「少年が青年になるひと時を描く、『ト音』の完成版を目指したい」 菊池修司と松田昇大を主演に劇団5454の代表作を上演

「少年が青年になるひと時を描く、『ト音』の完成版を目指したい」 菊池修司と松田昇大を主演に劇団5454の代表作を上演

 都内の公立高校で新聞部に所属する2人の男子高校生が、学校に蔓延する“嘘”を暴こうとしたことから、思わぬ真実に直面していく様を描いた学園ドラマ『ト音』。劇作家協会新人戯曲賞の最終選考に選出された劇団5454(ランドリー)の代表作であり、かつ高校演劇に熱く支持され再演を重ねている人気作品だ。本作に今改めて取り組む思いを、劇団の主宰で脚本・演出を務める春陽漁介と、主演の菊池修司、松田昇大に聞いた。

春陽「『ト音』を書いたのは20代後半の頃だったのですが、当時、おじさんの説教や過剰にデフォルメした話に辟易していて……。そこに攻撃を食らわせたい!という気持ちを作品にしようとしたんです。でも、どうしてそんな話をするのか?と考えていくと、人を楽しませたいとか、自分を大きく見せたいためについてしまう一種の“嘘”がそこにあったので、その嘘がテーマになっていきました。ただ、劇団公演として過去3回やっているんですが、年齢を重ねるとともに生徒を描いていた初演から先生を描く時間が増えていったんですね。でも今回は主演の2人がエグイほどのイケメンたちなので(笑)。彼らのドラマを観るお客さまも多くいらっしゃいますから、ちゃんと生徒を描くところに戻った『ト音』の完成版を目指したいと思っています」

菊池「そう言っていただけるのは本当にありがたいのですが、やっぱりこの作品って10代の子たちの等身大の葛藤や、精神的にまだまだ不安定な部分が色濃く描かれているなと感じるんです。そこからすると、僕も昇大も同い年の28歳なので、10代の子たちのそうした思いをどう演じて、どう伝えられるのかが凄く大事になってくるなと思います。だからこそ、演じられる喜びと同時にその表現を精一杯頑張りたいです」

松田「修司の言う通りで、そこは本当に大切にしないといけないですし、先生に対してちょっと攻撃してやろうみたいな気持ちって、きっとみんなが大なり小なり通ってきている道ですよね。それを10年後の今振り返るからこそ、逆に新鮮なんだなとも思っています。当時よりそうした心理を冷静に見られているところも、利点にしていけたらいいですね」

―――演じる役柄についてはいかがですか?

菊池「秋生と藤って相対する役どころだよね」

松田「そう思う。僕はこれまで内気な役をあまり演じた経験がないんだけど、自分の中にも両極端な部分があって、人とフレンドリーに話せる時もあれば、大人数に囲まれるとちょっと萎縮しちゃうみたいな部分も結構あるので。それは秋生と藤、両方に通じるものだから、その僕が持っている相反するものをどう藤の方に近づけてアプローチしていけるのか? 凄く楽しみです」

菊池「秋生と藤もそうなんですが、僕と昇大もいい意味で、お互いのキャラクター性が違うんですよね。そんな2人が秋生と藤を演じることも、1つ大事になっていくんだろうなと思っていて。陰と陽に分けるとしたら僕が陽で、昇大が陰というイメージが僕の中には結構あったんです。でも今回演じる役としては陰と陽って、そんなに安易ではないんだけど……わかりやすく言うなら、僕の秋生が陰で、昇大の藤が陽のポジションだとお聞きして、あぁ逆なんだなと」

―――そのあたりも含めて、春陽さんがおふたりに期待されていらっしゃることは?

春陽「さっき『28歳になって~』という話をしてくれましたけど、やっぱり20代ってもちろん大人になりつつ、まだまだ子供の部分もいっぱいありますよね。僕も36歳になりますけど、『子供だなぁ』と思うところがたくさんありますし。秋生と藤は高校生ですが、子供を演じようとするんじゃなく、自分たちの未熟さとか、大人になりたがって背伸びした感覚とか、そういうものは使っていきたいなと思っています。この作品は高校演劇でたくさん上演してもらっていて、“リアル”というのであれば、現役高校生が高校生役を演じることには敵わないわけです。だからこそ、自分たちが今感じることを大事にできる稽古期間にしたいなと。
 僕が持っている2人の印象として、昇大とは『プロパガンダゲーム』を一緒に作りましたが、明るいキャラクターだけど、結構暗い部分というか、臆病な部分があると思っているんですね。それを人前に立つ時に明るく振る舞って隠すというか、人前に出すものではないから、という表現をしていると感じます。修司くんとは、これまで一緒にお仕事をしたことはないのですが、立ち居振る舞いを見ていて、自分が持っている弱さを強く見せることが得意なのかなと。攻撃的とは違うのですが、思いっきりやりきって、相手に投げることができるタイプに見えていて。なので、2人の本来のキャラクターが秋生と藤とは逆という風には、あくまでも僕の中では感じていなくて、優しさでごまかすタイプと、強さでごまかすタイプ、という見え方で作っていけたら楽しいのかなと思っています」

―――お話が深くなってきましたが、松田さんは春陽さんの演出を受けたときの印象はいかがでしたか?

