“みんなで創ろう”という想いが生み出す、深い没入感 音楽朗読劇三部作がついに完結! 声と音で表現する喜怒哀楽の向こう側とは?

“みんなで創ろう”という想いが生み出す、深い没入感 音楽朗読劇三部作がついに完結! 声と音で表現する喜怒哀楽の向こう側とは?

 作家・二宮愛が手がける音楽朗読劇=リーディックシアターの最新三部作『THE∞×Family』が、6月の『THE∞×Family team.Fight』で完結する。人気声優による朗読とバンドの生演奏を組み合わせた舞台で、三部作といってもそれぞれが独立して楽しめる内容。音楽が溢れるアイリッシュパブ「ジ・エイト」で繰り広げられる物語はどこへ向かうのか。第一弾〜第二弾に続いて二宮へメールインタビューを行い、キャスティングへの思いを中心にたっぷり綴ってもらった。


一番時間をかけた新登場キャラクターのキャスティング

――三部作の最後はteam.Fightというタイトルですが、“戦い”がキーワードになるのでしょうか?

 「そうですね、ジ・エイトのキャラクターはみんなそれぞれ何かと戦っているのですが、一番色濃く……そして戦いの果てにある決着を描きます。つらいシーンもありますが、フェイフェイもフカシギも他のファミリーと変わらず、時には全力でバカになれちゃうので、喜怒哀楽いろんな感情で物語を堪能して頂けると思います」

――木村良平さんが演じるフェイフェイはコミュ力抜群のバンマスということで、ご本人のエネルギッシュで前向きな面と重なるところもあるように思えます。キャスティングにあたって考えたことを教えてください。

 「最後に登場するキャラクターではあるのですが、フェイフェイがシェフとしてジ・エイトに加入してから、一般の(ギャング以外の)お客さんも楽しめるアイリッシュパブとして機能し始めるんです。担当楽器もドラムで、リズムを取るのがとにかく上手く、調和に長けたみんなのアニキ的なポジションなので……あと、実はフェイフェイには公開していない大切な要素がありまして、そういったものも踏まえて、どなたにお願いするかは一番時間を使って考えました。
 最初は私が朗読劇というメディアを通してお世話になった方が良いなぁと思い……でも、たとえば勝平さん(山口勝平/第一弾『THE∞×Family team.Fancy』出演)も吉野さん(吉野裕行)も、もう他のキャラクターをお願いする気満々だし……と、悩みに悩みまして。木村さんは一度ドラマCDでお世話になっていて、その時の脚本への理解力や、キャラクターを介して聞き手を鷲掴みにしてくる感じとか、お声が柔らかいのに握力ものすごい……みたいなお芝居が印象的で、もし木村さんにお願い出来たらすごくイメージにピッタリなんだけど、オリジナルの朗読劇って受けてくださるのかなと、最初は及び腰でしたね。そのぐらいフェイフェイは誰にでもお願い出来るキャラクターじゃないという想いがあって。でも、だったら余計に後悔しないように一度オファーをしてみようということになりました。当たって砕けろの精神で(笑)。
 『THE∞×Family』の企画書は、キャラクター紹介の一覧にフェイフェイだけ赤字で“とあること”が書かれていて……先方から“フェイフェイが関わるお話を箇条書きでも良いので教えて欲しい”とのことで、お話の全貌を伝えました。その後、木村さんの出演OK貰ったよ、という連絡が来た際、私としては“あ、もしかしたらこれは、ものすごいものを聞かせて頂けるかもしれない”と、個人的に1年以上前からフェイフェイと出会えることを楽しみにしています。ご本人のパーソナルなところまでは分からないことも多いのですが、木村さんのファンの方からも“ご本人っぽい!!”と言ってもらうことが多く、公演を観て頂いたあとの感想も非常に楽しみです」

――ジ・エイト最年少の少年フカシギを吉野裕行さんが演じるのも興味深いところです。二宮さんは以前のインタビューで、吉野さんの声について「とんがった男の子のイメージ」と仰っていましたが、今回はそのイメージに近い役柄ということになるでしょうか?

 「吉野さんに“一番ヘンテコな子です”と伝えたぐらい(笑)とんがっていると思います。フカシギをどう美味しく調理して頂けるのか、本当に楽しみで、あまり“こういう声”、“この枠から絶対はみ出さないキャラクター”という線引きをしないようにしています。ジ・エイトの最年少、暗殺一家の末っ子、と、弟属性強めの設定ではありますが、だからと言って可愛くてお人形さんみたいな子ではないし、狂気的な部分と、人間的な……でも成熟していないキャラクターなんですよね。言葉にするとすごく難しいのですが、難しいからこそ、お願いしたいと思ってしまいました。
 ただ、フェイフェイが決まるまではフカシギを決めてしまってはいけない、とか。前作の『お憑彼サーカス』の公演(吉野さんに主人公のフィリップを演じてもらっていました)が終わるまで吉野さんに新作のお声掛けをしてはいけない、とか。自分なりのルールを設定していて……キャスティングの順番としては、一番最後になりますね。フェイフェイはもちろん、フレディーやドレミとのバランスを大切にお芝居をしてくださると思うので、もうとにかくフカシギに関しては私がアレコレ束縛せずに、でも手綱はちゃんと握った状態で(笑)お話が書けています。ありがたいです」

