでワインを買ってエッフェル塔の前の広場で飲んだり……ずっとお酒飲んでますね(笑)。
 あと、行った時がパリの観測史上最高気温を更新した日で42℃もあってめちゃくちゃ暑かったんです。色々あって一生忘れられない夏の思い出になりました。世の中が落ち着いたらまた旅行したいですねー!」

松田るかさん
「夏休みの宿題が嫌いだったチビマツダは、中でも自由研究が大嫌いでした。あの大きな模造紙に今年は何を書こうかと考えていた時、ふと『コーラは骨が溶けるから飲んじゃダメ』と言う我が家のルールに疑問を抱きます。“だって大人は飲んでいるじゃないか!骨が溶けるなんて嘘だと証明してやる!”と息巻いて『夕飯はケンタがいい』、そう親に伝えました。
 鶏の骨をコーラ、ジュース、茶、酢に漬け、窓際に置いて暫く観察することにしたのです。しかし私が生まれ育ったのは南国沖縄。高温により、たった2日で骨と液体は――。夏に飲食物を外に放置するのは危険だと、身を持って知る事となりました。未だに忘れられない夏の思い出です」

三津谷亮さん
「小学3年の夏に一輪車で初の全国大会に出場した時の話。当時、レース部門での出場で個人レースと団体リレーの2種目に出場し、最初の個人レースでは緊張と周りの空気にのまれて思う結果が出ず人生初の悔し涙を流し、その後のリレーでは悔しさを挽回し、準優勝。小3で初の悔し泣きも嬉し泣きもした忘れられない夏でした」

プロフィール

谷 碧仁(たに・あおと)
愛知県出身。2013年、劇団時間制作を旗揚げ。以降全作品の作・演出を担当。社会にある現実を生々しい感情と重層的で綿密な構成で描く手腕に定評がある。外部公演では『プライベート~信じたモノはナニカ~』脚本・演出、ミュージカル『王室教師ハイネ-THE M USICAL Ⅱ-』、『カレイドスコープ』脚本などを手掛ける。

西山 潤(にしやま・じゅん)
神奈川県出身。2006年、映画『サイレン ~ FORBIDDEN SIREN ~』でデビュー。映画『20世紀少年』3部作(主人公の幼少期役)、大河ドラマ『天地人』、『いだてん~東京オリムピック噺~』、『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方』、『運命に、似た恋』、『ドラゴン桜』など、映像作品に多数出演。本作で初の舞台出演にして主演を務める。

松田るか(まつだ・るか)
沖縄県出身。2006年デビュー。2016年『仮面ライダーエグゼイド』ヒロインを務め注目される。その後、NHK 連続テレビ小説『スカーレット』や、ドラマ・映画『賭ケグルイ』シリーズに出演。舞台は劇団カムカムミニキーナ、タクフェスなどの作品に出演。待機作として、初主演映画『あしやのきゅうしょく』が公開予定。

三津谷 亮(みつや・りょう)
青森県出身。俳優。近年の主な出演作に舞台『マミィ!』や喜劇『お染与太郎珍道中』、タクフェス『流れ星』、PARCO『奇子』、舞台『刀剣乱舞』、ロ字ック『滅びの国』、てがみ座『地を渡る舟』など幅広いジャンルの作品に出演。その活躍は舞台のみに留まらず、NHK 大河ドラマ『真田丸』、『3人のパパ』など、映像作品にも及ぶ。

公演情報

劇団時間制作プロデュース公演 第二弾
舞台『ヒミズ』

日:2021年9月18日(土) ~26日(日)
場:Theater Mixa
料:7,700円(全席指定・税込)
HP:http://zikanseisaku.com
問:時間制作 mail:info@zikanseisaku.com

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