松田「……あの、本当に辛くて」

菊池「そうなんですか!?」

春陽「人による、人による!(笑)」

松田「いや、春陽さんが厳しいということではなくて、僕がストレートプレイでしっかりお芝居をするのが『プロパガンダゲーム』が初めてだったので、会話1つすることもそうだし、そこに立っているだけでも不自然だったりしたんです」

春陽「確かに立って歩いたときに『なんか変』とは言った(笑)」

松田「そうなんです。“普通”を演じるって、こんなに難しいことなんだということを、凄く学ばせてもらいました。今も僕、声を少し高く話しているんですけど、『普通に話してみて』と言われたら、普通に話そうと思って喋っているだけで、結果的に普通に話せていないというか、脳と体がノッキングするみたいなことがたくさんあったんです。本当に劇場に入って、場当たりもした後、本番の直前まで春陽さんに稽古をつけてもらったくらい苦戦した、辛い期間ではあったんです。でも本番に入って、自分の中で腑に落ちた瞬間に、めちゃくちゃ楽しくのびのびとできるようになったので、振り返った時の感想が両極端になっているんです。凄く辛かったけれども、とても楽しかったという記憶なので」

春陽「諦める時間が結構大変なんだな、という印象があって、やっぱり商業的な舞台とか2.5次元などの見せる作業の多い芝居に出ていたので、自分が作ったものを捨てるとか、諦めるという作業をしないようにしてきたと思うんです。でも『プロパガンダゲーム』でやっていたのは、目の前の相手に対して何を感じるのか?を発見し続けるという作業だったので、自分が予め作ってきたものや見せ方を捨てなければいけない、諦めないといけないということがあって。それは稽古期間にはどうしても感じづらいんです。お客さんにリアクションをもらってやっと分かることだったりするので。そういう辛い稽古期間を経て、本番でちゃんと感じられたというのは、よく粘ってくれたな思います」

菊池「今の昇大の話を聞いていて、僕も稽古がより楽しみになりました。僕はどんどん言ってもらいたいタイプなので、まだまだ未熟でわからないことがたくさんありますし、言ってもらえるって、やっぱり凄く成長できる機会だと思っているので、たくさん教えていただきたいです」

春陽「あ、でも僕も教えるというよりは、『教えてくれ』ってよく言うよ」

松田「そうそう(笑)」

春陽「『今何を感じているのか、どういう状態だったのか教えてくれ』、『ここではこういう状態になっていたくないか?』とか、言うかな。『こうして、ああして』ではなくて、どういう意識なの?と」

松田「自分で考えるように、感じられるように言ってくださる方だなと思います」

春陽「だから、何も感じていない状態の時に『変だよ』と言ったりしましたね」

―――とても有意義なお稽古期間になりそうですが、ここでキャストおふたりがお互いに感じている魅力を教えていただけますか?

菊池「昇大の魅力ですか? そうですね、あんまりないかも(爆笑)」

松田「おい(笑)」

菊池「いやいや(笑)。昇大って誰にでも好かれるんです。嫌いと言っている人を見たことがないくらいで、一緒にいて本当に居心地の良い人で。周りとの接し方を見ていても凄く物腰柔らかで、そういう人としての部分って結局役にも反映されるものだと僕は思っているので、お芝居を見ていても、プライベートの佇まいを見ていても、誰にでも好かれる人だなと、何回か共演して思っています。ですから僕もとてもラフに、何も考えずに話せる関係性になれているので、とても魅力的な人だなと思います」

松田「ありがとうございます。修司の魅力もあんまりないかなと(爆笑)」

菊池「やめとけよ!(笑)」

松田「(笑)。何回か一緒にやらせてもらって、その作品に対する思い、一つひとつに愛があって全力で取り組もうとするんです。それをわざわざ稽古中などに言うことはないですけど、やっぱり終わった後などに話してみると、そういう思いがいっぱい出てくる人だから、熱い気持ちを中に持っている男、“漢”と書きたいほど、男らしい人だなと思っています」

菊池「ありがとう!」

―――そんなおふたりを中心に生まれる、完成版の『ト音』を楽しみにしています。是非みなさまから舞台に期待されている方たちにメッセージをお願いします。

松田「紀伊國屋ホールという素敵な舞台で演劇ができるという喜びと、春陽さんの演出で修司と2人でできるという喜びとがあります。本当にこの作品をこのタイミングでやれることがとても嬉しいので、お芝居を好きな方はもちろん、みなさんに全力で楽しんでもらえるように、リアルな高校生を肌で感じていただけるよう精一杯頑張りますので、楽しみにしていてください」

