【開幕レポート】舞台「ヲタクに恋は難しい」主演 :土井一海、堀内まり菜

通称「ヲタ恋」として親しまれる大ヒット漫画を原作にした舞台『ヲタクに恋は難しい』が、新宿のシアターサンモールで開幕した。(5月15日まで)

 「ヲタクに恋は難しい」(ふじた著)は、隠れ腐女子のOL 成海と、重度のゲームヲタク宏嵩という、ピュアなヲタク男女の不器用でコミカルな恋愛模様が読者の心を掴み、pixivで発表されている「オリジナル漫画ブックマーク歴代1位」にランクイン。2018年にはTVアニメ化、2020年には実写劇映画も大ヒットを記録した大人気作品。

今回の舞台『ヲタクに恋は難しい』は、2021年秋に完結した原作コミックの完結後初となるエンターティメントで、主演の土井一海堀内まり菜を中心に、スピーディで笑えて、ちょっとホロッともする、様々な恋愛模様が描かれている。

【STORY】

隠れ腐⼥⼦のOL・成海(堀内まり菜)は転職先で、ルックスよく有能だが、重度のゲームヲタクである幼なじみの宏嵩(土井一海)と再会する。

旧交を温めた二人だったが、腐女子であることを告白した為に恋人にフラれたと嘆く成海に、宏嵩は「俺でいいじゃん」と意外なひと言!とりあえず付き合い始めた二人だったがヲタク同⼠の不器⽤さ故、葛藤やジレンマを感じ、なかなかすっきりと心を通じ合わせることができない。

一方、同じ社員の樺倉(小笠原健)と花⼦(椿梨央)も、実はアニメヲタクとコスプレイヤーで、ひょんなことから「ヲタバレ」したことをきっかけに、四⼈は意気投合。宏嵩・成海を⾒守る⼆⼈は、一見いつも喧嘩ばかりしているように見えるものの、何か事情がありそう。

また、宏嵩の弟・尚哉(優樹)は、ゲーヲタの兄と違って⾮ヲタクだったが、⼀⼈でゲームに没頭する同級⽣の桜城光(小田川颯依)に兄の⾯影を⾒て、友達になりたいと願う。やがて⼀緒に遊ぶようになった⼆⼈は少しずつ仲良くなっていくが……

普遍性に満ちた愛のかたまりの物語

様々な生物が置かれた環境に順応して進化していくように、言葉も時を経てその意味合いが変化していくことがとても多い。
今回の作品タイトルになっている「ヲタク」も一般的になっていた「オタク」=特定の趣味に傾倒し、ある意味趣味の域を超えた専門知識を持っている人たち、の総称から、更にひとつのジャンルに特化して趣味を極め、そのことを周囲には公表していない人たちという、一種の細分化から生まれた言葉だ。だがそもそもの「オタク」自体が、一般的に使われ始めた1980年代当初にあった、趣味のみに耽溺しているといったネガティブな意味合いからはすでに遠く離れていて、「○○が大好き!」とほぼ同義のライトな言葉になっているように思う。

実際漫画を数多く読むのも、アニメを楽しむのも、舞台に通うのも単純化すればみんな「○○オタク」だし、その魅力を語りはじめたら、ひとり一人がそれぞれの好きなものに対して、深いこだわりと愛を山ほど持っているはずだ。

 この舞台には、そんな「○○オタク」「○○ヲタク」であればあるだけ、独自のこだわりと一家言がある故に、一気に意気投合もすれば、とてもささいなことで譲れないぶつかり合いになってしまったりもする「ヲタクあるある」のシチュエーションがあちこちに描かれていて、わかる、わかると作品世界を素直に楽しむことができる。

だが、それ以上に素晴らしいのが、この作品が単なる「ヲタクの恋」にとどまらず、人と人との結びつきの尊さとそれ故の難しさ、何よりも大きなときめきが、登場人物たちの繰り広げる恋の顛末にきちんと描かれていることで、そのロマンティックな展開にドキドキさせられる。
考えれば恋が難しいのは「ヲタク」でも「非ヲタク」でも全く変わらないことで、その普遍性があくまでも軽やかな描写のなかにたっぷり入っているのが、作品をとても身近に感じさせた。特に小さなエピソードがひとつずつ積み重なっていく原作世界を、演出の佐野瑞樹、脚本の畑雅文がとても大切にしているのが伝わり、はじり孝奈の適度にメルヘンな舞台装置も含めて、短い場面のつながりで様々に時と場所が変化していく物語世界を支えていた。

