こまつ座が『頭痛肩こり樋口一葉』を6年ぶり再演! 夭折の作家・一葉の生き様を明るく生き生きと描き出す

こまつ座が『頭痛肩こり樋口一葉』を6年ぶり再演! 夭折の作家・一葉の生き様を明るく生き生きと描き出す

 樋口一葉 生誕150年を迎える今年、

こまつ座が『頭痛肩こり樋口一葉』を6年ぶりに再演。初演は1984年。劇団の旗揚げ作品として井上ひさしが書き下ろし、以来上演を繰り返してきた人気作だ。
 ヒロインは夭折の天才女流作家・樋口一葉。父と兄に先立たれ、若くして樋口家の戸主となった一葉には、母・多喜と妹・邦子との生活が重くのしかかり――。近代化が進む明治期、貧しいながらも逞しく日々を生きる女性たちの姿をユーモアを交えいきいきと描き出す。一葉役の貫地谷しほりと、母・多喜を演じる増子倭文江に、作品への想いを聞いた。


―――こまつ座の『頭痛肩こり樋口一葉』といえば、井上ひさしの代表作の1つであり、錚々たる女優陣が演じてきた名作として知られています。本作に出演が決まった時の心境はいかがでしたか?

貫地谷「以前、井上ひさしさんの『もとの黙阿弥』に出演したとき、演出の栗山民也さんが『次は『頭痛肩こり樋口一葉』を演出するんだよ、面白いよ〜!』と言うのを聞いて、『うわー、いいな!』と言っていたんです。だから今回お話をいただいたときは、栗山さんが覚えていてくださったのかなと思ってすごく嬉しかったし、ちょっとウルッとしてしまいました」

増子「私も以前舞台を観ていますが、本当に面白くて大好きで、ずっと憧れていた作品でした。なので自分にお話をいただいたときは『えぇ、私にできるの!?』という感じで、思わず背筋がシュッと伸びました(笑)」

貫地谷「実は私の地元に一葉記念館があって、その隣の公園でいつも遊んでいたんです。記念館には小学校の社会科見学で行ったこともあって、どこかご縁のようなものを感じています(笑)」

増子「それはすごい! 何だか呼ばれているみたいですね(笑)」

―――台本を読んだ感想をお聞かせください。

増子「次から次へと色々な事が起こって、てんやわんやのドタバタですごく面白い(笑)。みんな本当は色々な苦しみを抱えているはずなのに、女性たちはどこまでも明るいんですよね」

貫地谷「多喜は特に明るいですよね。酔っ払うシーンなんて最高です(笑)」

増子「そうそう(笑)。現実は厳しいけれど、みんなとにかく逞しい。それでいてどこか温かさが伝わってきて」

貫地谷「井上作品はどれもそうですが、余白の部分にたくさんの言葉が詰まっているのを感じます。台本を何度も読んでいると“なるほど!”と急に腑に落ちる瞬間があって。それを自分の中で、できるだけたくさん見つけられたらと思っています」

増子「井上先生はものすごくたくさん本を読んでいらして、知の巨人だった方。そのうえで台本に落とし込んでいるので、一つひとつの台詞全部に心が宿っている。だから一つひとつ大切にしたいし、一言も疎かにしてはいけないという気持ちでいます」

―――実在の人物を演じるにあたり、どこから役にアプローチされるのでしょう。

貫地谷「とりあえず一葉記念館に行ってきました(笑)」

増子「役作りの王道ですね(笑)」

貫地谷「久しぶりに記念館に行って、妹の邦子も賢かったんだということを改めて知りました。姉妹揃ってとても出来が良かったけれど、あの時代の中ではままならないことが色々あったのかもしれない。一葉はわずかな期間に名作を次々発表していて、よく“奇跡の14ヶ月”と言われるけれど、本当にその言葉通り劇的なものを感じます。どれほど書きたいものがあって、あれだけのものを書いたのか、そうしたところを探っていけたらと思っています」

増子「母の多喜は今でいう“毒親”みたいな部分があって、娘をスポイルしたりする。一方で調子が良くて、情もあって、どこか憎めない。一筋縄ではいかないけれど、絆はある。貫地谷さんと一緒にそんな親子を演じられたらと考えています」

貫地谷「時代背景的なものもあるかもしれないけれど、一葉ってあまり母親に反抗していないんですよね。その親子関係をどう増子さんと作っていけるか楽しみです。一葉は19歳と若くして戸主になって、母と妹を支えてきた。私も10代の終わりからお仕事を始めて、まず家族のことを第一に考えてしまうところがあったりと、ちょっと一葉の思考と通じるものを感じます」

