そよ風はいつも心地良い
だが 魔女の香りがする
串田版「マクベス」では、マクベス以外の全員が魔女であり、“そよ風”でもある。
そよ風は、一見優しく心地よい。
しかしその得体の知れない囁きは、やがて嵐を巻き起こす。魔女たちーーそよ風―ーに誘われ、マクベスは次々に王や親友を殺し、玉座に上り詰める。だが悪事が悪事を呼び、後戻りはできない。
その姿は現代社会そのものなのではないだろうか。
敵は 怒りから生まれた
怒りは 絶望から生まれた
絶望は そよ風から生まれた
いいはひどい ひどいはいい

新マクベス伝説が Neoマクベス・十二夜によって作られた
国王暗殺というとんでもない大それた行動までして、憧れの地位を得たマクベス夫婦。それはギリシャ悲劇をも思わせるような運命に操られたものだ。そう、少なくとも予言に心動かされた者、マクベスの悲劇がそこにある。しかもこの串田脚色の舞台では、マクベスを予言で操る魔女は8人も登場する。幕開け早々、マクベスの演説の「みなさん、そよ風にはご用心」と言った直後に、白い大きな布を貼ったパーテーションに映し出されたシルエットから一斉に(あるいはわさわさと)飛び出してくる魔女たちが口々に“クチュクチュ!”とか“ブルブル”とか魔女語でリズムを刻み、また口琴やカズーといった楽器で囃し立て、お馴染み「きれいは汚い 汚いはきれい」とハモりながら場を去る‥‥。
串田和美が《マクベス》を上演すること六度め、が、そこにはコピー&ペーストの演出はない。もちろん上演した時代も違うし、俳優も違うのだが、まずはタイトルロールの串田十二夜のマクベス。亡霊以上に時代を超えた魔女という超自然の存在と相対して、心の内部にまで達する闇、罪の深さが感じられ、愚かな人間が作る歴史について語る名台詞もストレートに通じ心にしみてきた。今回令和のこの時代に起きているウクライナ侵攻を筆頭とする紛争に対する串田の“時代に対するそよ風感”が一歩踏み込んだ形となって表現しているようだ。
一方で、マクベス以上に野望をたぎらせ、夫をたきつける夫人も、その内なる野望に目覚め、野望のために滅んでいく姿を、血まみれのグローブも含めて真っ赤が似合う大空ゆうひが中身の濃い演技で迫っていた。これがあったからこそ、最後の串田シートン(この場では魔女役)との「LongLongAgo」の詩の掛け合いが心に沁みてくるのだ。
幕間狂言のように後半突然現れる三河漫才ならぬ沙翁漫才、ノゾエ征爾と串田和美のコンビ(この場面のみノゾエ執筆)、反町鬼郎とさとうこうじの“ロストアンガス”凸凹コンビも軽快で好調だ。
段ボール仕立ての大きな兵士たちの攻防もあれば、ボトルの頭に特製人形を設えて乾杯!するなど、シンプルな中にも想像力をかき立てる美術の空気感、こんなところにも“そよ風”を感じ、最後には森があたかも動いてるような、灯火が吹き消され塵になる王の姿が目に浮かぶようだ。どこまでも《そよ風と魔女たちとマクベスと》遊べる2時間だった。
(演劇ライター:佐藤優)
公演概要
フライングシアター自由劇場 第5回公演
『そよ風と魔女たちとマクベスと』
原作:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』より
翻訳:松岡和子
脚色・演出・美術:串田和美
【キャスト】
大空ゆうひ 串田十二夜 福本雄樹 原田理央
大木実奈 反町鬼郎 さとうこうじ ノゾエ征爾 / 串田和美
【スタッフ】
照明:齋藤茂男・大屋惠一/音響:市來邦比古/舞台監督:三月一/演出助手:河内哲二郎
衣裳・宣伝画:串田和美/衣裳進行:中野かおる/宣伝美術:八十島博明/宣伝写真・制作:串田明緒
制作:三國谷花/制作助手:臼田菜南
企画製作:フライングシアター自由劇場
共催:すみだパークシアター倉
主催:(有)自由劇場
【劇場】すみだパークシアター倉
〒130-0003 東京都墨田区横川1-1-10*劇場入口は大横川親水公園側です。
JR 総武線 錦糸町駅(北口)より徒歩15分
東武伊勢崎線 とうきょうスカイツリー駅より徒歩12分
※劇場に駐車場はございませんので近隣のパーキングをご利用ください。
【日程】2025年4月25日(金)~5月4日(日)
4月25日(金) 19:00
4月26日(土) 13:00/17:00
4月27日(日) 13:00
4月28日(月) 19:00
4月29日(火/祝) 13:00
4月30日(水) 休演日
5月1日(木) 14:00/19:00
5月2日(金) 14:00
5月3日(土/祝) 13:00/17:00
5月4日(日/祝) 13:00
【アフターイベントスケジュール】
4月25日(金)19:00 初日セレモニー(GUEST:飯塚直さん)/終了
4月26日(土)17:00 アフタートーク(一青窈さん×串田和美)/終了
4月28日(月)19:00 アフタートーク(松岡和子さん×串田和美×大空ゆうひ×串田十二夜)
4月29日(火祝)13:00 アフタートーク(河内大和さん×串田和美×串田十二夜)
5月1日(木)19:00 アフタートーク(玉置玲央さん×串田和美×原田理央)
5月2日(金)14:00 アフタートーク(中井美穂さん×串田和美)
【チケット料金】
一般 7500円/ペアチケット 14500円/U-25 4000円 (要身分証明書)/高校生以下 3000円
エンジェルシート 12000円 (特典付き、座席エリアの選択可)
※エンジェルシートはフライングシアター自由劇場のみ取り扱い(団体受付)
▼公式サイト :https://www.k-jiyugekijo.com/
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松本公演実施決定!
【公演日程】2025年5月9日(金)~11日(日)全4ステージ
★アフタートーク開催予定!詳細は後日SNSにて発表します。
【会場】信毎メディアガーデン
【チケット料金】(全席自由・税込)
・一般 5000円 / 当日5500円
・U-25 3000円 (要身分証明書) / 当日3500円
*車椅子でのご観劇を希望される場合ご来場の3日前までに信毎メディアガーデンまでお問い合わせください。
<チケット取り扱い>
一般発売開始 2025年2月2日(日)10:00〜
窓口:信毎メディアガーデン1階 まちなか情報局(9:00~18:30)
WEB: 信毎メディアガーデンWebショップ
お問い合わせ
【東京公演お問い合わせ】
フライングシアター自由劇場 制作部
MAIL: flyingtheatre.jg@gmail.com
【松本公演お問い合わせ】
信濃毎日新聞松本本社まちなか情報局(平日 9:00~17:00)
TEL:0263-32-1150