台本さえも小道具の一部として表現する声優さんの技術

――フェイフェイ=ドラム、フカシギ=ギターというそれぞれの担当楽器と、キャラクターとの結びつきについて意図したことがあれば教えてください。

 「フェイフェイは音楽に絶対的なこだわりがあるかと言ったらそこまで無くて、それよりは対話だったり、コミュニケーションだったり……人との繋がりを大切にしているので、リズム担当なんじゃないかなと思っていました。偶然にも今回『THE∞×Family』はドラマ―の坂本暁良さんがバンマスも務めてくださっていて、フェイフェイ=バンマスってイメージが強かったので、嬉しくなっちゃいました。フカシギは暗殺者としての存在や、武器の形状から“爪弾く”楽器が良いなと思っていて。和風な子なので三味線とかも考えたのですが、あえて派手で目立つ音色が欲しかったので、わりと初期の段階でフカシギをギター担当にしていました。フミヲがギターでも良かったのですが、そうすると主人公感が出過ぎちゃうので、その辺りのバランスも考えました」

――声だけでキャラクターを造形できるキャストの皆さんが舞台上でパフォーマンスする、それがリーディックシアターの面白さのひとつだと思います。2月公演でキャストの皆さんが「これはもう朗読劇じゃなくて舞台」と仰っていたそうですが、「舞台とはここが違う」というポイントはどこだと考えていますか?

 「“舞台みたい”と言ってもらえるのは光栄でしかないのですが、やっぱりそれでも私が書いているお話は声と音の世界から飛び出した“朗読劇”だと思います。朗読劇に見えないのは、声優さん方の“台本さえも小道具の一部として、そこにある違和感を出さないようにしてくださる技術”が反映されているのではないかなぁと思っていて、もちろんそれを皆さんに強要しているということもありませんし、自然とそういった流れになっているのかな、と。今作では座長の中尾隆聖さんが持っている圧倒的なお芝居への愛がそうさせているのかもしれません。
 あとは作品世界の没入感が強いと“台本を持ってお芝居をしている”と感じなくなるのかな、と。これに関してはお客様の想像力に感謝ですね。私も非現実の喜怒哀楽をお届けする為にお話を紡いでいますが、“みんなでリーディックシアターを創ろう”という想いが溢れているように感じます。今後リーディックシアターで、かっちりとした朗読劇をやるかもしれないので、あまり“舞台っぽい”というのが定着しちゃうのも困りものですが(笑)、作品に素敵な魔法をかけてくださって、ありがとうございます」

三部作の中で最も危険で刺激的な展開が待っています

――4月の第二弾『THE∞×Family team.Fancy』は公演直前で日程が変更されました。コロナ禍で計画通りに作れなかった舞台は今も少なくありませんが、二宮さんにとって、舞台を作っているときの社会状況が作品の内容に影響することはあるのでしょうか?

 「社会状況、と一括りにしてしまうのは難しいのですが、私は『THE∞×Family』という作品で、たとえば戦争についても触れていますし、虐めや裏切り、誰かを傷つけたり傷つけられたり……様々な“嫌な現実”をキャラクターに押し付けてしまっているので、特に“今、世界がこうだから”ということではないのですが、内容は常に変化させていると思います。お客様を傷つけるつもりが一切無くても、そう感じる人がいるかもしれないということを念頭に置いて。
 本当だったらこういう演出を試してみたい、というのも例を挙げたらキリが無いのですが、出来ることと出来ないこと、私が作家として大切にしたいこと、変えられない絶対的なものと、柔軟に変化させる部分を見極めていけたらと思っています。難しいんですけど、芯がブレちゃったら産まれてきたキャラクター達がかわいそうなので。“コロナ禍だから”と言い訳せずに、これまでもこれからも、きちんと考えるべき事柄だと思います」

――最後に、公演をご覧になる皆様へ一言メッセージをお願いします。

 「リーディックシアターとしての『THE∞×Family』は、このteam.Fightで幕を閉じます。このお話だけ観ても楽しめるようになっていますが、最も危険で刺激的な展開が待っているので、声と音のぶつかり合いを楽しんで頂けたら幸いです。お客様の拍手があって“ジ・エイト”の音楽は形になるんだな、と思っていて。何かひとつ、記憶に残る台詞があったら、こんなに嬉しいことはありません。ドレミの歌も、フレディーの決意も、最後まできちんと導きます。どうぞよろしくお願い致します」

(取材・文:西本 勲)

プロフィール

二宮 愛(にのみや・あい)
音と声の世界を愛する作家として、ドラマCDから展開される作品を多く発信。作詞、漫画原作、舞台やゲームのシナリオなど活動の幅を広げる。主な作品に、ドラマCD『Are you Alice?』、『停電少女と羽蟲のオーケストラ』、朗読劇『錻力のマリ・アンペール』、音楽朗読劇『I’m ふたりぼっち』、リーディックシアター『お憑彼サーカス スターダストビオレット』、『お憑彼サーカス スターダストビオレット』、『お憑彼サーカス 心音スノードロップ』などがある。

公演情報

リーディックシアター『 THE ∞ × Family team. Fight』

日:2022年6月19日(日)14:00/18:30開演
場:恵比寿 ザ・ガーデンホール
料:特典付き指定席16,500円
  指定席8,800円
  (全席指定・ドリンク代別・税込)
HP:http://re-no.co.jp/8mf/
問:レノ mail:readictheate@re-no.co.jp

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