歴史を重ねる名作を更に練り直し、倉田淳自らが演出 人と人とのコミュニケーションと自分自身を探していく、劇団スタジオライフの貴重なレパートリー『WHITE』

歴史を重ねる名作を更に練り直し、倉田淳自らが演出 人と人とのコミュニケーションと自分自身を探していく、劇団スタジオライフの貴重なレパートリー『WHITE』

 1985年に故河内喜一郎と倉田淳により結成され、2020年35周年を迎えた劇団スタジオライフ。1987年から、男優が女性役を演じるという手法をとり、その耽美的な世界観と、演出家・倉田淳の独創的な脚色力、美しく繊細な舞台演出が話題を呼び、幅広い年代の女性を中心に圧倒的な支持を集めている。
 そんな劇団スタジオライフの歴史で、初期に多く創作された倉田のオリジナル作品のなかで、最も多く再演が重ねられているのが『WHITE』だ。高校生男子達を中心人物とし、コミュニケーションの在り方を探ってゆくことをテーマとした作品で、いつも図書室に籠り本だけを相手にしている高校生が、暇つぶしで図書室に現れた三人組と共に愛読書の物語世界へと迷い込み、その中で追い詰められながら、心を開いてゆく自分探しの普遍性が、劇団の新人たちを中心とする「新人公演」の貴重なレパートリーとなり上演を重ねてきた。

 その『WHITE』が文化庁と日本劇団協議会が主催する「令和4年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演俳優部門の公演として、6月8日~19日東京・ウエストエンドスタジオで上演される。歴史を重ねる作品の脚本を倉田が更に練り直し、演出も自ら行う謂わば新生『WHITE』の誕生となる作品に立ち会う船戸慎士、松本慎也、そして育成対象者の吉成奨人が、劇団に脈々と受け継がれてきたそれぞれの『WHITE』に対する思いを語りあってくれた。

芝居のみならず作品上演に必要な全てを学ぶ場

──『WHITE』は倉田淳さんのオリジナル作品で、劇団スタジオライフの長年のレパートリーと伺っておりますが、まずこれまでの公演にご出演になっていらっしゃる先輩方から当時の思い出などをお話いただけますか?

船戸「この中では一番早く劇団に入っている年寄りですが(爆笑)、スタジオライフの新人公演はいつもこのウエストエンドスタジオで上演してきました。でも僕がやった時には恵比寿のエコー劇場での上演で、演出も劇団員の倉本徹さんにやってもらった、『WHITE』の上演史のなかでは、ちょっと特殊な公演だったと思います。そのなかで、もうとにかくがむしゃらにやっていましたし、稽古場での最初のアップから汗をだらだらかいて、ヘロヘロになってから稽古に入るという日々で、肉体的にも精神的にも鍛えられました。
 物語前半を引っ張る3人組の高校生をやらせてもらったのですが、本番では汗でシャツがシースルー状態になっていたくらいめちゃくちゃ走り回って、台詞も多くて出ずっぱりで。大変なエネルギーが必要でしたから、必死に頑張ってやりきったという記憶が強いです」

松本「倉田淳のオリジナルでは一番多く上演されている作品で、船戸さんが4期生、僕が7期生で、よっしー(吉成)は?」

吉成「15期生です。」

松本「そういう期ごとに新人公演をやってきた歴史が劇団にあって、『WHITE』以外の作品で新人公演をやった期もあるのですが、基本的には新人公演では『WHITE』を上演しているんです。じゃあその新人公演ってなんなのか?と言うと、公演を創ることをゼロから全員でやるんですね。芝居はもちろんですが、芝居以外の部分、例えばパンフレットを作るとか、ひとつの作品を上演するまでに必要なことを全て自分たちでやって、公演が如何にしてできていくのかを学ぶ場なんです。
 ですから若手にとっては本当に良い機会だと思いますし、船戸さんが言ったようにすごくエネルギーが必要で、劇団に入って、心と肉体を使ってちゃんと相手に言葉を届けるとか、お客様に思いを届けることを学ぶのに適した演目だと思います。自分探しというテーマも普遍的なので、劇団員全員にとって思い出深い作品ですね」

船戸「大変だった、という思い出ならいくらでも語れるくらいだよね(笑)。でも本当に多くのことを学べるから」

芝居は考えてするものではなく感じるもの

──その『WHITE』に今回取り組まれる吉成さんはいかがですか?

