

『生きがいを捉え直すきっかけをつくる』をコンセプトに活動するマルチアーティストチームProject ORIGIN。2023年に行った立ち上げ公演『ふしぎの国のアリス』は全公演満席となり、第二回主催公演は誰もが知る昔話『浦島太郎』を大胆に再構築した物語を上演する。
主宰を務めるエンドウレイの元に、アクター、タップダンスやバレエ、アルゼンチンタンゴといった多彩なダンサー、三味線やバイオリン、クラリネットなどの生演奏が集い、新たな化学反応を起こしていく本作。公演を約1ヶ月後に控えたタイミングで稽古場取材を行った。
この日行われていたのは、浦島太郎が暮らす村と海の中にある竜宮城、それぞれで起きているトラブルが説明される冒頭の場面と、この日が初参加だというミュージシャンたちとの確認作業、クライマックスで披露されるダンスの振り入れが行われていた。


冒頭のシーンでは、陸と海中それぞれで儀式的に行われてきた舞があること、その儀式がうまくいかずに海が荒れていること、太郎は舞の名手だった兄の後を継ぐのを期待されていれることなど、昔話の『浦島太郎』とはまた違う、シリアスな事情が語られる。ダンサーやアクターが見せる優雅ながら力強いダンスによって、一気に物語に引き込まれた。

竜宮城に向かう場面では布を使ったしなやかで幻想的なパフォーマンスをするダンサー、パーカションを奏でるミュージシャンが入り乱れ、水の流れを表現するように動き回る。
この時点では衣装やセットがついていないためシンプルだが、多彩なハーモニーとドラマティックな身体表現によって豊かなパフォーマンスが繰り広げられた。
そこに演出・構成を担当するエンドウレイが細やかなアドバイスを行い、視覚でも聴覚でも楽しめるパフォーマンスを全員で作り上げていく。
続いて、この日が初参加だったミュージシャンの面々と、音楽の流れを冒頭からラストまで確認していく。
『浦島太郎』と聞くと、日本舞踊や和楽器をベースにしたパフォーマンスを想像するが、Masaki.による楽曲はエキゾチックなもの揃い。さらに、ミュージシャンの楽器が三味線やクラリネット、コントラバス、バイオリンにパーカッション、バンジョーと多国籍なのに加えて、ダンサーもジャズやヒップホップ、バレエ、ベリーダンスと多彩なルーツを持つメンバーが揃っている。
異種格闘技のようなセッションが楽しく、次はどんな組み合わせで、どんなパフォーマンスが披露されるのかワクワクしてくる。
各楽器によるソロ回しに合わせてダンサーがソロパフォーマンスを披露する見せ場も。それぞれの楽器が持つサウンドの特色や魅力、各ダンサーの個性がよりわかりやすく伝わるシーンになっており、完成系が楽しみになった。

今回の振り付けは、『Legend Tokyo Chapter.11』をはじめとする数々のダンスコンテストで優勝しているZoooMが手がけている。振り入れではチームごとにZoooMの3人から美しさや迫力をアップさせるコツなどを学ぶ。それによって一体感とキレがグッと増し、見ていたチームからも「おお~!」と感嘆の声が上がっていた。
ラストは音楽がテンポアップしていくこともあり、ダンスも流れるような美しさからパッション溢れる力強いものへ変わっていく。見ているだけで息が上がりそうな勢いだが、振り入れの確認後も各チームのメンバーが声を掛け合って確認するなど、コツコツと練習を積む様子が印象的だった。
本作のテーマの一つに“限界突破”があるそうで、一人ひとりが自身の限界に挑戦し、最後には溶け合っていく構成になっているという。安里太志演じる浦島太郎を物語の中心に置きつつ、アクター、ダンサー、ミュージシャンがそれぞれの全力を発揮する姿も見どころと言えるだろう。
本番で見られる限界突破と、その先に待つだろう感動や充実感に対する期待が高まる稽古場だった。誰もが知る昔話に新たな物語と見応えのあるダンス、魅力的な音楽が加わった作品を、ぜひ劇場で体感してほしい。
本作は2025年5月6日(火・祝)に北とぴあ つつじホールにて上演される。
(取材:吉田 沙奈)
公演概要

【日程】
2025年5月6日(火・祝)
12:00:昼の部開演
17:00:夜の部開演
※開場は、開演の45分前
※上演時間:約2時間
【チケット】
応援チケット:10,000円
一般:5,000円
U18:1,000円
(全席指定・税込)
【出演】
――ACTOR ――
安里太志(タップダンス) / 片岡芽衣 / 後藤亜蘭 / 鈴木敦也 / 青木俊明 / 植松翔子 / 渡邉茉奈 / 門沢結音 / 野井一十
――DANCER――
AKANE(ストリート) / Kaito(アルゼンチンタンゴ) / 門沢奏音(キッズ) / 門沢志音(キッズ) / 紀田美咲(キッズ) / 久保万依(ジャズ) / KΘKΘPELLI(nouses)(コンテンポラリー) / 三條智果(ジャズ) / 四戸智紀(バレエ) / soma(コンテンポラリー) / 瀧澤美音(キッズ) / にこるにこふ(ニュースタイルハッスル)/ 平田栞(コンテンポラリー) / Yolo(コンテンポラリー) / Risa(バレエ) / Rikamoon(Jena Oriental Dance Studio) (ベリーダンス)
――MUSICIAN――
Masaki. (三味線・ピアノ・Cメロサックス等) / Akane(クラリネット)/ 田中美紀(コントラバス)/ 成澤幸央(バイオリン)/ Hibiki WATANABE(パーカッション)/ ほそみゆたか(ギター・バンジョー)
【スタッフ】
演出・構成:エンドウレイ / 脚本:植松 翔子 / 音楽:Masaki.
わたなべひでお(舞台監督) / 稲子まさのり(音響) / 西谷伶(舞台美術) / 南条真沙代(照明) / ZoooM(振付) / 世一麻恵(クリエイティブディレクター) / 岡井遥(衣装) / 久保京介(ドラマトュルク) / canna(メイク) / 田中一光(映像) / 蒼島めぐ(広報) / 礼奈(コミュニティマネージャー) / 大澤健太郎・石毛美羽(宣伝美術) / 鈴木健斗・寺田和歩(制作)/ 主催:一般社団法人ORIGIN
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