不思議な事件とある夫婦の愛と奇跡を描いた感動のファンタジー 暗喩に富んだファンタジックな世界をG2が舞台化

不思議な事件とある夫婦の愛と奇跡を描いた感動のファンタジー 暗喩に富んだファンタジックな世界をG2が舞台化

 2010年に出版されると、かつて無い独創的な世界観が大きな話題となったカナダの小説『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』が、演出家のG2によって世界で初めて舞台化される。
 物語は、奇妙な銀行強盗が起こるところからスタートする。その日、その銀行に居合わせた13人の被害者たちは、銀行強盗に“魂の51%”を奪われてしまう。かくして13人の被害者たちに信じられないような出来事が起きる。
 劇中には、一見、突飛に思える“妻が縮む”や“夫が雪だるまになる”などのファンタスティックな設定が次々と登場するが、それらは現実社会のさまざまな事象のメタファー(暗喩)となっており、さまざまな解釈を呼ぶ。
 花總まりとともに主演を務める谷原章介に本作への想いを聞いた。


―――原作を読んで感じた本作の魅力や面白さを教えてください。

 「花總さん演じるステイシーと僕が演じるデイビスという夫婦間のディスコミュニケーションや無理解、拒絶を描いている作品です。ファンタジックな設定ではありますが、それは、関係性がポジティブではないところに生じる様々な問題を比喩で描いているということなのだと思います。
 僕自身も結婚して、かれこれもう17年目になりますが、やっぱりいろいろなことがあるんですよ。僕自身、反省することもありますし、まだまだこれから改善しなくてはいけないと思うところもあります。そうした自分のことについても改めて深く考えさせられる原作だなと思います」

―――谷原さんが演じるステイシーの夫については、今はどんな役柄だと感じていますか?

 「一見、理解があって理性的なようで、独善的だなと思います。結果として、自分が思う正解は譲らない。彼女には彼女の正解があるんですが、それを認めないので、彼女はどんどん縮んでいってしまうのだと思います。もっと分かりやすく暴力や暴言を振るっていれば、この夫はダメだなとすぐに分かりますが、彼の場合は、柔らかな口調で、自分の思う正解を相手に述べながら、そこに1つの着地点が見出せないとなったら、静かにため息をついて下を向いてじっと黙り込んでしまうんですよ。それは、ある種、分かりやすい暴力や暴言を吐く人よりもタチが悪い面もあるのかもしれない」

―――そうすると共感できるところもありますか? それとも、ご自身との違いを感じることの方が多いですか?

 「違うと言えば根本的に違うとは思いますが、彼の静かな拒絶は理解できる部分でもあります。彼は、2人の正解を見つけるのではなく、自分の正解しかない。ですが、そう考えてしまうことは、誰にでもあるのではないかなと思います。
 僕の中にもそういう一面もありますし、僕自身、原作を読みながら『そういえば昔、こんなことがあったな』といろいろな出来事を思い出し、『これからはこう変えていきたいな』と改めて自分自身を振り返りました。きっとお客さまも同じようにご自身のそうした経験を思い出し、内面をグーッと掘り下げて観ていただける舞台になるのではないかなと思います」

―――そうした役柄をどう演じていきたいと考えていますか?

 「現場に行って、一つひとつをより具体的に掘り下げていく作業が大事になるのではないかなと思います。僕の実年齢は彼より若干上だと思いますが、その分、僕はいろいろなことを経験していて、これまでに妻との間にもいろいろなやり取りがあって、2人で築き上げてきたものがあります。僕が悪いこともあるし、お互いにうまく前向きな気持ちになれなかった時もありますが、そういった意味では、少し前の自分が経験しているような、そして今の僕も経験しているようなことが描かれていると思うので、役作りをするというよりは、自分が今まで経験したことが表に出てくるのかなと思います」

―――妻・ステイシーを演じる花總さんとは今回、初共演とお伺いしていますが、花總さんの印象を教えてください。

 「華があって、歌も上手いし、お芝居も上手だし、もちろん踊りも上手。素晴らしい方とご一緒できる機会が得られて本当に嬉しいです。一度、お会いしてお話をさせていただいたときに、すごく柔らかい方で、受け止めてくださるような包容力もある方だなと感じました。もちろん、物作りをしていく上では、それだけではないと思うので、お芝居を通してどんなことを主張されていくのかもすごく楽しみにしてます。
 ステイシーは、自分の思いを主張をしながらも、不安を抱えて揺れ動く役だと思います。僕が演じる夫は、全編を通してそれに気づいてあげることができない。そうした関係性の中で、どのようなステイシーを作り上げていかれるのか、とても楽しみです」

―――演出のG2さんとは「こどもの一生」以来、12年ぶりになりますが、G2さんとの物作りはどんなところに楽しさがありますか?