吉成「松本さんもおっしゃったように、歴代の劇団員の先輩方皆さんが通ってきている作品で、これまでにも『WHITE』については伺う機会がとても多かったんです。もちろん『大変だった』というお話もたくさん聞きましたが、同じくらい『糧になった』というお話も数々伺ってきたので、今回僕たち15期生と16期生が初めて『WHITE』に携わるので、不安ももちろんありますが、同じくらい楽しみな気持ちもあります。いま双方がまざりあって、ドキドキしています。」

松本「今回は新進演劇人育成公演俳優部門の公演、演劇界全体の育成公演の一環だから、理不尽なシゴキは多分ないと思う」

船戸「理不尽ってさ(爆笑)!」

松本「いや、必要なことだったんですよ! 必要だったんだけど、もうちょっとクリエイティブな方向に特化してもいいかなと(笑)。だって僕らの期の時は、布団を借りてきてこのスタジオに泊まり込んでたんですから!」

吉成「本当ですか?」

松本「朝起きてご飯を作って稽古して、小道具を作って舞台上とかで寝て、また朝起きて……の繰り返し。スタジオ一面に布団が敷き詰めてあるから、入ってきた人が“これはなんですか?”になる状態で(笑)」

船戸「当時は、疲れるだけ疲れさせた方が余計なことを考えなくなって、そこからポーンと出てくるものが大切だっていう方向性だったからね。芝居は考えてするのではなく、感じるものだというのか、頭でっかちで演じるなという感覚だった」

松本「肉体をギリギリに持っていくことで、気持ちを引き出していくという感じだったんだよね。方法論としては多少乱暴ではあるんだけど(笑)、でも確かにそこで見つけられたものはあったと思う」

──今のお話を伺っていかがですか? 今回のお稽古の方法論は異なるだろうということですが。

吉成「僕は若手育成公演には二回目の参加になるのですが、先輩方ほどではないですが、肉体から入っていくやり方は教わったのかなと思っています。色々と考えて演じた時よりも、肉体がボロボロになって、何をしているのかもわからないくらいの時にやったことが、一番自分の気持ちが通っていた、ということはありました」

船戸「作品に集中するとは?がわかるんだよね」

松本「あとは、若手で集まっているとまず絶対にケンカになるんですよ。肉体的にも、精神的にもギリギリになっているからこそ本音をぶつけあえる瞬間に追い込まれると言うのか。でも結局そうしてぶつかった分、ものすごく仲良くなれるんです。そういう濃いつながりを求められるし、自分のなかでもそれがいま大きな財産になっていると感じるから、良かったなと思います。その経験のなかで先輩たちはすごいなと感じましたし、ものすごく助けてもらったので、今度は自分が与えてもらったものを次につなげていきたいなという感覚がありますね」

自分が見ていた先輩の背中を目指して

──そうした歴史を受け継ぐ側としては感じられることは?