菊池「昇大と一緒にやれる喜びをかみ締めつつ、作品自体も凄く素敵で、劇団5454さんの代表作を演じられるというのがとても光栄です。そのためにも、これまでの上演を超えるものをお届けしたいという気持ちを誰よりも強く持って、稽古、そして本番をやり遂げたいなと思っています。何よりも僕は、舞台を観終わった時にすぐ立てないような、色々なことを感じさせられる作品って素晴らしいなと思っていて、今回の作品はまさにそういう作品だと感じているので、そんな様々なものを届けられるように頑張りますので、是非劇場に観にいらしてください」

春陽「修司くんが言ってくれたように、舞台においては余韻がとても大事だと思っています。今回の話は青春群像劇でもありますし、大人たちの若者たちに接する態度だったり、テーマはたくさんあるので、舞台を観て楽しんでもらうことと同時に、テーマを持ち帰っていただいて、自分の身の回りに目を向けてみたり、自分の友達のことを少し思い出してみたりなど、いつまでも残る公演にできたらなと思っています。そのためにはお客さまが必要不可欠ですし、この作品は、少年から青年になるまでのひと時の話で、そうした時期の心情描写や、登場人物の成長を彼らと一緒にしっかりと描いて、紀伊國屋ホールという素敵な舞台から何を持ち帰っていただけるのか?をとても楽しみにしています。是非そのひと時を体感しに劇場にいらしてください」

(取材・文:橘 涼香 撮影:山本一人(平賀スクエア))

五月病を乗り切れる!?かもしれない、生活の時短術を教えてください!

菊池修司さん
「朝早くに起きて体を動かすことです! 僕は朝6、7時に起きてストレッチヨガを、1時間やることにハマってます! 体を朝から起こすことで、やりたい事を、やらなきゃいけない事をこなす事ができ、1日が長く有意義な時間になります! 前日に早く寝て朝早く起きるのはハードル高く感じますがやってみると本当に効果的なので、是非、みなさんも試してみてください!」

松田昇大さん
「結局、何をするにも時間をかけない為にはやるべき事をその場でやってしまうことが早いかなと思います。自分は作業中に気が逸れたり、やるべき事を忘れたりすることが多いタイプなので、気が逸れる前に終わらせる事を心がけてます。終わらせてしまえば、あとはゆっくり出来ますからね」

春陽漁介さん
「1日を2日にする。生活の時短術というよりは『締め切りが迫った時に、どのように執筆時間を増やすか』という観点なのですが……。僕の場合、集中して書き続けられる時間って長くても6時間くらいです。大体1時間1ページ程度のスピードなので、1日6ページしか進まないわけです。それじゃ間に合わねぇ!って時は、1日を12時間に変更します。【睡眠】4時間半、【執筆】6時間、【食事などその他】1時間半、のように。これで残り1週間が2週間になるという術を使ったりします。この世の多くの方には全く参考にならない術ですけど」

プロフィール

菊池修司(きくち・しゅうじ)
東京都出身。2016年、劇団番町ボーイズ☆に加入後、舞台を中心に活躍を続けている。劇団公演の他、近年の主な出演に、舞台『ヴァニタスの手記』、『HELI-X』シリーズ、『ブルーロック』シリーズ、『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 3』など。

松田昇大(まつだ・しょうた)
三重県出身。ダンスボーカルグループでの活動後、2019年より舞台を中心に俳優として活躍。近年の主な出演に、舞台『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage シリーズ、『HELI-X』シリーズ、『プロパガンダゲーム』、『咎人の刻印』シリーズ、『ブルーロック』など。

春陽漁介(しゅんよう・りょうすけ)
2012年、「劇団5454(ランドリー)」を旗揚げ。第2回公演『ト音』が劇作家新人戯曲賞の最終選考に選出、高校演劇で愛され続ける作品となる。2022年、小説『プロパガンダゲーム』の舞台化にあたり脚本・演出を担当し、エンタメ性と濃密な会話表現が反響を呼んだ。また、若手演出家コンクール2022で優秀賞を受賞するなど、活躍の場を広げている。

公演情報

舞台『ト音』

日:2024年6月13日(木)~18日(火)
場:紀伊國屋ホール
料:SS席[最前列・特典付]15,000円 
  S席[特典付]9,500円
  A席8,500円 B席7,500円
  C席3,500円(全席指定・税込)
HP:https://mmj-pro.co.jp/528hz-tone/
問:メディアミックス・ジャパン https://www.mmj-pro.co.jp/contact/stage/

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