 「『こどもの一生』も具体性がない舞台でした。イスが並んでいて、テーブルがあるだけで、観ている方にいかに想像していただくかという作品だったので、今回のこのファンタジックなお話もG2さんなら具現化できるんだろうなと思います。同時に、この原作をどう作り上げるのだろうと一ファンとして楽しみでした。稽古場でどのように立ち上げていくのか、どのように演出なさるのかを楽しみに挑みたいと思います」

―――谷原さんは、映像作品や司会業などでもご活躍されていてお忙しい中、舞台にもコンスタントに出演されていますが、舞台で演じるからこその面白さややりがいをどこに感じていますか?

 「映像作品は、瞬発力を求められて、自分の中のエネルギーをワーッと出す作業になります。しかも、1回しか芝居ができず、それがレコードされて残ってしまうので、独特の緊張感があります。ですが、舞台ですと、一つの脚本、セリフ、場を何回も何回も稽古場でやらせてもらった後、舞台の上でお客さんの力も借りて芝居することができる。もし、そこで失敗したとしても、またもう1回できる。舞台の千穐楽まで新しいアイディアも試せます。舞台には、一つの作品に向き合い続けることができる贅沢さがあります。そうした経験は、自分の中で蓄積されていく貴重なものだと思っています。なので、せめて舞台を年に1回ぐらいはやらせていただきたいなと思っています」

―――では、観客として舞台を観た時には舞台の魅力をどんなところに感じますか? 

 「これは舞台に限ったことではありませんし、ご質問の答えとはズレてしまうかもしれませんが……物語というものは一部の人にとって必要なものだと思います。それは今の自分が生きている物語から離れたいという欲求を叶えるもので、離れたことによって自分の人生を客観視でき、明日を生きていく力に変わると思うからです。
 僕はちょうど東日本大震災があった時、TBSの『王様のブランチ』という番組で司会をやらせていただいていましたが、圧倒的に無力だと思ったことを覚えています。自衛隊の方々のように実動部隊として助けに行くこともできない。ボランティアの方たちのような経験やノウハウもないので、実際に助けることも役に立つこともできない。消防隊員の方たちのように人命救助ができるわけでもない。お医者さんのように治療してあげることもできるない。エンタメをやっている僕はなんて無力なんだろうとすごく思いました。
 でも、今はそうは思っていません。人はパンをのみを食べて生きるわけじゃないじゃないですから、心にも栄養や食べ物が必要です。そして、心の栄養が必要だと気づいた時、僕たちがやっているこうした舞台やドラマ、映画、お笑いや音楽といったエンターテインメントが人に力を与えることができるのだと思います。僕たちは、実際に命を助けにいくことはできないかもしれませんが、被災地の皆さんが心の栄養が欲しいと思った時に、必要なものをご提供できればと思っています」

―――改めて、今作の見どころや公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

 「G2さんが昔からやりたかったという、温めに温めた企画です。花總さんをはじめ、素敵な役者の皆さんと一緒に一丸となって挑んでいきたいと思います。皆さんの生活の延長線上にある悩みや問題が、暗喩という形で各場面に散りばめられています。この作品は、日常生活から少し離れて息抜きをするためのものであると同時に、違う世界の物語に身を置くことで、現実の自分を客観視できるものでもあると思います。今回は、自分を客観視できる舞台になっていると思うので、ぜひご自身の悩みを掘り下げに来てください」

(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美 ヘアメイク:川端富生 スタイリスト:澤田美幸)

プロフィール

谷原章介(たにはら・しょうすけ)
1972年生まれ、神奈川県出身。1995年、映画『花より男子』道明寺司役で俳優デビュー。「偉人の年収How much?」など、テレビ番組の司会やナレーションでも幅広く活躍。2019年には、主演ドラマ『BS 笑点ドラマスペシャル 五代目 三遊亭圓楽』が日本民間放送連盟賞 番組部門(テレビドラマ)優秀賞を受賞。主な舞台出演に、『幽霊はここにいる』、音楽劇『コーカサスの白墨の輪』、『あわれ彼女は娼婦』、PARCO&cube Presents『こどもの一生』、シアターコクーン・オンレパートリー2018 DISCOVER WORLD THEATRE vol.4『民衆の敵』、PARCO 劇場オープニング・シリーズ『チョコレートドーナツ』、日本総合悲劇協会Vol.7『ドライブイン カリフォルニア』など。

公演情報

舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

日:2024年4月1日(月)~14日(日) ※他、大阪・名古屋公演あり
場:日本青年館ホール
料:S席11,800円 A席9,800円(全席指定・税込)
HP:https://thetinywife.com/
問:舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』事務局
  Tel.0570-002-029(平日10:30~18:30)

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