吉成「今までは必ず船戸さんや松本さんたち先輩方に引っ張ってもらっていたので、今回は自分たちから食らいついていかないと、と思っています。若手育成公演に選んでいただいたわけですから、劇団の後輩だけでなく育成公演に参加してくださる方達とみんなで、ひとつのものを作りたいと思っています」

松本「入団して何年目?」

吉成「6年目です」

松本「あぁそうか。僕が新人公演に出たのが2年目だったから、そういう意味ではかなり経験を積んでからの新人公演だね」

吉成「やっぱり1年目の時にひとつ若手だけの公演には出させてもらっているのですが、その時には11期、12期、13期の先輩方が裏方を担ってくださったり、僕らにも色々と教えてくださりながら作品を作ってきたので、その時見ていた先輩方の背中のように、今度は僕達がやっていきたいです」

松本「それは本当に良い機会になるね。倉田さんの演出だし、僕らもまだ知らないよっしーが観られるかもしれない」

船戸「今回ある意味ラスボス登場だからね(笑)。僕達も倉田さんが演出する『WHITE』はやったことがないので」

──そうなるんですね?

船戸「“ここにきて本家がくるのか!”という感覚もあるので、どうなっていくのかも楽しみです。」

──そんな劇団の先輩、後輩同志のお三方が集まってくださったので、お互いに感じる魅力を教えていただきたいのですが。

船戸「僕は松本を“ミスター・パーフェクト”と呼んでいます。全てを完璧にこなせる人なので、いてくれたら安心感が半端ないです。劇団員としては僕が先輩ですが全幅の信頼を置いているし、特に僕は役を演じているとどこかに行っちゃうことがある方なので(笑)、そうなっても必ず軌道修正してくれる、なんとかしてくれるので頼りにしています。吉成とは舞台で絡みだしたのは結構最近なのですが、絡み始めるとちょっとうざいんです(爆笑)」

吉成「それヒドいですよ!!(笑)」

船戸「いや、可愛い時もあるんだけど、度を超すと『伏せ!』という気持ちになる(爆笑)。でもそういう姿勢は大事だと思うし、いいなと思っていますね」

松本「船戸さんは大好きな先輩で、彼がいるだけで稽古場の空気がすごく明るくなります。ムードメーカーって言うのも悔しいくらいにみんなに愛されて、これ以上褒めたくないくらいですが(爆笑)、芝居も僕には絶対にできない表現をされるので羨ましいです。船戸さんになりたいとは思わないですけど(笑)」

船戸「なんだよそれ!(笑)」

松本「いや、でも本当に大好きです! よっしーはすごくいい子で優しくて。でもだからこそ彼の我の強さとか、衝動みたいなのものを見たいなと思っていて、身体能力的にもポテンシャルがとても高い。僕よりもそれはずっと持っていると思うから、その能力と表現が結びつくところを早く見たいです。そういう作品や役にたくさん出会って欲しいです」

吉成「船戸さんとはおっしゃってくださいましたが最近舞台で絡ませていただけるようになったので、裏でもいつぱい構ってもらっています。嫌な顔もなさいませんし……」

船戸「してる、してる(笑)」

吉成「こう言いつつ優しくて(笑)、面倒見が良い方なので、例えるなら絶対遊びに行く隣の家のお兄ちゃんという感じです。期はかなり離れているのですが、お芝居の話はもちろん、それ以外でも話にいきやすい先輩です。松本さんはすごくストイックな方で、何事にも真摯に向き合って妥協を許さない方ですね。そのなかでも、僕らが困って訊きにいけば必ず教えてくださるし、演出家に言われることが膨大でいっぱいいっぱいになって、周りが見えなくなってしまった時にも、そっとアドバイスをくださる優しいお兄ちゃんなので、いつもお世話になっています。そうですね、お二人共お兄ちゃんです」

──本当にひとつの劇団としてつながっている皆さんの素晴らしさを感じますが、では改めてこの公演を楽しみにされている方達にメッセージいただけますか?

