【公演レポート】Flying Trip vol.18『ギミトリックバード』出演:楢崎誠/西銘駿 

金の切れ目は縁の切れ目か?
楢﨑誠&西銘駿出演『ギミトリックバード』開幕!

Flying Trip企画・制作の舞台『ギミトリックバード』が7月13日(水)にこくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて開幕!

Official髭男dismのメンバーである楢﨑誠と、仮面ライダーゴースト役を務め、近年では2.5次元を含め多くの舞台・映像に出演する西銘駿らを中心に、“仮想通貨”をめぐる現代の闇を描いた社会派な作品だ。

【STORY】

三流大学に進学後、就職活動もせず
怠惰な日々を過ごしていた阿久津(西銘 駿)。
彼は中原宙也(楢﨑 誠)が率いる劇団の主軸メンバーになるが、
こちらの活動もパッとせず、何もかもうまくいっていなかった。
そんな時、若手起業家の沖田(武子直輝)と出会う。

阿久津はまんまと彼の口車に乗せられ、投資の世界に入る。
だが、そこは怪しくグレーな組織であった。
阿久津は組織の底辺から、のし上がるための餌食を献上。
仲間たちも罠に落としていったのだが――。

【REPORT】

Flying Tripの春間伸一の作・演出の作品といえば、2020年6月に公演された『あいまいばかりの世界』にて、すでに“新型コロナウィルスが蔓延する世界”を舞台にした作品を上演、いち早く世の中の動きをとらえ、作品に反映させる印象がある。

そんな春間が今回描いたのは、目標や終着点が曖昧だけども、自己顕示欲、自己愛から抜け出せない若者が、自分の可能性を信じて“仮想通貨”の世界に溺れていく、これまたなんとも現代的な問題だ。

西銘駿演じる阿久津は、三流大学を卒業後、楢﨑誠演じる中原宙也主宰の“劇団アポロ”に身を置きながら、バイトに励む毎日。劇団の中では中原に頼られるポジションで、なんとなく満たされている感じはしつつも、劇団自体は鳴かず飛ばず……金もない、明るい未来もない、どこか空虚な日々を送っていた。

そんな阿久津に、和賀敦史(演・若菜太喜)が声をかける。「すごくいい人に出会ったんだ」――そう言って和賀が紹介したのは、武子直輝演じる沖田秀人。沖田は“プレミアミッション”の若手起業家で、阿久津の有能さを褒め称えながら、彼に投資の話を持ちかける。

“劇団アポロ”側は、愛嬌たっぷりの二宮みさこ(演・熊沢世莉奈)、文句は言いつつも劇団を支える小暮雅紀(演・松本祐一)ら、基本“いい奴”しかいない。特に楢﨑演じる団長・中原は典型的な“いい奴”だ。

劇団員の要望は何でも聞いてしまうし、何だかんだ自分が1番いい役をやっていても、楢﨑自身がもともと持ち合わせている柔らかなオーラも相まって、どこか憎めない。しかし“いい奴”が売れるとの限らないのが演劇界の厳しいところだ。

そんな中原から頼りにされ、無碍にできない阿久津もまた人の良さが伺える。ただ、彼は鬱屈とした毎日から抜け出したい、“周りの奴らと、自分は違うんだ”――物語冒頭から、そんな気持ちを抱えていたように思う。

西銘の芝居が、昨今のSNSなどでもよく見られるような“若者のリアル”を描く。

その感情を見事に言い当て、共感したり突き放したり、まさに翻弄しながら彼の心を絡めとってしまったのが沖田。
武子直輝のギラついた大きな瞳が、「今だ!」とばかりに光り、阿久津を堕とす瞬間は見物(みもの)であった。

沖田たち“プレミアミッション”側は“劇団アポロ”とは対照的に、見るからに堅気じゃない糸川満(演・上地慶)や、イケイケな前島慎吾(演・斉藤秀翼)といかにも“ワルそう”な連中だ。しかしその中でも沖田は好青年風で、そのギャップがまた観客を魅了する。

お金がなければ豊かな生活はできない。だがしかし、お金さえあれば人は幸せになれるのか――。

作品タイトルにあるバード、鳥を題材にした“劇団アポロ”の演目と、“プレミアミッション”での展開の二重構造が非常に良く出来ており、観客に本当の幸せとは何なのかを訴えかけてくる、まるで『クリスマス・キャロル』のような作品。

 “金の切れ目が縁の切れ目”という言葉があるが、1度贅に囚われてしまった阿久津に対し、中原がとった驚きの行動とは……?

その目でぜひ確かめてほしい。

文・写真:通崎千穂(SrotaStage)

Flying Trip vol.18『ギミトリックバード

公演期間:2022年7月13日 (水) ~2022年7月21日 (木)
会場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
出演:楢崎誠 / 西銘駿 / 熊沢世莉奈 / 千春 / 吉宮瑠織 / 斉藤秀翼 / 若菜太喜 / 新井雄也 / 松本祐一 / 秋山皓郎 / 大下翔生 / 鈴木一希 / 上地慶 / 武子直輝

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