そんな舞台に躍動するキャストは、重度のゲームヲタクの二藤宏嵩役の土井一海が、まず宏嵩にぴったりの痩せ型で長身のビジュアルで魅了する。辛辣な言葉も、冗談も、恋の告白なのか!?な発言までがマイペースな一挙手一投足に味わいがあるし、付き合いはじめたばかりに友達だった時との距離感がはかれなくなるとまどいや、そこから「そういえばちゃんと告白していたか?」と自問自答する。この作品にとって非常に大切な部分をよく押さえていて、終幕に向かうロマンを高めた。

隠れ腐女子OLの桃瀬成海の堀内まり菜は、腐女子であることを告白したばかりに社内恋愛をしていた相手にフラれ、気まずさから転職した先で宏嵩に再会するという、変化球なようでいて、実は直球王道をいったラブコメディのヒロインらしい、あくまでも溌剌とした演技が光る。しばしば登場する「心の声」の場面と、現実との変化も巧みで、無条件に応援したくなるヒロイン像だった。

二人の上司樺倉太郎役の小笠原健は、所謂「理想の上司」だなと思える会社での懐の深さと、寄ると触ると花子と大げんかしているテンションの高さの振り幅が魅力。皆でゲームをしている展開で、アバターとして登場する扮装も非常にキマっていて、根本的に優しい人物なんだなとストレートに感じさせた。

成海の同僚OL小柳花子の椿梨央は、モノトーンのスーツ姿が抜群に似合い、できる会社員としての佇まいと、コスプレーヤーとしてのヲタク心を爆発させた時の、豊かな表情変化が微笑ましいほど。立ち居振る舞いや、手を伸ばすといった単純な仕草もとても美しく、舞台にいて常に目を引く存在だった。

この作品のなかでは、逆に珍しい設定になる「非オタ」である宏嵩の弟・尚哉の優樹は、自分とは趣味やこだわるものがまるで違っている兄を、まるごと認めている尚哉の素直さがよく出ていて、アバター姿の着ぐるみを含め、何もかもが愛らしい。だからこそ一人ゲームに没頭している学友の桜城光と友達になりたいと素直に接していく心情に説得力がある。その光の小田川颯依は、自分ひとりで作り上げていた世界に突然入ってきた尚哉に、恐る恐るながら心を開いていく過程の描写が丁寧で、ある意味かなりの難役だと思うが、そう感じさせない小田川の生み出す自然な感情の流れに見応えがあった。

そして、成海の同僚社員、相庭役の石田隼、馬場役の真嶋真紀人が、仕事はちゃんとこなしつつも、社内の人間関係にも興味津々という役柄で、会社内の雰囲気を作るだけでなく、物語を進める役割も果たしていて頼もしいし、女子社員・千葉役の山下聖良と、クレジットはアンサンブルだが同じOL役として出演場面が多い真木すみれの会話も、会社の部署のなかで起こる出来事に欠かせない存在になっている。山下の自然な台詞、真木のアイドルを思わせるキュートさも全体の中で際立った。

尚哉の学友一条良樹の奥井那我人、三井健介役の佐藤智広は、会社内の話が多い舞台に、学生という異なる立場のやりとりをうまく持ち込んでいて、良いアクセントになっているし、カフェの店員役の遠藤光希も少ない場面で存在感を発揮。全体にラストシーンまで、この恋がどうなる?というときめきにあふれた舞台になっていて、恋愛漫画の舞台化という、2.5次元と呼ばれる舞台作品のなかではあまり多くなかったジャンルの、可能性を感じさせた温かい作品で、配信も決定した千秋楽まで一層の盛り上がりを期待したい。

 初日を控えた最終ゲネプロを終えた直後に囲み取材も行われ、土井一海、堀内まり菜、小笠原健、椿梨央が公演への抱負を語った。

【囲み取材】

──ゲネプロを終えた今の気持ちと初日への意気込みを

土井 二藤宏嵩役の土井一海です。いやー、いよいよって感じでね~(キャスト笑) ゲネって緊張しますね。

全員 しました、しました。

土井 でもゲネがやれて良かったですし、お客様が入って、お客様も交えてようやく開幕か!という気持ちです。嬉しいですし、どういう風にお客様の反応を見られるのかが楽しみです。

堀内 桃瀬成海役の堀内まり菜です。今回はたくさん稽古を重ねてきて、ようやくゲネを迎えていよいよ初日なので、ゲネは初めて舞台上で通したので、結構バタバタしてしまったシーンもあったんですけれども、実際に「ヲタ恋」の世界がここにあるんだ!ということをすごく実感したので、お客様にもこの「ヲタ恋」パワーを存分に届けていきたいと、やる気に満ちております。