船戸 「『WHITE』を本格的に上演するのが劇団としても久しぶりですし、僕は入って半年で携わった作品なので、原点回帰ではないですが、あの頃感じていた思いをもう一度、という気持ちがあります。自分も初心に帰って、吉成たち若手と一緒にお互いの相乗効果でもうひとつ先に行けたらいいなと思っています。今回ベテランと若手が融合し、倉田淳が演出する新しい『WHITE』なので、僕自身もとても楽しみにしていますので、皆さんにも是非観に来ていただきたいと思っています」

松本「いまここにいない先輩方も出てくれますし、僕ら、吉成たち、そして劇団以外の方々もというとても豪華な『WHITE』になっています。日頃から劇団Studio Lifeを応援してくださっている方々だけではなく、僕らの劇団のことを全くご存知ない方々にも演劇作品として面白いものを、観て良かったと思える作品作りをしていきたいと思っていますので、楽しみにしていてください」

吉成「僕自身劇団作品のなかで『WHITE』は是非やってみたかったもので、今回そのなかにキャスティングしていただけたので、先輩方に頼り過ぎず、と言っても頼ってしまう部分もたくさんあると思いますが、自分たちでも率先してひとつの作品を作っていきたいです。今回若手育成公演として劇団作品に外の風が入って、その化学反応でどんな『WHITE』が作れるのか?を頑張っていきたいと思うので、是非ともよろしくお願いします!」

(取材・文&撮影:橘 涼香)

プロフィール

船戸慎士(ふなと・しんじ)
1999年入団。俳優として劇団の本公演は勿論、外部公演への出演オファーも多く出演舞台は優に150本を越えている。シリアスな役から飛び道具的な役までと、役柄の振り幅も大きい。また演出、プロデュース等も手掛け、演技のワークショップも不定期で開催している。
 主な出演作品に、劇団スタジオライフ公演では萩尾望都原作『トーマの心臓』・『なのはな』、レフ・トルストイ原作『アンナ・カレーニナ』、三原順原作『はみだしっ子』、ウィリアム・シェイクスピア原作『夏の夜の夢』等があり、外部公演ではbpm『ネバーランド☆A GO!GO!』(脚本:浅沼晋太郎)、カプセル兵団『からくりサーカス~サーカス編~』(原作:藤田和日郞)、銀河英雄伝説『外伝 オーベルシュタイン編』(原作:田中芳樹)、リリパットアーミーⅡ『傀儡女~時の男 最終章~』(脚本:わかぎゑふ) 等がある。

松本慎也(まつもと・しんや)
2004年入団。入団当初より女性・少年役を含め幅広い役柄や、作品の中心となる役柄を多く演じ、劇団の主要メンバーの1人として活躍している。また外部出演も数多く、多彩な魅力を発揮している。
 主な出演作品に、劇団スタジオライフ公演では萩尾望都原作『トーマの心臓』・『なのはな』、手塚治虫原作『アドルフに告ぐ』、皆川博子原作『死の泉』、トーマス・マン原作『ヴェニスに死す』等があり、外部公演では、舞台『魔術士オーフェン』、舞台『信長の野望・大志 ~最終章~ 群雄割拠 関ヶ原』、舞台『それぞれの為』、舞台『スペーストラベロイド』等がある。

吉成奨人(よしなり・しょうと)
2016年入団。朗らかで明るい持ち味で女性役を含め幅広い役柄を演じ、劇団期待の若手として躍進している。
 主な出演作品に劇団スタジオライフ公演では、萩尾望都原作『音楽劇・11人いる!』、吉田秋生原作『カリフォルニア物語』、三原順『はみだしっ子』、倉田淳脚本『ぷろぐれす』等があり、外部公演では岩﨑大20周年企画公演Supported by東京ジャンケン『bastidores-楽屋-』、明治座アートクリエイトプロデュース公演『雪やこんこん-湯の花劇場物語』等がある。

公演情報

主催:文化庁、公益社団法人日本劇団協議会
『WHITE』

日:2022年6月10日(金)~19日(日)
場:ウエストエンドスタジオ
料:一般5,500円 学生3,000円
  高校生以下2,500円
  ※学生・高校生以下は要学生証提示
  (全席自由・整理番号付・税込)
HP:http://www.studio-life.com/
問:スタジオライフ tel.03-5942-5067(平日12:00-18:00)

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