―――演出は前回に引き続き栗山民也さんが手がけます。

貫地谷「私は栗山さんの演出が大好き! 栗山さんはいつもご自分の作品を『最高なんだよ!』と言うんです(笑)。以前、ご自身が演出された作品を観たかと聞かれて、『すみません、観そびれました』と言ったら、『最高だったのに!』と言われたことがあって(笑)。本当にご自分の作品を愛しているんだなと、素敵だなと思いました。栗山さんには井上先生がどういう人だったかというお話を色々聞いていて、今回井上作品に栗山さんの演出で出演できるということで2倍の嬉しさがあります」

増子「すごくわかります。栗山さんと会うとみんな彼のことを大好きになっちゃうんです。そういう意味では人たらしなんですよね(笑)。栗山さんはたった1つの言葉で役者の心をグルンと動かしてしまうことがよくあって。言葉の魔術師みたいだなと思って、いつも驚かされます」

貫地谷「私も栗山さんの一言がきっかけで、演じていて涙が止まらなくなったことがありました」

増子「栗山さんの中でビジョンがしっかり見えていて、そこに自然と導いてくれる。だから今回も栗山さんを信じていれば大丈夫だという想いでいます」

―――1984年の初演以来、30年以上にわたり上演を繰り返し、大きな支持を集めてきました。その一番の魅力はどこにあると感じますか?

貫地谷「やっぱり会話がすごく面白い。そこが一番だと思います。井上先生はこの台本を2週間でお書きになったと聞いていて、その勢いや発想力ゆえの力強さをすごく感じます」

増子「確かにそうかもしれない。先生の中で書きたい気持ちが強くあったのかもしれないですね。どんなに酷い目にあっても、どんな悲惨な境遇にいても、みんな笑ってる。やっぱり女性って強いんだ、という想いが最後に残る。色々な意味で女性の背中を押してくれる、そんな何かがこの作品にはある気がします」

貫地谷「今の時代、家族だからといって絆があるかというとわからない。でもこの作品は“家族って本当はこういうものだよな”と思わせてくれる。私自身下町育ちだからなのか、この時代の空気や人間関係の在り方をどこか親しく感じるところがあって。自分自身リアリティをもって向かうことで、みなさんにその空気感をお届けできるのではないかと思っています」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:平賀正明)

祝日が1日もない6月。好きな祝日を作れるとしたら、“何の日”を作りますか?

貫地谷しほりさん
「何もしちゃいけない日を作りたいです。なんだかんだお休みの日でもやらなければならない事に追われていて、しなきゃいけない事が山積みだと余計さぼりたくなるので。毎月、いや隔週で欲しいですね(笑)」

増子倭文江さん
「6月6日 結婚記念日。私ごとで申し訳ありませんが、この日は私の結婚記念日です。私は記念日を覚えるのがとても苦手。さすがに自分の誕生日は忘れませんが、結婚記念日も夫の誕生日も、さらには親の命日まで、毎年忘れています。祝日になったら絶対忘れませんから、きっと」

プロフィール

貫地谷しほり(かんじや・しほり)
1985年生まれ、東京都出身。2002年映画デビュー。NHK 朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』で主演を務め人気を博す。映画『くちづけ』で第56回ブルーリボン賞 主演女優賞受賞。『余命1ヶ月の花嫁』で舞台初主演。主な出演作品に、NHK 大河ドラマ『龍馬伝』、連続テレビ小説『なつぞら』、映画『総理の夫』、舞台『ハムレット』など。井上作品では『もとの黙阿弥』、『泣き虫なまいき石川啄木』に出演。

増子倭文江(ますこ・しずえ)
1955 年生まれ、栃木県出身。劇団青年座所属。2015年『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』、『地の乳房』にて第22 回読売演劇大賞 女優賞、2020年『荒れ野』にて第27回読売演劇大賞 女優賞受賞。近年の主な作品に、舞台『母 M ATKA』、『砂塵のニケ』、『チャイメリカ』、『奇跡の人』、映画『山中静夫氏の尊厳死』、『はずれ家族のサーヤ』など。こまつ座では『闇に咲く花』、『シャンハイムーン』に出演。

公演情報欄

こまつ座 第143回公演『頭痛肩こり樋口一葉』

日:2022年8月5日(金)~28日(日)
場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
料:一般10,000円 U-30[30歳以下]7,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.komatsuza.co.jp
問:こまつ座 tel.03-3862-5941

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