小笠原 樺倉太郎役の小笠原健です。まずここまで無事にこられたこと、こういうご時世でもありますので、無事に幕が上がりそうだというところに、プロデューサーをはじめカンパニー全員ホッとしております。いよいよ幕が上がりますので、お客様に向けて誠心誠意、情熱を持って届けていけたらなと。アニメ化され、映画化され、いよいよ舞台化ということで、期待感もあると思いますので、その期待に応えられるように皆で一丸となって頑張っていきたいと思います。

椿 小柳花子役の椿梨央です。舞台で初めて通したので、ゲネプロはとても緊張したのですが、本当に周りの皆様、カンパニーの方たちが優しい言葉をかけてくれて、こんなに素敵なカンパニーでここまでこられたことを嬉しく思っています。本当にこのカンパニーは素敵過ぎるから、全員野球じゃないですけど、全員でしっかりやり遂げることができるのではないかなと思っています。期待していてくださるファンの皆様がたくさんいらっしゃると思うので、その期待に応えられるように頑張ります!

──メディアミックスの作品ですが、舞台版ならではの魅力はここだというところを是非教えてください。

土井 本当に原作に忠実に作りあげているんですね。あとはキャストさん、スタッフさん、プロデューサーさん含めて全員で作りに作ったというか、皆がちゃんとひとつのハートを持っていて、愛を持っていて、そのリスペクトを全員でひとシーン、ひとシーンつないでいっているところです。

堀内 「ヲタ恋」の世界観って何かが好きな人が集まっている物語なのですが、今回も舞台が好きな人が集まって作っていますし、ジェットコースターやお化け屋敷のシーンは、舞台ならでは、舞台でしか描けないパワーがあると思うので、遊園地のシーンは特にオススメです。

椿 台本にはないところ、例えば会社の社員さんの会話なども「これ原作世界にもありそうだよね?」ということを考え、意見を出し合いながらやってきたので、そこは舞台ならではではないかと思います。

小笠原 演出家がずっとそう言っていたのですが、映画やアニメと違ってコマ割りがありませんから、お客様が好きなところを観られる。どこを観てもいい、どこを見られてもいいという空間で、極上の会話劇を作り上げてきたという自信のようなものもあります。ですから、そうした舞台ならではのものを楽しんでいただけらと思います。

──稽古場でのエピソードなどはありますか?

土井 顔合わせの自己紹介の時に自分が好きなものを語るという時間があったのですが、めちゃくちゃみんなオタクだなと思いました(笑)

小笠原 土井さん何オタク?

土井 ピーマンオタク

堀内 ピーマン!?

椿 それ顔合わせの時に言ってました!?

小笠原 違ったよね?話作ってますこの人!(爆笑)

土井 作ってない!作ってない!顔合わせの前に事前稽古があって、俺そっちにも参加していたから、その時も「自分は○○オタク」という話をしたので、同じことはいいかな?と思って顔合わせでは言わなかっただけです!(笑って堀内に)何オタクですか?

堀内 アニメもすごく好きなんですけど、ミュージカルも大好きで!今回アンサンブルの真木すみれちゃんもミュージカルが大好きなので、楽屋や稽古でも「このミュージカルいいよね」という話をしていました。

椿 私は花子と一緒なのですが、自分もコスプレをよくするんです。今年も大がかりなことをちょっとやってみたいと思っていて、オタクですと言えるように挑戦をしていきたいです。

小笠原 なんだろうな…ゴルフも好きですけど、結構好きなものの幅が広いんですよ。お酒も大好きですね。

──では、代表して土井さんから意気込みをお願いします。

土井 誰ひとりとして欠けてはならないキャストとスタッフさん、皆で作り上げた作品なので、是非観に来ていただきたいのと、愛を感じて欲しいです。ひと言で締めますが、この作品は愛のかたまりです!よろしくお願い致します!

(文・撮影/橘涼香)

舞台「ヲタクに恋は難しい」

日時:2022年5月11日(水)~15日(日)
会場:シアターサンモール 東京都新宿区新宿1-19-10
キャスト
二藤宏嵩:土井一海
桃瀬成海:堀内まり菜
樺倉太郎:小笠原健
小柳花子:椿梨央
二藤尚哉:優樹
桜城光:小田川颯依
相庭:石田隼
馬場:真嶋真紀人
千葉:山下聖良
一条良樹:奥井那我人
三井健介:佐藤智広
アンサンブル:進藤光希、真木すみれ
原作:ヲタクに恋は難しい(ふじた著・一迅社刊)
演出:佐野瑞樹
脚本:畑雅文
制作:コントラ、Alice
主催:舞台「ヲタ恋」製作委員会
©ふじた/一迅社
©舞台「ヲタ恋」製作委員会

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